サモンナイトここに極まれり――間口は広く奥が深い物語を堪能「サモンナイト4」レビュー(1/2 ページ)

熱狂的なファンを持つ人気シミュレーションRPGシリーズ「サモンナイト」の正当後継作が、3年の沈黙を破って登場する。今度はなんと宿屋を拠点に、拾った竜の子を守るためてんやわんやの大騒ぎ!! 魅力的なキャラクターとさらにパワーアップしたシステムを兼ね備え、シリーズ最高傑作といっても過言ではない。

» 2006年11月30日 00時10分 公開
[立花裕壱,ITmedia]

さらなる飛躍を遂げる「サモンナイト」

左は男主人公のライ。15歳の若さに似合わずしっかり者で男気がある。右の2人は幼なじみのリシェルとその弟のルシアン。この3人がシナリオを引っ張る

 「シミュレーションRPGを代表するシリーズは?」と聞いたら、少し前までは「ファイアーエムブレム」という答えが圧倒的だったと思うが、最近では「サモンナイト」と答える人も多いのではないか。過去3作と外伝的作品で着実に人気を積み上げ、シリーズ売上はすでに100万本を突破している。今回の「4」は3年ぶりとなる待ちに待ったシリーズ新作。「年末年始はサモンナイト一色!」と決めているファンは、筆者だけではないだろう。

 もともと初代は2000年にプレイステーション用ソフトとしてリリースされた。当時はまだ無名だったが、生き生きしたキャラクターといい、召喚を前面に押し出したシステムといい、マルチエンディングや複数のミニゲームを収録したにぎやかな内容といい、そのクオリティの高さにビックリしたものだ。その後、2001年の「2」、2003年の「3」と伝統を守りつつも進化を遂げ、今や不動の人気を得ている。

 なぜ、これほどまでにサモンナイトがファンを引きつけるのか。理由のひとつはやはりキャラクターだろう。イラストレイター・飯塚武史氏の描くキャラクターは、人を魅了する強い力がある。本作も、男主人公のライを始め、幼なじみのリシェル、その弟のルシアンと、どの登場人物を取っても個性的で輝いている。

 また、シミュレーションRPGというジャンルの長所を上手に生かしている点も見逃せない。そもそもシミュレーションRPGはキャラクターの個性を引き出しやすいジャンルだと思う。RPGよりも戦闘の比重が大きく、戦闘中も各々の特長が際立つ。防御力が弱く、守ってあげないとすぐやられてしまうキャラ、腕っぷしが強く頼れるキャラ、自分は弱くても召喚できる幻獣が強いキャラ……。そうした戦闘中の能力がシナリオ上の性格とマッチして、相乗効果で思い入れがぐんぐんと深まる。

ライが仲間を気遣ったり、敵が挑発してきたりと、戦闘中にも会話が入るようになった。バトルはよりドラマチックに

 特にサモンナイトの場合は、他のシミュレーションRPGと比べてもバトルがシナリオから切り離されず、うまく世界の中に溶け込んでいる。だから、一度やり出すとやめられないのだ。4では戦闘中、仲間との会話が発生する新要素が加わった。これによって戦闘への感情移入度は一層高まっている。

宿屋に竜の子がやってきた

大人びているものの理不尽なことにはガマンできない少年ライか、堅実な生活を目指すしっかり者の少女フェア。そんな彼らが主人公だ

 主人公は伝統どおり、最初に男女のどちらかを選べる。男主人公はライ、女主人公はフェアがデフォルトネームだ。ライでもフェアでも大枠の設定自体は変わらない。

 舞台は帝国北端の山岳地帯にあるのんびりとした宿場町トレイユ。主人公は15歳の若さで、この町の外れにある宿屋兼食堂「忘れじの面影亭」を切り盛りしている。

 ――主人公は幼い頃から天涯孤独だった。母親は顔さえ覚えてもおらず、父親は主人公が5歳のときにどこかへ旅に出てしまった。「何もかも、悪の元凶はいいかげんでちゃらんぽらんな父親だ!」。そう考える主人公は、冒険者の父親と反対の堅実な人生を目指して毎日得意な料理の腕をふるっていた。

 ある日、町外れの丘へ星を見に行った主人公とリシェル、ルシアンの3人。そこで虹色の流れ星が落下するのを目撃した。慌てて行ってみると、そこには星ならぬ卵が! しかも竜の子がいたのだ!! そばにいた主人公は竜の子に親と間違われ、懐かれてしまう。

 そこへ竜を狙う怪しい軍団が登場。果たして主人公はこのピンチを切り抜けられるのか?

 住み慣れた町が舞台ということもあって、ほんわかとしたアットホームな雰囲気でゲームは進む。主人公を囲む町の人々もいい人ばかり。

 勝ち気な性格でトラブルメーカーのリシェル。おとなしくて流されがちだが芯は強いルシアン(まさに、あんな姉がいたらこうなるよなあって感じ。知り合いの姉弟にもそっくりなのがいる!)。帝国軍人だが町の駐在さんの役割を果たす、気さくなお兄さん・グラッド。植物について研究する召喚師で隣のきれいなお姉さん・ミント。そしてミントのお気に入りの召喚獣オヤカタ(名前は親方だが「ムイムイ!」としゃべり方がとても愛らしい)。

 同じ町に住む顔なじみという信頼感がセリフからも伝わってきて、プレイしていてあったかい気持ちになれる。

大関所での入国手続きをする前に旅人が休む、宿場町トレイユ。旧街道に面していて、昔ながらの雰囲気を残す
暴走するリシェルとなだめ役のルシアン。2人の家はお金持ちなのに、主人公の宿屋に入り浸っては、メイドのポムニットさんを泣かせる
ミントの家に住む召喚獣のオヤカタ。腕を組んだ姿とヒゲがかわいいマスコットキャラだ。序盤は戦闘でも頼りになる

 そして今回のパートナーの竜の子だ。卵から生まれたとき「オスだと思う」、「メスだと思う」、「わからない」という3つの選択肢が登場する。竜の子は最初は幼竜の姿をしているが、ゲームを進めると小さな子供の姿に変身し、主人公たちを驚かす。オスなら鼻にバンソウコウのヤンチャな男の子リューム、メスなら「パパ〜」と甘えるピンクの髪の女の子ミルリーフ、「わからない」を選ぶと眠たげな瞳が神秘的な無口で性別不詳のコーラルが現れる。誰を選んでも竜の子に懐かれて、成り行き上、主人公がお父さん(お母さん)役になってしまう。恋も結婚も全部すっ飛ばして、15歳の若さでいきなりお父さんデビュー!? この設定がなんとも面白く、シナリオ的にも利いている。この先、主人公たちはどうなってしまうのか? 相変わらず先が気になってしょうがないシナリオだ。

幼竜を連れ帰ったはずが、朝になったらベッドに女の子が! これにはさすがのライもビックリ。実は竜の子は人の姿も取れる「至竜」という特別な種族だった
竜の子を「御子さま」と呼んで守ろうとする「御使い」たちも宿屋に続々集まってくる。メガネをかけた人前の天使リビエルもそのひとり。最初は理屈っぽいが……
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