手を抜いているところはない――CEDECで公になるMGS4のデザインワークフローCEDEC 2008特別インタビュー(1/2 ページ)

CEDECでの講演を間近に控えたKONAMIの根岸豊氏にインタビューする機会を得た。根岸氏は、小島プロダクションで歴代の「METAL GEAR SOLID」シリーズのデザインを手がけてきた人物。今年のCEDECでは「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」のデザインについてワークフローを紹介するという。デザイナーの立場から見た「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」とは?

» 2008年09月09日 19時34分 公開
[仗桐安,ITmedia]

 9月9日から9月11日にかけて開催される、日本最大級のゲーム開発者カンファレンス「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」(以下、CEDEC)。その開催に先駆け、「『METAL GEAR SOLID 4』のデザインワークフロー」と題したセッションを予定しているKONAMIの根岸豊氏にインタビューする機会を得た。根岸氏といえば、小島プロダクションにおいて制作部デザインユニットのマネージャーでありリードアーティスト。CEDECでは、佐々木英樹氏、木村峰士氏、小林政哉氏とともに、ビジュアルアーツについて語ることになっている(セッション自体は9月9日に実施済み)。

ゲームデザイナーには基礎と感性が必要

根岸豊氏

―― 「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」(以下、MGS4)製作の現場ではどのようなことをやっていらっしゃったのですか?

根岸豊氏(以下、根岸氏) CGディレクターです。デザインを統括する立場でしたけど、それだけではなく背景の製作もやっていました。

―― まずは有り体な話から。MGS4の製作が始まったのはいつ頃だったんですか。

根岸氏 単純に「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」の発売から3年半経ってますよね。2005年の東京ゲームショウで初めて画面を見せたので、その辺がデザインとしてはスタートですかね。当初PS3は何でもできるんだろうと思って丸いものを丸く作っていたら、プログラム担当者から怒られました。「ポリゴン使いすぎー」って(笑)。どれくらいポリゴンやテクスチャーを使えるか? 落としどころはどこなのか? というところから始まりましたね。

―― デザインチームの構成はどのようになっていたのですか。

根岸氏 デザインは6つの班に分かれていました。キャラクター、背景、メカ、モーション、デモ、2Dの6つです。多分一番面白いのは、メカが分かれているところですね。タイトルの特性上、メカがたくさん出てくるのでキャラクターと区別していました。固いものと柔らかいものってことですね(笑)。デザイナーの人数はマックスで約100人です。開発が進むにつれて人が増えていきました。一番多く人を割いたのはモーションで、少なかったのは2Dですね。

―― 班ごとの情報の共有はどんな感じでしたか。

根岸氏 デザイナーとしては定期的に班長が集まって、情報共有のミーティングを開いていました。それに、みんなフットワークが軽いんですよ。何か問題があれば基本的には直接会って面と向かって相談する感じでした。各班に優秀な班長がいたおかげです。

―― デザインチームに対する、小島監督ならではの独特の指示とかはありましたか。

根岸氏 けっこうこまごまとありましたね。特に終盤なのですが。データを締めるっていう間際になって「デモで映るスネークの、背中の壁のあそこのテクスチャーどうにかせえ」とけっこう細かいところを突っ込んでくるんですよ(笑)。背景班としてはもう時間もないし、容量の問題もある。でも言われたからには直さないと。結果としては直してよかったなとなるんです。僕らが妥協してるところをちゃんと見抜きますね。最後の方になればなるほど、いろいろ突っ込まれました。

―― 逆にデザインチームが仕込んだ遊びの部分とかはありますか。中東の壁に貼られたポスターだとか、ディテール部分で。

根岸氏 スケジュールもタイトだったので、今までよりもお遊びの仕込みは少ないですが、遊んでいるといえば遊んでますね。例えば、ナオミの研究所のテーブルの上にあるレントゲンは某スタッフの実際のレントゲンだったりだとか。

―― 遊びといえば、心霊写真(シャドー・モセス島の特定の場所でアイテムのカメラで写真を撮ると心霊らしきものが映り込む)は楽しい隠し要素でした。

根岸氏 あれは「MGS1」からやっているスタッフの写真なんです。「1」で登場する場所と「4」で登場する場所は、可能な限り同じ場所にしてあります。「MGS1」からの生き残りってことで、生霊ですね(笑)。これは監督の仕込んだネタですけど。

―― 「MGS4」のビジュアル、デザインでこだわった部分はありますか。

根岸氏 あらゆるところ、キャラなり、背景なり、各パートですごくこだわってます。手を抜いているところはないですね(笑)。

―― デモ画面もプレイ画面も全部リアルタイムポリゴンですよね。

根岸氏 そうですね。前作までは、ポリゴンによるデモとゲーム部分のつながりは分かれていました。今回は小島監督のこだわりでシームレスにつながるようになっていて、それはうまくいったかなと思っています。

―― プリレンダとリアルタイムポリゴンの違いってどんなところにありますか。

根岸氏 プリレンダのよさは、目指すものに近いものができて編集も可能なところでしょうね。私たちのやっているリアルタイムポリゴンのよさは、自由度が高くて、ゲームからそのままつながるところです。気持ちの問題で、ゲームの画面から急にきれいなムービーになるとなえちゃうところもありますけど、リアルタイムポリゴンならゲームとデモで同じものを使っているんでギャップがないんです。例えば、キャラクターの服装は、そのときの服装がそのまま反映されます。

―― そういえば「MGS4」では、フェイスカム(スネークが他人の顔に擬態できるアイテム)をつけてるとそのままデモに移行しますよね。

根岸氏 そうですね。他にも、デモ中にズームできるとか。そういう自由度が高いんです。例えばスネークのデザインを修正したとします。そういう時にプリレンダだとレンダリングしなおさなくてはいけません。リアルタイムであればモデルを細かく直してアップすればいいんです。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/18/news002.jpg 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍休止も…… 「強い遺伝子を受け継いだ」と注目集める【注目の“二世タレント”】
  2. /nl/articles/2501/18/news022.jpg 日本地図で人口減の都道府県を可視化してみたら…… 減少一色に染まる中、“意外すぎる県”が増えていた事実に驚きの声 「青ざめたわ」「恐ろしい」
  3. /nl/articles/2501/18/news039.jpg 母「昔は女の子によくモテた」→当時の姿を見ると…… 驚きのショットが1600万再生「私、生まれる年を間違えちゃったな」【海外】
  4. /nl/articles/2501/17/news054.jpg セリアのタオルハンカチにハギレを足すだけで…… 超簡単に“すてきアイテム”が完成! 「可愛い〜」「作ってみます」
  5. /nl/articles/2501/14/news049.jpg ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  6. /nl/articles/2501/18/news040.jpg 街中で見かける“あの袋”の中で大根を育てたら…… 限界突破のわけが分からない姿に「ごめん、わろた」「大根じゃぁないww」
  7. /nl/articles/2501/18/news075.jpg 中学生男子、半年放置して“とんでもない髪形”だったけど…… “まさかの大変身”が100万再生の衝撃 「まさに激変!」
  8. /nl/articles/2501/18/news010.jpg 【ハードオフ】ジャンク品テレビ2台を組み合わせたら… “意外過ぎる結果”に驚きの声「いろいろ詰まっていた」
  9. /nl/articles/2501/18/news006.jpg 3色の“ましかく”をひたすら編んで、完成したのは…… 思わず拍手の仕上がりが114万再生「かわいすぎます!」「メッッチャクチャ好き」
  10. /nl/articles/2501/18/news017.jpg 「どうしてそんなに」スズメたちの隣にいた“ヤバいやつ” インパクト抜群の光景に15万いいね「ワイルドな感じ」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  2. 「大根は全部冷凍してください」 “多くの人が知らない”画期的な保存方法に「これから躊躇なく買えます」「これで腐らせずに済む」
  3. 浜崎あゆみ、息子2人チラリの朝食風景を公開 食卓に並ぶ“国民的キャラクター”のメニューが意外
  4. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  5. 中2長女“書店で好きなだけ本を買う権”を行使した結果…… “驚愕のレシート”が1300万表示「大物になるぞ!!」「これやってみよう」
  6. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”の家族に反響 ジュノンボーイの幼少期が香取慎吾似?【コンテスト特集2024】
  7. 大好きなお母さんが他界し、実家でひとり暮らしする猫 その日常に「涙が溢れてくる……」「温かい気持ちになりました」
  8. 「やばすぎ」 ブックオフに10万円で売られていた“衝撃の商品”に仰天 「これもう文化財」「お宝すぎる」 投稿者に発見時の気持ちを聞いた
  9. 「こんなおばあちゃんになりたい」 1人暮らしの93歳が作る“かんたん夕食”がすごい! 「憧れます」「見習わないといけませんね」
  10. 【今日の難読漢字】「碑」←何と読む?
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」