ふと顔をあげた時に映る“まち”は、はたして本当に良い“まち”なのか?――「シムシティ DS2」発表会

エレクトロニック・アーツは、「シムシティ DS2」を発売することを記念して、「環境を考えたわたしにできるまち作り」と題して、プレス向け発表会とトークショーを開催。高橋ジョージ・三船美佳夫妻が熱く語った。

» 2008年03月18日 19時07分 公開
[加藤亘,ITmedia]

エコは想像力とバランス

左から村上貴宏氏、三船美佳さん、高橋ジョージさん、大黒栄二氏

 エレクトロニック・アーツは、ニンテンドーDS用ソフト「シムシティ DS2 〜古代から未来へ続くまち〜」(以後、シムシティ DS2)を明日3月19日に発売する記念として、環境を考えたまち作りをテーマとしたプレス向け発表会を「OTEMACHI Cafe(大手町カフェ)」で開催した。

 発表会では、本作プロデューサーの村上貴宏氏がゲーム内容を紹介、トークショーのゲストとして日本環境教育フォーラム代表の大黒栄二氏と高橋ジョージ・三船美佳夫妻が招かれ、「住みよい未来を残すために、環境を考えたワタシたちに今できること」について語られた。


 「シムシティ DS2」は、時代の進化と環境との関わりが学べる都市育成シミュレーションゲーム。シリーズ一貫した都市育成の要素に加え、時代の変遷と環境への影響を色濃く反映されたのが本作の特徴だ。また、住民(シム)たちと直接コンタクトを取ることが可能となったのも大きな特徴といえる。古代からはじまり現代、そして未来へと移り変わる中での都市生活は、時に環境への配慮を欠く結果となることがある。どう自然と折り合いをつけ、まちを発展していくのかはプレイヤー次第で、まちの様子も時代を経過して引き続き反映されていくことになる。



 村上氏は例として、古代に古墳を作ったとして、それを現代まで引き継がせることで観光地としての役目を果たすようになると説明。歴史的建造物と現代のビルが混在したまち作りを目指すことも可能となっている。

 ゲームモードは4種類。各時代に設定された条件をクリアすることを目指す、本作のメインとなる「チャレンジモード」と、クリアもゲームオーバーもなくひたすら都市設計を楽しむことができる「フリープレイモード」、自分で作ったまちの写真をすれ違い通信機能を使って交換することができる「すれ違い通信モード」と、自分のまちの写真や、すれ違い通信モードで得たほかの写真を閲覧することができる「ギャラリーモード」だ。

 チャレンジモードでは、古代(古代あけぼの時代)から始まり、中期(ニッポンかいこく時代/ヨーロッパげいじゅつ時代)、近代(ニッポンせいちょう時代/ヨーロッパさんぎょう時代/アメリカはんえい時代)、現代、未来と5つのフェイズ、8つの時代を体験することができる。時代の変遷とともに変わっていく市民の要望をかなえつつ、支持率を上げることを目的としている。

 村上氏は、本作を製作するにあたり、ここ20年間の「まちづくり」を鑑みた時、まちと人に変化を与えたのは「環境問題」ではないかという思いに至ったと、今回表現すべきテーマとしたと解説する。とはいえ、説教くさくするのではなく、あくまでも楽しいゲームの中で環境問題に“気づく”ものとするために、「まちの発展と引き換えにした自然」を、「まちの歴史」をたどることで表現したのだとか。

会場の「OTEMACHI Cafe(大手町カフェ)」では、環境に配慮した緑豊かな憩いの場となっている

 昨今、メディアでも「環境問題」は多く取り上げられるようになり、ゴミの分別やマイ箸、エコバックなどのエコ活動を積極的に行う人も増えてきたと村上氏。ただ、自分が行っているエコ活動が、地球規模に置き換えた時、どう影響しているのかという“リアリティ”を持つには及んでないのではないかと投げかける。

 「『シムシティ DS2』では、“まち”という規模でプレイすることで、環境対策はちゃんと結果が出るものと、実生活よりもリアリティをもって体感できるものとなっています。通勤や通学の途中にゲームをやっている方も多いと思いますが、ふと顔を上げ、まちに目をやった時、“このまちは本当にいいまちなのだろうか?”と向かい合えるきっかけになればいいと考えています」(村上氏)

戦争こそが最大の環境破壊

 その後のトークショーでは、村上氏のほかに大黒氏と高橋・三船夫妻が登壇し、普段の生活で心がけている環境対策や問題点などが語られた。トークショーでは大黒氏が日本環境教育フォーラム代表という立場から、環境問題の現状を環境教育の専門家として解説。高橋・三船夫妻は普段生活の中でできる身近な活動を、どういう心持ちで取り組むべきかというメンタル面の話にまで及んだ。なお、村上氏は本作を製作するにあたり、大黒氏に意見を求めたことも多々あったのだとか。

 大黒氏は、日本では徐々に改善されてきた環境問題だが、地球規模で見ると、メディアで伝えられるように加速度的に悪化の一途をたどっていると警鐘を鳴らす。今年開催されるサミットの主要議題が環境問題であることもあり、注目されている今だからこそ、身近なところから取り組む各人の意識改革が必要だと提起する。環境問題に直面した際、1人1人の問題意識のほかに、規制や法律などの整備、新しい技術の導入などが関連してくるが、ゲームを入口とすることで大量消費生活を見直すいいきっかけとなるとも。

 高橋・三船夫妻も環境問題への意識は高く、この会場に来る前も議論で白熱したとのこと。三船さんは仕事で環境問題に触れることが多く、エゴではなくエコが大事と切り出す。

 三船さんは「シムシティ DS2」で遊ぶと、市長として“よりよいまち”にしたいという意識が働くのに、実生活では大きな視点で物事を見ることがおろそかとなり、つい便利を求めて無駄使いをしがちだと反省する。それというのも環境問題が漠然とでしか意識できないからで、もっと身近なこととして向き合う必要があると省みる。高橋さんがそこで横やりを入れ、使用した油を再利用していることを例に補足する。

 というのも、当初は高橋さんのメタボリック対策の一環として、油の使用を控えたことをきっかけに、素材本来のおいしさに気づき、かつ油がいかに環境に悪いかを知ったのだとか。こちらも仕事の関連で油の再利用施設を取材したのをきっかけに、固めて捨てるのではなく、再利用し、かつなるべく使用しないことが環境にも優しく、生活にも優しくなることを肌で体験できたとエピソードを紹介する。

 高橋さんは子供を持つ親として、次の世代につなげていくことをもっと意識しないといけないと、大量消費文化の無責任さを改めてなくてはならないと呼びかける。そうした意味でもゲームでは失敗ができるし、前向きに遊んでもらえるのではないかと村上氏。

 三船さんは「シムシティ DS2」をはじめて遊んだ際、作ったまちが大気汚染に襲われ、大変な目にあったのだとか。つい便利だろうと施設を増やし、環境を軽視した結果と反省する。実生活ではなかなかこうしたシミュレーションはできないので、問題意識を持つにはゲームは最適と、大黒氏と同じ考えに至ったのだそうだ。こうした問題提起は常日ごろ行っていかなくては、つい忘れがちになるもの。こうした発表会もそうだし、芸能人が環境問題についてコメントするなどの啓もう活動で、少しでも環境問題に対する意識を持ち、それを互いに共通認識となるよう身近な人と議論することの大切さを説いた。

 「シムシティ DS2」では、都市の発展を主軸に置いている。都市育成の要素として、戦争という概念をあえて入れなかったと村上氏。まちを壊すことも次なる発展につながるという一面もあるが、本作では戦争を入れることで環境に目がいかないと判断し、排除したとのこと。「戦争こそ最大の環境汚染」とする高橋さんはそれを受けて、「確かに戦争によって文明は発展してきたが、今の時代、戦争がもたらす影響をシミュレーションできる時代でもあるし、安易な方法ではなくライフスタイルを少しずつでいいので、できる範囲で変えていく意識を持つこと」が大事と、高橋家のライフスタイルを推奨する。

 それによると高橋家では、全員がいっしょにご飯を食べ、一緒の部屋で談笑し、寒ければ互いに身を寄せあい、笑って議論して熱くなって暖を取ると紹介する。要は同じタイミングでひとつの場所にいることで、光熱費などを浮かせようという試みだ。昔はいつでもお湯を使ってお風呂に入ることもできなかったので、順番にいっせいに入ったものだが、便利になったことで逆に無駄遣いも増えてきたと例をあげ、家族や身近な人たちとともに協力して楽しみながら、悲観することなく前向きに節約するよう心がけているのだとか。


 「1人だと挫折するので、誰かと話しあいながら楽しみながら、気をつけあうことが大事。それが家族ならばキズナも深くなると思います。今回、このゲームを遊ばせてもらったことで、環境教育をゲームを通してできました。ですからお母さんたちがもし子供がゲームばかり遊んでてそれがシムシティだったら許してもらいたいです」(三船さん)

 「毎日の生活で向き合う環境問題は、避けては通れないことだと思います。このゲームは教材として遊べるのが魅力。いいまちを作ってみたいですね」(高橋さん)

 「エコはせこいと言われることがあるが、それを恥ずかしいと思ってはいけない。食べ残しは年間11兆円と算出されています。国内の食料自給率が12兆円と言われており、同じ分だけの価値のものが捨てられていることになる。これはもったいないことです。ちょっとした工夫で節約はできるのです」(大黒氏)

 「今後も環境問題を呼びかけていければと考えています」(村上氏)


 大黒氏は村上氏に「なぜ環境問題をゲームに取り込んだのか」を質問した。その答えは「ゲームを通して環境を考えていきたい」というものだったと大黒氏は意外な答えだったと振り返る。通常、環境問題を考える際、まず環境を先に考えてからあれこれこうしようと手段を述べるのところを、まったく逆の方法論で環境にアプローチするところに興味が沸いたのだとか。普段、関心のない人が環境問題を考えるきっかけになる……。個人の意識が環境問題に向かういいきっかけとなるタイトルとして、その意義は高い。

「シムシティ DS2 〜古代から未来へ続くまち〜」
対応機種ニンテンドーDS
ジャンル都市育成シミュレーション
発売日2008年3月19日
価格(税込)4980円
EA and SimCity are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. Nintendo DS is a registered trademark of Nintendo Co.,Ltd.All other trademarks are the property of their respective owners.

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