レビュー
» 2007年05月31日 00時37分 公開

あの「FFT」が10年ぶりによみがえる!――楽しいゲームは、いつ遊んでも良いものです「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」レビュー(1/3 ページ)

「ファイナルファンタジー」シリーズの中でも、外伝的なタイトルであった「ファイナルファンタジータクティクス」が、10年の時を経てPSPに移植された。装いも新たになったシミュレーションRPG、傑作と表される本作を遊んでみました。

[天野テツヤ,ITmedia]

「FFT」のルーツは「タクティクスオウガ」から

従来の「FF」シリーズとは方向性が異なるゲーム性を持つ。シミュレーションRPGブームに拍車をかけた作品だ

 1997年にプレイステーション版として発売され、大ヒットを飛ばした「ファイナルファンタジータクティクス」(以下、FFT)が、このたびPSPにて登場。「ファイナルファンタジー」の名を冠しているものの、既存のシリーズ作品とは異なり、外伝的な作品であるこの作品は、3Dとリアルタイムのアクションが全盛だった当時、じっくりと腰をすえて楽しめるシミュレーションRPGとして楽しめる希少な作品だった。

 実はこの「FFT」は、スーパーファミコンで発売されてカルト的な人気を博した「タクティクスオウガ」の主要スタッフが手がけている。その血脈を受け継いでいるという点で、「FF」ファンのみならず、「タクティクスオウガ」ファンからも非常に注目されていた。

 「タクティクスオウガ」は、エポックメイキングな作品だった。味方をいっせいに動かし、行動終了したら敵の番、という従来のターン制とは一味違うシステム。祭り上げられた英雄の苦悩や、歴史では描かれない戦争の暗部を鋭く描いたショッキングなストーリー展開。強力なユニットが揃うと若干大味になっていったものの、ゲームとしての完成度も高く、その後のシミュレーションRPGに大きな影響を残した作品だった。

 当然筆者もファンのひとりだったが、ドロドロのストーリー展開に魅了されつつも、ゲーム的にはかなりのボリュームがあったため、忙しさにかまけて未クリアで放置してしまった思い出がある。

 では「FFT」はというと、ジョブやアビリティといった「FF」らしさで包まれてはいるものの、作品が持つ空気はまぎれもなく「タクティクスオウガ」と共通のもの。賛否両論を受けたものの、コアユーザーだけでなくライト層も巻き込んで、シミュレーションRPGとしては異例の累計130万本もの大ヒット作となったことからも、作品としての完成度の高さはうかがえるだろう。

 というわけで、10年の歳月を経てよみがえった「FFT 獅子戦争」。「タクティクスオウガ」を知る世代としては、以前のようなカルチャーショックを受けられるかどうか、非常に興味津々だ。本作ならではの新要素を含めて、チェックしてみよう。

気を抜くとポコポコ戦闘不能になるシビアさも「タクティクスオウガ」を思い起こさせる
ジョブやアビリティ名はもちろん、ド派手なエフェクトを伴う召喚魔法など、随所に「FF」らしさも見える

繊細なタッチのグラフィックとは裏腹のハードなストーリー

「FFT」の舞台となるイヴァリースは、ブレイブストーリーや聖石などの伝説が残る「FF12」と共通の世界だ

 本作の魅力であるストーリーは、数々の英雄たちが、きれい事だけでは済まされない戦争に巻き込まれていく様を描いたものだ。ざっと背景を紹介すると……。

 五十年戦争と呼ばれる戦いに敗れ、わずか2歳の少年王が即位した国・イヴァリース。王妃による支配を恐れた議会は、国きっての実力者である王妃の実兄・ラーグ公を排斥、先王の従弟にあたるゴルターナ公を摂政に任命する。有力貴族の大半はゴルターナ公を支持するが、五十年戦争で疲弊し、地位も名誉も失った没落貴族や騎士たちは、こぞってラーグ公に味方した。

 黒獅子を紋章とするゴルターナ公と、白獅子を紋章とするラーグ公。五十年戦争で活躍した将軍でもある2人の激突が、後に“獅子戦争”と呼ばれた戦いである――。

 こうした状況の中、武門の棟梁として名高いベオルブ家出身の主人公・ラムザと、平民の出ながら、ラムザの父により引き立てられた幼なじみのディリータの2人を中心にストーリーが進行していく。

 実に魅力的なストーリーだが、実はプロローグからチャプター1にかけて、過去と現在が錯綜する、という展開になっている。こうした手法は昔からあるものの、かなり分かりにくい展開となっており、正直驚いた。こんなんだったけ? もうちょっとフリがあるだけで、素直に受け止められるのに、というのが筆者のいまさらながらの正直な感想だ。

 序盤の展開ではそれほどでもないが、ゲームを進めるにつれ、ショッキングな描写も増え、ストーリー展開やセリフ回しも難解なものが目立つようになる。「タクティクスオウガ」体験済みの筆者にとって、ドロドロしたストーリーはむしろドンと来いなので、まったく問題なく楽しめた。だが、デフォルメの効いたキャラクターから、ライトなイメージを想像している人たちは、実際はやや大人向けの作品ということを覚悟しておかないと、少しショックを受けるかもしれない。

 ストーリー展開と関連して、2頭身のキャラたちが細かく動くイベントシーンの質の高さも注目だ。昨今の3Dブームにも関わらず、「FFT」のキャラクターはドット絵で描かれている。そのしぐさや表情の変化、なびく髪や服といった描写は、思わず“これぞ職人芸!”と、うなってしまうほど。このキャラの動きにノスタルジーを感じる人も多いと思うが、今でも十分に通用する確かな技術ということで注目してもらいたい。

 また、PSPに移植されるに当たり、幕間に挿入されるイベントシーンのいくつかが、新規にムービーとして起こされているのもポイントだ。キャラクターデザインを担当した吉田明彦氏のイラストそのままのキャラクターたちが、淡い色調の中でなめらかに動き回る美しいアニメーションは、まさに必見モノ。思わず手書きのアニメかと見まごうほど、繊細な3D(セルシェーディング)で描かれたムービーは、これだけで一本の作品として見てみたいと思わせるほどクオリティが高い。PS版プレイ済みの方にも、このムービーを見るために買いなさい、と言いたくなるほど気に入ってしまった。

政争の果ての争いや暴力など、ヘビーなシーンも多い。こうした描写の“濃さ”も特徴のひとつ
イベントシーンはもちろん、戦闘中も細かく動くキャラクターたちのモーションは注目に値する
要所で挿入される手書き風のムービーは、実はCGアニメ。驚くほど高いクオリティを誇る必見モノだ
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/27/news041.jpg 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  2. /nl/articles/2311/28/news172.jpg バイクでケーキを持って帰ったら…… ミュージカル俳優、思わぬ形になったケーキに「見たことないほどズタボロ」
  3. /nl/articles/2311/25/news015.jpg 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
  4. /nl/articles/2311/27/news095.jpg 『ちいかわ』通称“島編”が最終話へ 絶望色が強すぎて阿鼻叫喚 想像に任せるオチに“存在しない劇場版”を幻視する読者が続出
  5. /nl/articles/2311/27/news024.jpg 葛藤の末、野良の黒猫親子を保護して1カ月後…… 幸せを見つけた家族の光景に「本当に良かった」「癒やされます」
  6. /nl/articles/2311/28/news037.jpg 愛犬の大切なおもちゃを洗濯したら→「お友達が……!」 悲しい鳴き声をあげる姿に「家の子も一緒だ」「健気で癒されます」
  7. /nl/articles/2311/27/news076.jpg ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
  8. /nl/articles/2311/27/news093.jpg 『キン肉マン』ゆでたまご・嶋田、ヘルプマーク使用を報告も…… 「正義はないのかこの日本」理解の低さに苦言
  9. /nl/articles/2311/28/news032.jpg 物理学を理解しているハムスター、回し車で遊びたい姉妹へのかわいいイジワルが「強い意志を感じる…」と話題に
  10. /nl/articles/2311/27/news106.jpg エド・はるみ、連日ハードな研究で生活も激変 “18種類おかずの手作り弁当”に影響「数と彩りも無くなり」「忙しく時間がなさすぎて」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  2. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」
  3. 愛犬と外出中「飼いきれなくなったのがいて、それと同じ犬なんだ。タダで持ってきなよ」と言われ…… 飼育放棄された超大型犬の保護に「涙止まりません」
  4. ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
  5. 永野芽郁、初マイバイクで憧れ続けたハーレーをゲット 「みんな見ろ私を!」とテンション全開で聖地ツーリング
  6. 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
  7. 柴犬が先生に抱っこしてほしくて見せた“奥の手”に爆笑&もん絶! キュンキュンするアピールに「あざとすぎて笑っちゃった」
  8. 病名不明で入院の渡邊渚アナ、1カ月ぶりの“生存報告”で「私の26年はいくらになる?」 入院直後の直筆日記は荒い字で「手の力も入らない」
  9. 小泉純一郎元首相、進次郎&滝クリの第2子“孫抱っこ”でデレデレ笑顔 幸せじいじ姿に「顔が優しすぎ」「お孫さんにメロメロ」
  10. デヴィ夫人、16歳愛孫・キランさんが仏社交界デビュー 母抜かした凛々しい高身長姿に「大人っぽくなりました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 病名不明で入院の渡邊渚、3カ月ぶりSNS更新で「表情に違和感」「そこまで酷い状況とは」 ベッド上で「人生をやり直すこともできません」
  2. 動かないイモムシを助けて1年後のある日、窓の外がありえない光景に 感動サプライズが「アゲハ蝶の恩返し」と話題
  3. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
  4. 「千鳥」大悟、大物美人俳優にバッグハグされた表情に注目集まる 「マジ照れのお顔ですね」「でれでれやん」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 神田愛花アナ、拡散された女子中学生時代ショットにスタジオ騒然「ヤバい」→“アネゴ感”でSNSもざわつく
  7. 「生きててよかった」 熊谷真実、美麗な初“袋とじ”グラビアで63歳の色気全開 真っ赤なドレス着こなす姿に「すごいプロポーション」
  8. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  9. 双子モデル・吉川ちえ、美容整形後のひたいが“コブダイ”状態へ 多額の費用要した修正手術で後悔も「傷がこんなに残りました…」
  10. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!