妄想が実現するとこうなる――「ケータイ少女」に見る“ケータイ発メディアミックス”の可能性(2/2 ページ)
ケータイ少女を攻略対象にしなかった理由
タイトルにも使われているケータイ少女は、携帯サイズの女の子「リン」のことを指す。サイズがサイズなだけに、攻略対象ではなくサポートキャラクターという扱いだ。女の子の好感度を教えてくれたり、ちょっとしたヒントをくれたりと、主人公の恋路を助けてくれる。
美少女ゲームの場合、ファンタジー色あふれる設定で、モノが女の子に擬人化され、攻略対象になることもあるが、ケータイ少女は純愛路線の正統派美少女ゲームを目指していたこともあり、「わざとそうしなかった」という。
「最初は、ケータイから等身大の女の子が出てくるみたいなことも考えました。だけど、ケータイそのものが女の子になったほうが面白いかなと。そして、それが攻略対象でないなら、人気も出るかもしれないと考えたんです。攻略対象ではないですけど、リンにはリンで“ある仕掛け”を用意しています。ぜひ探してみてください」(長木氏)
ケータイ少女には、クリア直前まで各キャラクターの好感度を平均的に上げていくことで、女の子全員と幸せになれてしまう、いわゆる“ハーレムエンド”がない。純愛路線なので、当然と言えば当然だが、それ以外にも「ハーレムエンドあると女性が引く」との理由があったと長木氏は話す。
「以前に配信した美少女ゲームがそうなんですけど、女性のプレーヤーさんが結構多いんです。3割くらいはいますね。“萌えってやつでしょ?”みたいな感じで興味を持つ女性は多いみたいです。パッケージを手に取るのは恥ずかしいけど、ケータイアプリなら手を出しやすい。7000円出して冒険はできないけど、数百円ならやってみよう。そういうニーズに合っているみたいですね」(長木氏)
美少女ゲームで女性ユーザーが全体の3割を占めているのは確かにすごい。このような理由もあり、ケータイ少女には女性ユーザー獲得のための工夫が随所に盛り込まれているという。
例えばタイトル。開発当初は「携帯少女」だったが、柔らかさを出すために「ケータイ少女」にしたという。それと衣装。「いやらしさが出てしまう」(長木氏)との理由で、肌の露出が多い衣装は採用していない。
タイトルのイメージカラーをピンクと白にしたことも、女性を意識してのことだと長木氏。「男性から見たピンクと、女性から見たピンクは印象が違うんです。色味にもよりますけど、男性はエロい感じを受けますよね。それが女性の場合だと、もうちょっと優しい感じになるんです」
このほか、女性にウケがいいことからキャラクター1人の私服にゴスロリファッションを採用するなど、細かい部分まで女性を意識して作っている。だが、ケータイ少女は女性ユーザーだけをターゲットにしたタイトルではない。中年層にウケそうなギャルっぽいキャラクターや、普段から美少女ゲームをプレイしているユーザーにウケそうな幼なじみキャラクターを用意するなど、幅広い層に向けて作られている。
妄想の終着点は「アイドルグループの結成」
ゲーム以外でのケータイ少女の展開にも触れておきたい。現在のところ、インターネットラジオ、ドラマCD、ブログ、コミックで展開しており、詳細は明らかになっていないものの、アニメ化も決定している。開発元である工画堂スタジオからは、フルボイスのPCゲーム版が2007年2月に発売予定だ。また、コスプレ用の制服や抱き枕カバーなど、商品展開も始めている。
「開発当初から予定していたわけではないのですが、気持ち的には実写ドラマにしたいぐらいの妄想はしていました。これまでにもいろいろなゲームを作ってきて、何万人、何十万人という人たちに遊んでもらっています。その中で、ケータイがゲームを展開するひとつのメディアとして、しっかりとした地位を築けているという実感があったんです。端末の普及に加えて、機能も十分に向上した。そろそろゲームを展開するメディアとしての価値ができたはずだと」(長木氏)
メディアミックス展開には、他社の協力が必要不可欠だ。いくらジー・モードがいけると思ったところで、協力してくれるメーカーがいなければ妄想で終わってしまう。不安はなかったのか? との質問に「ケータイから出てきたコンテンツにどれだけの価値があるのか? やったことがないからこそ、実験的なことに協力してくれるメーカーがいると思っていました」と長木氏。この予想が見事に当たり、ケータイ少女は幅広い展開を見せることになったわけだ。
ここまで商品展開できればさぞ満足しているかと思いきや、長木氏は「展開はまだまだ考えています」と話す。「まずはケータイ少女自体のキャラクターをもっと増やしたいですね。後は、ケータイ少女の制服を着て参加するツアーとか、アイドルグループも結成したいです(笑)。どこまで実現するか分からないですけど、そこまで妄想したほうが面白いじゃないですか。ケータイにはそこまでの力があると思います」(長木氏)
キャラクターをもっと増やしたい――事実上の続編開発宣言が出たものの、今回の取材では続編について語られることはなかった。ケータイから生まれ、さまざまな方面にメディアミックス展開するタイトルは、どこまで大きくなるのか。続編の動向も含めて、今後も注目していきたい。
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