“ATで戦場を駆ける感覚”を再現した良作――「装甲騎兵ボトムズ」「装甲騎兵ボトムズ」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年11月22日 00時00分 公開
[小形聖史,ITmedia]
前のページへ 1|2       

“ATを駆る感覚”はボトムズならでは

ローラーダッシュで戦場を滑りまくる感覚は、まさに“AT(装甲騎兵)で駆け回る”というもの。だが、それだけで生き残れるほど戦場は甘くない……

 ミッション中のATを操作する感覚――これが実に小気味良い。今作ではいつまでも自由にローラーダッシュができるので、少し遊べば、誰でも自由自在にATを駆け回らせて、それなりに戦えてしまうのだ。それこそ最初のシナリオでは、なにも考えず、グリグリと左スティックでATを滑らせつつ、敵が自動的にロックオンされた時に射撃攻撃さえしていればなんとかなってしまうくらい簡単だ。

 しかし、ミッションの難度があがってくると、それだけでは勝てなくなってくる。照準を切り替え、自動ロックオンそのものの解除や回復を使い分け、瞬間的に無敵状態になる回避行動を適切に使い、射撃武器の残弾数(残弾がゼロになると一定時間で自動的に全快するが、その間は使えないため致命的な隙となる場合がある)を気に掛けながら、複数の武器をうまく使い分けていく……。

 こうしたことが自然と身に付いていくシナリオ&ミッションのデザイン。実際に意図した通りにATを動かした時の爽快感。このふたつが両立しているだけでも、今作はゲームとしての及第点をクリアしていると言っていいだろう。

たくさんの敵に囲まれた時には、適切にロックオンを切り替えないとダメージだけが増えていく
地形によってATの機動性が変わる場合もある。ミッションに応じて機体を変えるのも作戦のひとつ

演出とゲーム性を兼ねそろえた「ミッションディスク」というギミック

ボトムズ世界におけるバトリングの象徴的AT「ベルゼルガWP」の「パイルバンカー」。胴体を全損させ、一気に勝負を決める高い破壊力を持つが、それだけに戦闘中に発動させるには相応の腕が必要になる

 さらに今作を盛り上げているのが「MD(ミッションディスク)」の存在だ。世界観的には、ATにインストールされたプログラムのことだと考えて間違いない。ゲーム中では1枚のMDに、セットしているだけで特定の能力を向上させてくれる「サポートプログラム」が1つ、通常ではできないアクション(キックや一瞬で反転するクイックターンなど)を可能にしてくれる「アクションプログラム」と必殺技そのものと言うべき「コンバットプログラム」が合計で最大3つ、入っていることになっている。プレーヤーは機体ごとにMDを選ぶことでセットするプログラムを選び、これを使ってミッションを進めていくことになるのだが……。

 この選択が、ミッション中のプレイスタイルを大きく左右することになる。

同じ「スコープドック」でも選ぶMDによりプレイスタイルが大きく変わる。格闘系の「ギルガメスE」なら右腕を攻撃する「ライトクラッシュ」を柱とした戦い方に、射撃系の「ギルガメスF」なら射撃で転ばせて「ダウンアームパンチ」につなぐか、力押しで「バルカンタックル」を多様するかでさらに分かれる

 たとえば最初から使えるAT「スコープドック」には11種ものMDが用意されている。このうちサポートプログラムだけを見ても、射撃力を高めてくれる「ガンナーカスタム」を付けるか、それとも格闘力を高める「グラップラーカスタム」を選ぶかでプレイスタイルは大きく変わってくるのだ。

 さらにATには総合的な耐久値とは別に、5つの部位(頭部・胴体・右腕・左腕・脚部)にもそれぞれ耐久値が設定されている。特定の部位にダメージが溜まると、そこが破壊され、著しいデメリットを負ってしまうというルールだ。もうおわかりだろうが、コンバットプログラムの中には、そうした特定部位への攻撃に特化したものも少なくない。脚が全損するとローラーダッシュができなくなり、いい的になってしまう。右腕が全損すると射撃武器を失うのが通例。胴体が全損すれば、総合耐久値に関わらず行動不可に陥る……。

 しかもコンバットプログラムを起動するには、自機と目標が適切な距離と角度になければならない。問題の距離と角度はプログラムによって異なり、少し離れたところから急接近した状態でもOKなものもあれば、ギリギリまで近づかないと起動できないもの、相手が倒れていないと起動しないもの、逆に自分が倒れている時だけ起動できるものも……。

 プレーヤーが選ぶのはあくまでMD。個々のプログラムは組み替えられない。こうした制約が生み出す微妙な綾が、ゲームをさらに面白くしてくれているのだ。

バトリングは駆け引きが熱い!

 MDの存在により、対戦モードにあたる「バトリング」の駆け引きはかなり熱いものになっている。なにしろコンバットプログラムは、起動から発動(効果を発揮する)までに若干のタイムラグがあり、その間に通常攻撃を当てれば発動を阻止できることになっているからだ。しかもプログラムの発動には「ミッションディスクゲージ」というものを消費しなければならず、ゲージは時間に応じて自動的に増えてくれるのを待つ以外にためる手段がない。

すれ違い様にコンバットプログラムを起動! 1P(左)側は正面に敵がいないので即座に通常攻撃ができず、2P(右)側は安全にプログラムを発動できる
自分の間合いは敵の間合い。あえて相手に起動させ、そこを通常攻撃で潰してから仕掛けるか。それとも一気に攻めるべきか。一瞬の判断が勝敗を分かつ!

 そこで重要になるのが“間合い”だ。

 通常射撃の間合いとコンバットプログラムの起動に必要な間合い。これを互いに読みあいつつ、限られたバトリング・スペースを縦横無尽に滑り回る。スペースの広さが格闘系にとっても、射撃系にとっても、互いにどうにかなりそうに思える適度な広さであるところも駆け引きをさらに熱くさせていく。

 ボトムズは、敵も味方もローラーダッシュにより常に動いているのが普通だ。この“動きのある戦い”が、最も重要な“間合い”を常に変化させていく。他の対戦格闘ゲームとの違いは、まさにその点であり、これがあるからこそ、今作は他の同種のゲームとはひと味違った対戦を楽しめるようになっている。

赤い吸血部隊が君を待つ……!

 以上、あくまでアクションゲームとしての側面に焦点をあててみたが、今作が単なるキャラゲーでないことは、お分かりいただけたと思う。だが――それでもやはり、これはボトムズの世界にどっぷりとはまるための片道切符に思えて仕方がない。

 バトリングも熱いが、原作通りのATでそれぞれのミッションに挑戦している時が、筆者は一番楽しかった。新しいATを手に入れては、意味もなくニヤニヤしつつATギャラリーで3Dモデルをぐるぐると回していた。キャラクターギャラリーを意味もなく読み込んだり、次回予告を聞きたいがためにムービーギャラリーで何度も再生したり、かと思うと全ミッションを時系列に並べてみようとしたり、やはりヘリはバックダッシュしながら打ち落とすものだと心に決めていたり……。そんなボトムズ・ファンの筆者が「これは単なるキャラゲーじゃないぞ!」と叫んだところで、説得力なんて皆無もいいところだろう。

 だが、信じてほしい。いや、だまされたと思って、「シナリオ4 クエント編」が開くまで遊んでみてほしい。そのころにはきっと、君もこのゲームの面白さに気づいているはずだ。ここまで来たら、あと一歩だ。なんとしても「シナリオEX」を開き、「野望のルーツ」に挑戦しよう。

 そこに待つのは赤い吸血部隊。彼らに会わずして、このゲームを語ることなかれ……。

全コンバットプログラム中、もっとも凝った演出が行われる「ブラッディモーション」。シナリオEXで手に入るRS(レッドショルダー部隊)と名のついたATで使用できる

「装甲騎兵ボトムズ」
対応機種プレイステーション 2
ジャンル3Dアクションゲーム
発売日2007年11月15日
価格(税込)7140円
プレイ人数1〜2人
(C)SUNRISE (C)2007 NBGI


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/17/news023.jpg 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  2. /nl/articles/2404/16/news192.jpg 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
  3. /nl/articles/2404/17/news136.jpg もう別人じゃん! miwa、大胆イメチェンで面影ゼロに「まさかのこんな色になってるとは」「だれー!?」
  4. /nl/articles/2404/17/news111.jpg 「ぶち抜きたいです」 辻希美、懇願拒否された13歳長男が“荒くれ反抗”……息子の室内破壊に嫌悪あらわ「言葉が出ない」
  5. /nl/articles/2404/16/news185.jpg 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  6. /nl/articles/2404/17/news029.jpg 「キュウリが冷凍できるとは76年も生きて来て知らんかったなあ」 野菜ソムリエプロが教える冷凍&活用アイデアが328万再生
  7. /nl/articles/2404/17/news117.jpg 「虎に翼」、壮絶過去演じた16歳俳優に注目の声「違国日記の子か!」 「ブラッシュアップライフ」にも出演
  8. /nl/articles/2404/17/news025.jpg 築36年物件の暗くてボロいトイレをリメイク→ぐーんと垢抜け! 驚きのビフォアフに「すごいですね!」「天才」の声
  9. /nl/articles/2404/15/news081.jpg 【今日の計算】「13+8×2−11」を計算せよ
  10. /nl/articles/2211/26/news054.jpg 辻希美&杉浦太陽、15歳迎えた長女のレアな“顔出しショット”でお祝い 最近は「恋バナ」で盛り上がることも
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」