インタビュー
» 2008年06月27日 14時39分 公開

DSでフル動作するアナログシンセを作り出した人たち「KORG DS-10」開発者インタビュー(1/3 ページ)

往年のコルグのアナログシンセサイザー「MS-10」を現代に甦らせたニンテンドーDS用ソフト「KORG DS-10」がAQインタラクティブから2008年7月に発売される。その開発にかかわった方々に話をうかがうことができた。

[聞き手:松尾公也,ITmedia]

 「KORG DS-10」(以下、DS-10)の発売元であるAQインタラクティブの岡宮道生氏、岡宮氏とともに本プロジェクトのプロデューサーを担当するキャビアの佐野信義氏、元になったシンセサイザー「MS-10」のメーカーであるコルグの佐藤隆弘氏と井上和士氏、DS上のサウンドドライバを担当したプロキオン光田康典氏と主要開発スタッフが勢ぞろいしたインタビューは、インタビュワーがMS-10発売当初からのユーザーということもあり、非常に「濃い」内容となった。なお、+D Games編集部では、事前にDS-10の開発途中版をお借りして試用したうえで質問している。

画像 「MS-10」を囲んで

発想の源は、「DSの開いた形」

――MS-10からその上位機種であるMS-20、MS-20をソフトウェアシンセサイザーにしてUSB接続のミニコントローラをつけたレガシーコレクションと、個人的にずっとMS-10/20を追ってきて、DS-10で3世代目のユーザーになるので、ぜひお話を聞かせていただきたいのですが……。まず、なぜ30年前の、しかもモノフォニックシンセを選んで、それをニンテンドーDSに載せようと思ったのか、その発想はいったいどのあたりからやってきたのかを知りたいです。

岡宮道生氏(以下、敬称略) もともと佐野さんとわたしとでゲームの新しい企画を考えていて、「何をやったらいいか」と話していたら、佐野さんが、KORG MS-10というのがあって、DSを開いた形が似ているじゃないですか、という話になって。

佐野信義氏(以下、敬称略) 遠目に見ると似ているんですね。もとは飲み屋のバカ話なんですよ(笑)。その場はワッハッハで終わってしまったんですけど、岡宮さんは年上だし、何かアクションを起こさないと怒られてしまうと次の日に思ったんです。そういえば、コルグさんと名刺交換させていただいたのを思い出して、何年ぶりかで連絡して、ニンテンドーDSにシンセサイザーを載せるアイデアを話したんです。最初は「できるはずがないじゃないか」と一蹴されて終わりかと思ったんですけど、ことのほか反応がよろしくて。

佐藤隆弘氏(以下、敬称略) わたしたちはレガシーコレクションを作っているチームなんですけど……お買い上げありがとうございます(笑)。ちょうど、DSで音楽ツールを作れないかというリサーチを、新しいプロジェクトと並行して進めていたんです。そのときに偶然、佐野さんからこういうオファーをいただいたので、話がトントン拍子で進んで、開発協力をさせていただくことになったんです。

画像 AQインタラクティブ 岡宮道生氏
画像 キャビア 開発部サウンドチーム サウンドマネージャー 佐野信義氏
画像 コルグ 開発部PD6マネージャー 佐藤隆弘氏

佐野 それが1年以上前ですね。それと同時に、DSの中にいれる技術というのがわたしどもにはなくて、プロキオンさんがDSのサウンド周りの技術に長けているという話を聞いていたもので、前から光田さんと知り合っていたので、興味ありますかとメールで尋ねてみたんです。そしたら返事が速かった。付き合いはじめのカップルみたいに(笑)。

光田康典氏(以下、敬称略) やります? やりましょう。いいっす。いいっすよ、みたいな。

佐野 こんな軽くていいの、みたいな。

画像 プロキオン・スタジオ 光田康典氏

――プロキオンさんも、MS-10、レガシーコレクションというのはご存知で、ソフト音源化されているということは分かった上で判断したと。

光田 ぼくも持っていて、よく使ってますんで。うちの会社は基本的にゲームプラットフォームでサウンドドライバ周りのミドルウェアを作っているんですけど、そのオファーをいただいて、「DSなら任せてくださいよ」ということで。じゃあ、やりましょう、とトントン拍子に。

佐野 最初は「調子に乗ってんじゃない」と怒られるかと思っていたら、両社から「行けるんじゃないか」という反応があったんで、「これは!」という流れですね。

――技術的に可能だ、というのはどの辺で判断されていたんですか? モノフォニック(単音)だからOKだとか。

光田 うちで作っているドライバというのは、基本的に16チャンネルのシーケンサーが低レベルのCPUで動くんです。DS-10の場合にはゲームの画面描画がないので、余ったCPUパワーを全部シンセサイザーに持っていけばかなり動くのではないかという単純計算で。それで、「やりましょうか」と。

佐野 世界的に見ても、これはドリームチームなんですよね。コルグさんとプロキオンさんのように技術を持っているところはほかにないはずなんで。ぼくはその天才たちの中で、「のび太」の役なんです。

画像

――1年2年かけて、そういうことになったんですね。それはすんなりいったんですか?

佐野 こういうジャンルでこういうゲームのといったら伝わるんですけど、楽器だというのはなかなか伝えにくいですね。

岡宮 新しい切り口なんで、弊社内でもそれを認めさせるために時間が必要でした。ぼくらはいけると思ってるんですけど、ゲームというくくりではないですし、楽器ということだと楽器流通も分からないし、苦労したんです。

――シンセを学びましょうといったチュートリアルとか、ミニゲームみたいのは入れようと思わなかったんですか?

岡宮 ツールとしての機能が失われるのだったらやりたくないという考えでした。

佐野 まずは音ありき、で。

――MS-10の再現ならできる、ということでやろうと思ったわけですか?

佐野 それができるということが、コルグさん、プロキオンさんの読みだったわけです。

なぜMS-20ではなく、MS-10なのか

――個人的には、これはMS-10ではなくて、上位機種であるMS-20がモデルであるとうたってもよかったんじゃないかと思うんですが。

佐野 フランクフルトのミュージックメッセに出展してきたんですが、みなさんそう言うんですよね。これはVCOが2つだから、MS-20じゃないか、みたいな(MS-10はVCOが1つ)。

――VCOが2つだけならいいですけど(笑)。フィルターが、MS-10のローパスフィルターだけじゃなくてハイパスフィルターも、バンドパスフィルターもあるんですよね。MS-20みたいに。

佐野 はいはいはい(笑)。

佐藤 MS-10をベースに考えて、弊社内でシンセサイザーとして必要なパラメータを揉んだんですよ。その結果を今回採用したというわけです。MS-20ではないんですよね。

――どのへんがMS-20でないんでしょう?

佐藤 パッチ部もそうだし、MS-20とはいえないよね、という話で。

画像 コルグ 開発部 井上和士氏(左)

井上和士氏(以下、敬称略) 独立したローパスフィルター、ハイパスフィルターがあるわけではないですし。フィルターはMS-20の特徴ですから、その意味においてMS-20とは言えないかな、と。

佐野 ぼくのほうの答えとしては、DS-10(ディーエステン)は音の響きがいいじゃん、ということで(笑)。DS-20(ディーエスニジュー)だとねえ。トゥエンティーという人もいないですしね。

岡宮 もともとこれを始めたときのイメージコンセプトはMS-10だったんですよね。ぼくも佐野さんも、MS-10に思い入れがあったんです。

――その思い入れはどこから?

佐野 それは最初に買ったシンセがMS-10だったから。

岡宮 ぼくも最初に触ったシンセはMS-10で。

佐野 もちろんぼくもMS-20がほしかったんですけど、お金がなくて、お年玉が足りなくて、中古を2万円で買いました。

岡宮 最初に触ってもらえるシンセを目指したかったんですよ。結果的にパラメータががーんと入ってMS-20に近い感じにはなったんですけど、ぼくらの気持ちはMS-10ですね。

――MS-10が出たときにはすごく衝撃的で、それまでのシンセが10万円以上、自由に音色をいじれるものはさらに高くて、という状況でした。MS-10のおかげでシンセマニアが生まれたのだと思っています。そのムーブメントをこれで、起こしてやる、という意気込みが感じられます。

岡宮 まさにそうです。ありがとうございます。

佐野 ぼくはリアルタイムではないですけど、衝撃的でしたね。

――これがあれば何でもできる、と思ってました。今の売れ行きを考えると、DS-10も相当いけるのではないでしょうか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2309/28/news007.jpg 18歳上のお兄ちゃんが大好きな赤ちゃん、愛があふれすぎて…… 「私だけのにぃに!」と抱きつく姿にニヤニヤしちゃう
  2. /nl/articles/2309/27/news019.jpg 最大2キロ超の“高級カニ”が東京・荒川で大発生!? 浜名湖の名産を都会のドブで「開始1分」採取、食す様子に反響
  3. /nl/articles/2309/27/news190.jpg 鳥居みゆき、電車内で物を落とした結果……車内が静まり返ってしまう 「ギョッとしました」「リアルすぎて」
  4. /nl/articles/2303/02/news031.jpg 18歳差の妹がかわいくて仕方がないお兄ちゃん ちょっかいをかけたくて仕方がない様子に「かわいい」「愛を感じます」
  5. /nl/articles/2308/02/news009.jpg スーパーで買った20円のシジミを汚れた池に入れてみたら…… 思わぬ結果とビフォーアフターに「面白い」の声
  6. /nl/articles/2309/28/news011.jpg 猫が“ごめん寝”をする貴重な瞬間をとらえた! 「猫飼ってるけど初めて見た」「かわいすぎる」と称賛の声
  7. /nl/articles/2309/27/news036.jpg 「モンハン」でモンスターを狩ろうとしたら…… モンハン歴14年のベテランハンターが思わず討伐をためらった“まさかの光景”が話題
  8. /nl/articles/2309/22/news132.jpg “見えてますよね”“大丈夫なの?” TBS女子アナ、スカート姿のプライベート写真公開→ファンの指摘に釈明
  9. /nl/articles/2309/27/news112.jpg 金子ノブアキ、JESSEの結婚式を祝福 “RIZE”メンバー勢揃いの幸せショットに「最高や」「ファンからしたらめちゃくちゃ嬉しい」
  10. /nl/articles/2309/27/news107.jpg 【隠し絵クイズ】クッキーの絵に隠れた「ねこ」はどこ? 見つけたらうれしくなっちゃう問題に挑戦しよう

先週の総合アクセスTOP10

  1. “見えてますよね”“大丈夫なの?” TBS女子アナ、スカート姿のプライベート写真公開→ファンの指摘に釈明
  2. 「ボッタクリにも限度ある」 FFイベントで売店の“焼きそば”めぐり騒動 運営謝罪「スタッフが半ばパニックに」
  3. 鎧塚俊彦、妻・川島なお美さんの命日に“不思議な写真”を初公開 「私には確かに見えた」「女房がきてくれた」
  4. 土屋太鳳、“第1子を抱いた姿”が反響呼ぶ 初登場ベビちゃんに「母になったんだね」「感動しすぎて泣きそう」
  5. ホテル従業員が教える「使ったバスタオルはどうすればいい!?」の回答をしっかり覚えておきたい
  6. 「このために金髪にしたってもうさすが」 永野芽郁、突然激変した理由にファンから驚きの声
  7. 「バイト代でウマ娘のLDを買った」という存在しないはずの記憶を持つ者が現れる 証拠映像に「懐かしい」「秋葉原に買いに行った」の声
  8. 野口健、ヘリで緊急搬送後の生還ショット 「テントの中で溺死してしまう」「苦しみに恐怖」と命の危機を回顧
  9. 上地雄輔、55歳で亡くなった“ママ”田中好子さんとの生前ショットに反響 「アカン。泣ける」「優しい声が聞こえてきそう」
  10. 炎天下の車道でたった200グラムの子猫を保護して1年…… まるまるとしたワガママボディに成長したビフォーアフターに感動

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「美しいエリカ様」「少しも変わってない!」 沢尻エリカ、約4年ぶりの表舞台で“別格の美ぼう”に驚きの声
  2. タバコを土に埋めた1年後には…… 予想外の展開に「信じられない!」「とても素晴らしい」と称賛の声
  3. 売上7億円超の漫画『小悪魔教師サイコ』作画家・合田蛍冬氏が出版社を提訴 同時期に同一原作の後発漫画が出版されトラブルに
  4. 西原理恵子の娘「飛び降りして骨盤折りました」「心情は過去一番辛かった」 今後は精神科へ転院予定
  5. “高1女子”がメンズカットにしたら…… その驚きの仕上がりに「そりゃモテるわ」「似合ってて羨ましい」と大反響
  6. スーパーで買った20円のシジミを汚れた池に入れてみたら…… 思わぬ結果とビフォーアフターに「面白い」の声
  7. 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  8. さすが! 清原和博の元妻・亜希、甲子園出場中の次男を応援 日焼けを徹底防備→スタンド席に駆け付ける
  9. 柴犬がプールからあがろうとした瞬間……! 「何回見ても爆笑」「好きすぎる」コントのようなずっこけハプニングが発生
  10. 猫嫌いの夫が道で倒れていた子猫を発見、1年後…… 幸せを運んできた猫の成長ビフォーアフターに感動の声