僕らの知らない間にPS3が医療に貢献――米国スタンフォード大学の「Folding@home」提供開始
ソニー・コンピュータエンタテインメントは、プレイステーション 3向けに、米国スタンフォード大学が推進する分散コンピューティングプロジェクト「Folding@home」支援アプリケーションを提供開始すると発表した。
分散コンピューティングとは、小さな計算タスクを各コンピュータに割り当てることで、膨大な計算処理を分担して行う計算手法のことで、1999年に始まり2005年12月に終了した地球外生命体を探索するSETI@homeや、昨年第二次世界大戦中に傍受されたナチス・ドイツの未解読の暗号を64年ぶりに解読したM4 Projectが記憶に新しい。
この度、ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)は、プレイステーション 3(以下、PS3)向けに、米国スタンフォード大学が推進する分散コンピューティングプロジェクト「Folding@home」を支援するアプリケーションの提供を開始すると発表した。
「Folding@home」とは、人間のタンパク質の折りたたみ現象を研究し、関連の疾病を理解することを目的に発足した試み。タンパク質の異常な折りたたみによって引き起こされるパーキンソン病やアルツハイマー病、癌などの様々な疾病の原因究明に、膨大な計算力を伴う解析が不可欠であり、圧倒的な演算能力を持つCell Broadband Engine(Cell/B.E.)を搭載したプレイステーション 3が解析に貢献することで、原因究明に寄与していくとSCEは説明している。
タンパク質の折りたたみの過程は非常に複雑であり、コンピュータシミュレーションによる研究が不可欠なのだが、1台のコンピュータでそのシミュレーションを行うには最大30年もの年月がかかるため、スタンフォード大学では「Folding@home」に参加した端末それぞれに膨大な計算の一部をタスクとして送り、多数の端末が並列処理することで解析にかかる時間の短縮を図っている。各端末の計算処理の結果は、終了すると同時にインターネット経由でスタンフォード大学に戻される仕組みだ。
Cell/B.E.は標準的なPCの約10倍の処理能力を有していることから、PS3がこのプロジェクトに参加することで研究のスピードを飛躍的に向上させることが可能ということで、昨年9月に開催された東京ゲームショウで催された久夛良木健氏の基調講演でこのプロジェクトについて言及していた。
ユーザーは、今月末に提供を予定しているPS3の最新システムソフトウェアにアップデートすることで、「Folding@home」に参加することが可能となる。その際、XMB(クロスメディアバー)のネットワーク列に新たに「Folding@home」アイコンが表示され、ユーザーは任意にアイコンをクリックして起動させるだけで、PS3が自動的にスタンフォード大学とデータの送受信を行い、シミュレーションを行う仕様となる。また、簡単な設定により、エンタテインメントコンテンツ終了後でも、電源を入れたままにしておくことで自動的にアプリケーションを走らせることができ、眠っている間にもPS3が医療の発展のために貢献するというわけだ。
SCEコーポレート・エグゼクティブ兼CTOの茶谷公之氏は、「世界中の多くのユーザー様にPS3が提供するエンタテインメントのパワーをすでに体験していただいていますが、『Folding@home』にご参加いただくことでPS3の優れた性能を今度は難病の研究に役立てることができます。タンパク質の折りたたみを研究するにはたった1台のスーパーコンピュータよりも、世界中のコンピュータがネットワークにつながることで得られる膨大な処理能力が必要とされます。科学者たちが、PCに加えて新たにPS3という強力なツールを手に入れることによって、今後の研究が飛躍的に進行していくものと信じています」とコメント。
また、スタンフォード大学化学科 ビジェイ・パンデ教授も、「スタンフォード大学の『Folding@home』プロジェクトへのSCEの参画は大変喜ばしいことです。PS3が我々のネットワークに加わることで、生命を脅かす難病の治療法の発見に向け、これまで取り組むことができなかった難題の数々に挑戦することが可能になります」と期待しているとのこと。
SCEは、「Folding@home」をはじめとするCell/B.E.を活用した分散コンピューティングの環境を提供することにより、今後も医学や環境、社会科学などの幅広い分野で、学術研究の発展を支援していくと表明している。
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