レビュー
» 2008年03月10日 13時03分 公開

世紀末救世主伝説は終わらない――タッチペンで北斗百裂拳!「北斗の拳 〜北斗神拳伝承者の道〜」レビュー(1/2 ページ)

新世紀に人気が再燃した伝説的少年漫画「北斗の拳」がニンテンドーDSに見参! タッチペンで経絡秘孔を突きまくるというニンテンドーDSならではの操作感覚と、原作を再読させたくたるスタッフの“原作愛”に満ちた作り込みは、ニンテンドーDS系キャラクターゲームの中でも屈指の出来映え。

[小形聖史,ITmedia]

世紀末救世主伝説は終わらない

 2008年2月29日に発売されたニンテンドーDS用ゲームソフト「北斗の拳 〜北斗神拳伝承者の道〜」(以下、本作)は、言わずと知れた伝説的な少年漫画「北斗の拳」を原作にしたキャラクターゲームにして、タッチペンで経絡秘孔を突きまくるという秘孔突きアクションゲームだ。

 本作で扱っているのは原作第1話から、ラオウを倒すところまで。「北斗の拳」の大本命というべき、いわゆる第1部にあたる部分のみを扱っている。その点だけでも、ファンとしては「よく分かってる!」と思わずにいられないところだろう。

 ただ、最初にこのことは断言しておく。

 大容量のコンシューマーゲームが当たり前となっている昨今、ニンテンドーDSというハードは、キャラクターゲームに向いていないハードである。どれほどスタッフが苦心しようとも、ファンサービスに使えるデータの容量(例えば音声や画像など)に限界が生じてしまうのだから、コンシューマーのキャラクターゲームと比較するのはそもそも間違っているのだ。つまりニンテンドーDS系キャラクターゲームの評価は、その少ないデータ容量をどのように使っているかという点に集約されてくる。

 また、ニンテンドーDSというハードの特性を考えれば、タッチペンを使った操作性をどこまでゲーム性に取り込められているかも、評価するうえで大きなウェイトをしめてくる。やはりニンテンドーDSといえばタッチペン。他のハードにないインタフェースをどこまでゲーム性に取り込んでいるかは、評価をするうえで重要になってくるのだ。

 この2つを考えれば、本作がニンテンドーDS系キャラクターゲームの中でも屈指の出来映えと断言できることに気が付くはずだ。

 あ、いや、別にヨイショしているわけではないよ? いろいろなキャラクターゲームに触れている筆者からすると、客観的に見た時、本作のレベルの高さに、スタッフの原作への“愛”とセンスの良さを感じずにいられないというだけの話だ。特にスタッフの“原作愛”は、ゲーム性の部分にも如実に現れているのだ。

北斗神拳伝承者の道

 本作は「北斗神拳伝承者の道〜STORY MODE〜」で高成績をあげていくと、いろいろなオマケ要素が増えていくという、キャラクターゲームのスタンダードな方式を採用している。そこでまずは、ストーリーモードで遊べるゲーム性の部分に目を向けてみよう。

 基本は画面に現れる「経絡秘孔」のマークをタッチペンで触れていくという、いわゆるモグラ叩き的なものだ。ただ、ゲーム中の画面は、すべて原作のコマをカラーに着色したものを使用している。

基本は“突き”。秘孔マークを突く、順番に突く、オブジェを突くなどのバリエーションを持たせることで単純な操作に飽きがこないよう工夫がほどこされている。もちろん、画面いっぱいの秘孔マークをミス無く突きまくれた時の爽快感も格別!

 序盤ではザコ的のコマが出現、そこに秘孔マークが表示され、コマ枠を時間経過を表す表示が周回していき、これが1周するまでに突き終われば「PERFECT」、2周するまでに突き終われば「GREAT」という評価が出る。この時、「PERFECT」を出していれば、コマが消える時に、硝子が砕けるような演出が入る。アニメ版でいうシルエット状での残酷描写にあたる演出だ。ニンテンドーDSが低年齢にも普及しているハードであることを考えると、この演出は原作のテイストをうまく生かしつつ、低年齢層ユーザーにも配慮したものとして、なかなか考えられたものだと言える。

 また、プレイヤーの行うアクションが、ただの“突き”だけでないところが面白い。

 まず、同じ“突き”でも、秘孔マークの表示タイミングが異なる場合がある。基本は、コマが表示された時にマークもすべて表示されるというものだが、間を置いてひとつずつ表示させていくタイプや、表示済みのマークを突かないと次のマークが表示されないタイプ、表示されたら突かれるまで消えないものと一定時間で消えるもの(後者はいわゆるボス戦にあたる戦いで登場する)があるなど、細かい変化を加えているのだ。

 さらに突く順番を指定しているものもあれば、突き対象が秘孔マークではなくナイフや炎などのオブジェにするという“視覚的な変化を加えたもの”も用意されている。前者はゲーム性に、後者は視覚的演出に変化を与えるものがある。

 こうした工夫は、突くという単調にも思える行為を、ゲームでありがちな作業にさせないためのものであり、傍目には小さい工夫にしか思えないだろう。だが、下手に異なるアクションをいろいろと追加するより、“突き”というゲームの基本となる部分をしっかり作り込んでいるあたり、スタッフはゲームというものを良く分かっていると唸るしかないのだ。

これも“突き”のバリエーション。左右から飛んでくるナイフのコマを“突く”ことで落とすものと、画面に表示される風を“突く”ことで消し去っていくもの。他にも炎や、コマに表示されている無数の手の中から光っているものを突いていく場合もある

 話は少し逸れるが、キャラクターゲームの多くは、このあたりが弱い。筆者が以前レビューしたPS2版「装甲騎兵ボトムズ」のように、原作の骨子となる要素とゲーム性を直結――ボトムズで言えばATをローラーダッシュさせて疾走させる感覚――させたうえで、かつゲームとして“遊べる”レベルまで作り込んだ作品というのは、意外なほど少ないのだ。

 そうした意味で、超高速乱打を決める北斗百裂拳が代名詞となっている「北斗の拳」を原作にした本作は“突き”の面白さをどこまで追求できるかが、大きなポイントになる。その点、“突き”について細かく作り込んでいる本作は、「北斗の拳」をキャラクターゲームの中でもコンシューマーゲーム黎明期の傑作と名高いセガ・マークIII版に匹敵する出来映えになっている。

 正直なところ、筆者も意外に思ったほどだ。なにより、画面に現れる秘孔マークを突きまくっていくという感覚は、単純だからこそ面白く、つい夢中になってしまう。特に、リズムに合わせてボタンを押す音楽系ゲームが好きなユーザーなら、画面いっぱいに現れる秘孔マークを超高速でミスなく突きまくり、“PERFECT”を出すという快感を楽しめるはずだ。

 ゲームそのものは“GREAT”でも成功扱いで進むなどの、初心者にも優しい造りをしているあたりも、ゲームというものを良く分かっていると頷かずにいられない。

突きだけではない多彩なアクション

ゲージの伸びる早さは話数が進むほど早くなっていく。後半になると、少し早めに“突く”ぐらいの感覚のほうが成功しやすい。ミスらないためには、最初の1回を見逃し、2回目に“突く”ほうが良いかも?
“なぞる”は最初のうち、無理にPERFECTを狙わないほうが安全。ただ話数が進むと、1つのコマで何個もの短い“なぞる”を要求してくる場合がでてくる。終盤になると鋭角的で難しい“なぞる”も出てくる

 もちろん、いかに工夫しようとも“突き”だけではゲームにも飽きがくる。そのあたりのアクセントとしてうまく機能しているのが、タッチペンならではの他のアクションだ。

 まずタイミング系。基本は、左右から中心に向かって伸びるゲージを、タイミングにあわせて突くというもの。他に、何重にもぶれているコマの絵が1つに重なった瞬間に突くことを要求するアクションもある。いずれもストーリー上、“強烈な一撃”を放つ瞬間に挟み込んでくるあたり、原作のファンも違和感無く遊べるはずだ。

 また“なぞる”と“こする”も頻繁に出てくる。“なぞる”は、いわゆるイライラ棒ゲームの要領で、画面に表示されたスタートからゴールまで枠をはみ出さないようにタッチペンでなぞるというもの。“こする”はこの応用系で、枠線をはみ出してもミスにはならないものの、枠内をなぞりながら始点と終点(回転系は1つが両方を兼ね、直線往復系は最初に触れたほうが始点になる)の間をタッチペンでこすりまくるというアクションを要求してくる。

 あなたが原作ファンなら、こう言えば分かるだろう――“なぞる”は南斗水鳥拳のレイがゆらゆらと手を動かしている動きを再現するもの、“こする”はハート様のお腹の脂肪を蹴りのける時に足を動かしまくるというもの。他にもいろいろな場面で使われているが、適切な場面で適したアクションを要求してくるあたり、スタッフは本当に「北斗の拳」のことを良く分かっているというしかない。

 他にも、同じ場所を何度も突いてゲージをあげていく“ためる”というアクションや、使われている場面は少ないものの、マイクに向かって息を“吹く”というもの、名台詞を選ばせる“3択”なども用意されている。


基本的にすべてのアクションは、操作を求める寸前に“突け!”や“吹け!”などと表示される。例外は特別な操作を必要としないザコ戦のみ。落ち着いたうえで、画面の表示ではなく画面に触れるペンの先に集中すれば、ミスを犯す確率も格段に下がる。ニンテンドーDSのタッチセンサーが優秀だからこそのコツと言えるだろう

 これに加えて“斬る”というアクションもある。画面に表示される線にだいたい沿っている感じでタッチペンを走らせるだけで相手を斬ってしまうという南斗アクションも組み込まれているのだ。

 ただ、これについては枠がない分、最初のうちは“斬ったつもりなのに反応してくれない”ということに戸惑うだろう。このあたりは、他の操作性が厳密さを要求する場合が多いだけに、プレイヤーのストレスになりかねないところだ。それでも慣れてくれば、しっかりとタッチペンの触れる先に注意さえすれば、問題も無くなってくる。このあたりは、秘孔マークがランダムに現れる“突き”の時に、当初は連続成功がなかなか決められないのと同じような慣れの問題にすぎない。

 筆者も最初は戸惑ったが、慣れてくると小気味よくザコ敵を斬りまくれるようになった。これがまた実に楽しい。雲のジュウザと南斗水鳥拳のレイが大好きな筆者としては、レイを主人公にした外伝を使って、斬りまくるゲームを出してくれないかなぁと思ったのは秘密にしておく。

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