誰も見たことがないゲームエンターテイメントを創出するために――SCE平井一夫社長基調講演TGS2009/基調講演

TGS2009初日、基調講演のスタートをきったのは、ソニー・コンピュータエンタテインメント代表取締役社長兼グループCEO・平井一夫氏。波に乗るプレイステーション陣営の新戦略とは?

» 2009年09月24日 19時29分 公開
[池谷勇人,ITmedia]

好調のPS陣営、さらなる戦略は?

ソニー・コンピュータエインメント代表取締役社長兼グループCEO・平井一夫氏

 いよいよ本日より開幕となった「東京ゲームショウ2009」。ビジネスデイ初日となる9月24日には、ソニー・コンピュータエインメント代表取締役社長兼グループCEO・平井一夫氏による基調講演「ソニー・コンピュータエンタテインメント2009新戦略」が行われた。

 新デザイン・新価格で巻き返しをはかる新型プレイステーション 3の発売をはじめ、11月にはUMDドライブを廃したPSPのネットワークモデル「PSP go」、さらに12月にはキラータイトルである「ファイナルファンタジーXIII」の発売と、秋から冬にかけ大きなニュースが続くSCE。それだけにやはり期待度は高かったようで、早い時間からの貴重講演にもかかわらず、座席はほぼ満席に。海外のメディアも多く駆けつけており、世界的な注目度の高まりもうかがえる形となった。

ネットワーク普及の「8つの鍵」

 今後の戦略について触れる前に、平井氏はまず「初代プレイステーションが発売された当時とはユーザーの遊び方も、ライフスタイルも変化している」と指摘し、「今までどおりの方法では成長は見込めなくなっている」を問題を提起。これを踏まえて「今後どのように業界が成長していくべきか、柔軟な思考で考えていくのがプラットフォームホルダーとしての義務」であると語った。

 その上で、やはり今後切り離せないのがネットワーク。今後ネットワークとゲームの関係を考えていくにあたって、平井氏は次の「8つの要素」を満たしていくのが重要であると指摘する。

 その要素とは、聞く(Listen)、観る(Watch)、遊ぶ(Play)、創る(Create)、共有する(Share)、交流する(Communicate)、発見する(Discover)、学ぶ(Learn)の8つ。例えばSCEの「リトルビッグプラネット」を例に取ると、ユーザーが自分でステージを「創り」、さらにそれを他のユーザーと「共有」し、「遊び」ながら「交流」していくことで、今までにない、ネットワークならではの遊び方を提案することができたという。これはあくまで一例だが、ネットワークを核としながら、これら8つの要素を積極的に取り入れていくことで、いままでにないゲームエンターテイメントを創出していくことができる、というのが平井氏の考えだ。

 「今後も新しい要素が出ては消える、という状態が続くが、周囲にアンテナを張り巡らし、その中でも本当の意味で楽しんでもらえるコンテンツを創出していかなければならない」(平井氏)。

ネットワーク時代に求められる、8つのユーザー体験
これら8つの要素が、新しいエンターテイメントを創出するカギとなる

この段階で値下げに踏み切った理由

 続いて平井氏は、新型PS3やPSP goといったハード施策についてもコメント。

 つい先日、価格・デザインをリニューアルし再ローンチをはかった新型PS3は、ご存じのとおり発売以来全世界で好調なセールスを記録。平井氏によれば、発売から3週間で全世界実売台数が100万台を突破したという。

 ただ、値下げのタイミングについては「時期が来れば自動的に下げるというものではない」とあくまで慎重な姿勢を見せる。ハードとは価格と、ラインアップの2つが揃ってはじめて魅力的に映るもの。今回値下げに踏み切ったのには、コストダウンもさることながら、年末商戦に向け魅力的なソフトが多数揃い、PS3ならではのエンターテイメントを提供できる目処が立った、というのがやはり大きかったようだ。

モーションコントローラを手に持って説明する平井氏

 そのほかハード関連では、E3で発表されたPS3用モーションコントローラについても平井氏はコメント。日本では2010年春の発売を予定しており、現在はデュアルショックシリーズに続く新たなPS用コントローラの定番となるよう、多くのゲームを集めている段階とのことだった。

 またPSPについても、現時点でシリーズ累計で5290万台(全世界)を販売しているのに加え、さらに秋からはPSP goが新たなラインアップとして加わることとなる。PSP goでダウンロード可能なゲームのラインアップについてはまだ具体的に発表されていないが、平井氏によれば、欧州や北米ではローンチと同時に700タイトル以上、日本でも450タイトル以上が遊べるようになる予定だという。この数字はおそらく、既存のゲームアーカイブスなども含めてと思われるが、あとは発売までにどこまでオリジナルタイトルや、既存のUMDタイトルのダウンロード版を用意できるかが大きなポイントとなりそうだ。

「PSP goはPSPシリーズでは初のネットワーク専用端末という位置付け。今後タイトルだけでなく周辺機器なども発表していき、ネットワーク時代の携帯エンターテインメントの世界を創造していきたい」(平井氏)

Natalと違い、光や感触によるフィードバックを提供できるのが利点
PSPは現時点での累計出荷台数5000万台を突破

ハードとハードをつなぐ「PlayStation Network」

 PS3やPSPといったハードが縦軸ならば、それらを横軸でつなぐのが、PlayStation Network(PSN)だ。平井氏によれば、現時点でPSNの登録アカウント数は約2900万、総コンテンツダウンロード数は6億回以上、累計売上高は250億円以上にものぼるとのことだった。

 また現状、PSNで販売されているコンテンツのほとんどはゲームコンテンツであり、ゲームが普及の牽引役となっていることは事実。しかし平井氏は今後、より多くの人にPSNを楽しんでもらえるように、ノンゲームの部分もさらに拡大させていくという。

 先ほどの「8つの要素」で言うと、特に海外では「観る」の部分が強い。欧州や北米では映画やテレビ番組などの動画配信がさかんに行われているし、イギリスではこの秋より、BBCの番組を過去1週間まで遡って視聴できるサービスも開始されている。秋から冬にかけてはコミックの配信にも参入予定としており、こちらも軌道に乗れば有力なノンゲームコンテンツとして成長する可能性がある。

PSP goが発売されれば、PSNの重要性はさらに高まることになる

 「交流する」の部分で言えば、現状の「PlayStation Home」がそれにあたる。こちらはサービス開始から10カ月で、アカウント数は80万人を突破。そのほかにも、現状では該当するコンテンツが少ない「発見する」「学習する」といった部分についても、積極的なコンテンツの拡充に注力。今後もユーザーひとりひとりに合ったサービスの形を模索していきたいとのことだった。

 待ちに待った値下げと、キラータイトルの投入。ここへ来て一気に流れに乗りつつあるPS陣営だが、誤解を恐れず言えば、平井氏の講演内容は驚くほど「普通」だった。

 これといって新しい発言はなく、ある意味ではこれまでメディアに向けて言ってきたことをあらためてまとめ直しただけといった印象も受ける。しかし裏を返せばそれは、当初からSCEの目指していたものが、今の段になってもブレていないということだ。流れが変わり、ユーザーのすそ野が広がったことで、「PS陣営が本当に目指していたもの」が今後、ようやく実現できるようになっていくのかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2504/27/news062.jpg 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
  2. /nl/articles/2504/28/news013.jpg 夏に向けてトリミングしたワンコ、飼い主が迎えに行ったら…… 注文ミスが生んだ“予想外の姿”が180万表示 「もっと見たい」「じわじわくる」
  3. /nl/articles/2504/24/news136.jpg 青い毛糸で輪っかをひたすら編み、つなぎ合わせると…… 予想もつかなかった完成品が195万再生「これはヤバい」「なんてアイデアなの」【海外】
  4. /nl/articles/2504/28/news147.jpg Vtuberの死去を所属事務所が発表 「詳細については控えさせていただきます」
  5. /nl/articles/2504/25/news063.jpg 紙コップに“ひも”をクルクル巻くだけで…… 1000万再生された“驚きのアイデア”に「これは思い付かなかった」【海外】
  6. /nl/articles/2504/27/news008.jpg 万博会場に3DSを持って行ったら…… 300万表示の“目を疑う現象”に動揺広がる 「信じられない!」「今令和やぞ」
  7. /nl/articles/2504/26/news004.jpg ケガして動けないエビのため半年間、口元にエサを運んで介護したら…… 「びっくり」「不思議」まったく予想外の変貌に大反響
  8. /nl/articles/2504/28/news076.jpg 「復活キター!」 マクドナルド、“仲良しな二人”の復活を予告 意外な組み合わせに「仲悪いと思ってた」「また帰ってきたか、、、」
  9. /nl/articles/2504/27/news021.jpg 釣り人が捨てたフグを保護 → ありえない量のエビを与えたら…… 「大笑いしてしまいました」と反響を呼んだ姿から1年後……保護主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2504/25/news022.jpg 足の悪い母のため、庭に作った小道→100均アイテムで雰囲気ガラリ 天才アイデアに「すごい!」「真似します」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  2. 【大阪万博】皇后さま、帽子から靴までブルーとピンク 天皇陛下のネクタイと“連日おそろいコーデ”
  3. 飲み終えた“コーヒーかす”→捨てずに石と混ぜると、1カ月後…… 「感動」目からウロコの裏ワザに「やってみよう」
  4. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  5. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  6. 「ウソだ…」「言葉が出ない」 幼少期から絵を描き続けた少年→15年後…… 大人になって描いた絵が100万再生【海外】
  7. 湘南の砂浜に打ちあがった“超危険生物”を飼育したら…… 貴重な姿に「初めて見ました」「かっこいい」と大反響→2年後の現在について話を聞いた
  8. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」話題になった飼い主に聞いた
  9. 万博「ミャクミャク」記念500円硬貨、金融機関での「品切れ」&高額転売相次ぐ…… 5倍以上の金額で出品される事態に
  10. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「争奪戦すごそう」 品切れや転売の懸念も「1個でいいから欲しい」「たくさん作って」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  3. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  4. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  5. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  6. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  7. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  8. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  9. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  10. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】