トラウマになるので音楽は後からつけたほうがいい――チュンソフト 中村光一氏(前編)ヒライタケシの「投げる前から変化球」(その5)(2/3 ページ)

» 2009年04月08日 15時06分 公開
[ヒライタケシ/ITmedia +D Games編集部,ITmedia]

発想の根源は?

平井 そもそも「ドアドア」のゲームの発想はどこからきたんですか?

中村 実はエニックスのコンテンストのパンフレットをもらった時に、応募作品がいわゆるコピーでいいのか分からなくて(当時はインベーダーのまがい物のようなものがあふれていた)、ナムコの「ディグダク」にはまってて、これをなんとか8001で作れないかと思って、「ディグダグ」の画面デザインとか勉強してたんです。

 案の定、コンテストはオリジナルじゃないと駄目ということで、であればこの「ディグダグ」の面白さを凝縮した別の形のものを考えようと思ったのが「ドアドア」なんです。「ディグダグ」って上手になるとバラバラにいる敵をつなげて固めていって、最後は岩を落として高得点を狙うというパターンがあったじゃないですか。その上手になるとできるというテクニック的なコンセプトを生かして、申し訳ないですけど拝借しました。だから根本にあるのは「ディグダグ」です。実はあれを応募する時、画面が「ドンキーコング」に似ていると言われたんです。はじめは画面デザインが似てて。その指摘を受けて、それで画面を変えたのを覚えていますね。

平井 その後に「マッピー」が登場したじゃないですか。似ているとは思いませんでしたか?

中村 マッピー見た時に、ボクはそんなに似ているとは思わなかったんですよね。ドアがあるなというくらいにしか。

平井 ボクはなんとなくイメージが重なって、なにか関連があるのかなーと思ったのを覚えています。かかわってるのかなーと。

中村 かかわってませんよ。マッピーは音楽がよかったですね。

平井 ゲーム好きはみんな聞いてましたよ。あとチュンソフトといえば、ジャンル開拓の発想が聞きたいんですが。

中村 ゲーム市場初期は本来ジャンルなんて概念なかったじゃないですか。RPGは少し後になってから登場しますが、アクションもシューティングもシミュレーションも大体はアメリカですでに誕生していたわけですし。

平井 サウンドノベルの発想は?

中村 当時、任天堂から製作するにあたってのライセンスはいただいていたものの、さて何を作ろうかと……。当時はまだ「ドラゴンクエストV」を作っていた頃で、社内的にもスタッフがほとんどドラクエに当てられてて。プログラマーもグラフィックも少ない人数で作れないかと話をしてたんです。その時、テキストだけでやるものはどうだろうって話になりまして。「ゾーク」のような、テキストアドベンチャーがなかったというのもあり、可能性はないか模索してたんです。プログラムもグラフィックも負担がないだろうと、文字とわら半紙だけのグラフィックでプロト版作って発表したんです。そしたら、発想は分かるけど、これじゃ売れないよと言われました。


平井 新しいものには大体そういう反応になりますよね。

中村 地味だしね(苦笑)。その後、背景などを追加していきました。だからまったく新ジャンルというよりは、テキストアドベンチャーを下敷きにしているんです。あと大きかったのは、スーパーファミコンが出た当時注目された、“拡大縮小ができる”という点よりもサンプリング音源でリアルな音が出せるというのを利用したかったんです。音が人間に与える演出効果を「ET」を初めて観た時にそう思ってて。自転車で飛んでいく感動のシーンが、自分は感動できなかったんです。気持ちが高まっている自分もいましたが、どこにでもある話なのにという自分もいて。なぜ、ちょっと感動できる自分がいるんだろうと思った時、もしかしてこれって音楽の力が大きいんじゃないかとの思いにいたりまして。

平井 確かに音楽にはエモーショナルに刺激されるものが多いですよね。

中村 当時、ファミコンの「スイートホーム」という映画のゲーム版がカプコンから発売されたんですが、怖いという感情を喚起する点で面白いと思ったんです。このゲームで感じる怖さというものはなんだろうと。

平井 ゲームの方が能動的だからですかね。

中村 映画の方は映像を見せすぎる(見えすぎる)ので、つくりものなのが見えてしまうんですよ。だから怖くない。ゲームで怖い思いをさせるのは面白いと思ったんです。

平井 確かに「弟切草」を最初にやった時、ボタンを押すのが怖くてためらいました。想像して扉の向こうになにがあるんだろうと怖がる自分がいたんですよね。そこが能動的な面白さにつながると。では、「不思議のダンジョン」はどうでしょう?

中村 これも元ネタがあって「ローグ」なんです。地味で難しいゲームなんですが。「弟切草」が終わって、次になにを作ろうとかという話になっていた時、ローグやろうよという提案がありまして。ボクはやってなかったので改めてやってみたんです。やってみたら全然面白くないんです。面白さが分かるところまでいかない。なんか拾って戦ってもすぐ死んでしまうし、アイテムも全部未識別だし何使っていいのか分からない。

 でもスタッフが面白いというからには何かあるはずだと、ずっと我慢してやってたんです。ある時、同じ未識別のものが2つあったんです。1個使ったら識別されて、残り1個が何であるか分かった。そしたらそれは有効に使えるわけですよ。その時、このゲームはそういうものかと分かった。自分の頭の中でつながって、この識別していくという面白さをどう単純化させたらいいのかを考えたんです。そして、スーパーファミコンユーザーに向けて開発がスタートしたんです。

平井 ターン制の導入は?

中村 それもローグからですよね。あのシステムでやるにはターン制にしながら、アクションゲームっぽく見せるやり方を考えたんです。

平井 キャラクターをトルネコにしたのはなぜですか?

中村 実はトルネコは後付けなんです。ローグを作ろうとして試行錯誤してたんですが、とにかく世界観的に難しいし、なんとか分かりやすくしたかった。そしたらある時、ドラクエでやればいいじゃないかと思いついて。

平井 なぜトルネコを選んだんですか? 商人だからですか? 失礼ながら確かに全然フォーカスされなかったキャラクターじゃないですか。

中村 なんでだったかな。やはり道具や武器からですかね。

平井 確かに戦士系をもってきてもピンとこなかったかもしれませんね。

中村 でも最初からトルネコでしたね。チュンソフトの中で、逃げ回るイメージから勇者や戦士じゃないよねという話になった時に、トルネコがいいじゃないという話になりまして。

平井 ボクもローグは遊んでいたので、「トルネコ」が発売された時、ついに出たなって思いがありましたよ。

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