僕らが作っているのは「作品」ではなく「商品」――宮本茂氏が30年の仕事史を振り返る(1/3 ページ)
「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」開催3日目となる10月24日、会場となった日本科学未来館では、「Asiagraph Award 2009」を受賞した宮本茂氏による記念講演「宮本茂の仕事史」が行われた。
マリオの原点は「ひょっこりひょうたん島」にあった?
去る10月22日から25日にかけ、東京・お台場の日本科学未来館&東京国際交流館にて開催された「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」。開催3日目となる24日には、「スーパーマリオブラザーズ」や「Wii Fit」など数々のヒット作を生み出してきた、任天堂の宮本茂氏による記念講演「宮本茂の仕事史」が行われ、多くの来場者を集めた。
本講演は、アジアの文化・技術・コンテンツの発展に大きく寄与した人物に贈られる「ASIAGRAPH Award 2009」の授賞式と併せて行われたもので、宮本氏は今回、ゲームを通じて世界に存在感を示した点を評価され「創(つむぎ)賞」を受賞。講演ではプレゼンターを務めた「ASIAGRAPH 2009」実行委員長の河口洋一郎氏が聞き手となり、対談形式で宮本氏の半生を振り返っていく形をとった。
少年時代は人形劇、漫画に熱中
タイトルこそ「仕事史」となっているものの、講演内容は宮本氏が任天堂に入社する以前、それこそ生い立ちや学生時代のエピソードにまで及んだ。もともと任天堂には工業デザイナーとして入社した宮本氏だが、そこへ至るまでには様々な紆余曲折があったという。
「小学校のころは、『チロリン村とくるみの木』や『ひょっこりひょうたん島』みたいな人形劇をやりたかった。それから漫画家に興味が移って、中学校では漫画クラブを作った。でも、3年間がんばったけど、周りがすごくて挫折したんです。こいつらにかなわらなかったら未来はないだろうって」(宮本氏)
その後一旦は漫画家の夢を諦めたものの、やはり絵を忘れることはできず、大学では工業デザインの道へ。その後父親の紹介もあって任天堂へと入社し、おもに玩具やカルタのデザインを手がけることとなった。この当時は、マクドナルドで配布される景品の製作などにも携わっていたという。
次に大きな転機が訪れたのは1978年。この年、世間では「スペースインベーダー」が大ブームを巻き起こし、これを受けていよいよ任天堂も本格的にゲーム開発へと参入することになる。これまでにも大型筐体を中心に業務用ゲームを開発していた任天堂だが、ゲームの中身=ソフトウェアを本格的に作るようになったのは、やはり「スペースインベーダー」がきっかけだったとのこと。
こうして誕生したのが、はじめての代表作となる「ドンキーコング」である。開発にあたって宮本氏はまず、人々がなぜ「スペースインベーダー」に夢中になるのかを徹底的に分析し、「ドンキーコング」では「誰が見ても何をしたらいいか分かるゲーム」を作ろうと考えた。ジグザグに足場が並び、その上でコングが待ち受けるというステージのデザインは、「ゴリラが女の子を連れて逃げていったら、誰でもここへ行こうとするだろう」という、宮本氏の計算から生まれたものだったという。
ちなみに「ドンキーコング」の主人公として生まれた「マリオ」のデザインは、「今にして思えばドン・ガバチョ(「ひょっこりひょうたん島」の登場人物)の影響を受けていたかもしれない」と宮本氏。確かに鼻が大きいところや、チャームポイントのヒゲ、帽子など、言われてみればマリオとドン・ガバチョの共通点は確かに多いかもしれない。
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