コンテンツデフレの時代に、ソーシャルゲームが急成長を見せたわけOGC 2010(2/2 ページ)

» 2010年02月18日 15時11分 公開
[池谷勇人,ITmedia]
前のページへ 1|2       

ソーシャルゲームはなぜ受け入れられたか?

ジャーナリストの新清士氏。iPhoneアプリやソーシャルアプリの話題を柱に、今後のゲーム産業の展望を語った

 一方、ソーシャルゲームはなぜこれほどまでに受け入れられたのか、新氏は次のように分析している。

 第一に、コンテンツデフレの時代においては「時間」がもっとも重要な価値を持つということ。時間は交換することも、貯蓄することもできない。「その時間を過ごしているのが無駄じゃない、と納得させられるもの」でなければ、ユーザーは遊んでくれないという。1回のプレイ時間が短く、なおかつ現実のコミュニティと密接に結びついているソーシャルゲームは、この点において大きなアドバンテージがある。

 第二に「グラフィックのクオリティが行き着くところまで行ってしまった」ことも大きい。グラフィックへの感動が薄らげば、自然に人々はゲーム性を求めるようになる。それならソーシャルゲームでも十分ではないか、と新氏は分析している。

 そして第三に、「もっとも面白い対戦相手は人間」であるという点だ。これについては澤氏も講演の中で触れているが、「対戦とはむき出しのコミュニケーションそのもの」であり、「永続的かつもっとも変化に富んだコンテンツ」であると言う。どれだけゲームやAIが進化したとしても、モニタの向こうに見える「人間」との対戦を越える面白さを生み出すことはできないというわけだ。

 これらの条件をすべて満たしているからこそ、ソーシャルゲームは爆発的なブームとなった。今やmixiアプリの数はPC、モバイル合わせて1000を越えており、その多くをソーシャルゲームが占めているというのが現状だ。しかし同時に、新氏は次のように警鐘も鳴らしている。「こうした状況下では、“ウィナー・テイクス・オール”の状態に陥りやすい。おそらく『サンシャイン牧場』を越える農場アプリはmixiアプリではもう現れない」。

チャンスは何度でも訪れる

 しかし、だからといってチャンスがないわけではない。なぜなら「ユーザーが持っているハードスペックは一定間隔でリセットされるから」だと新氏は語る。ハードがリセットされれば、低スペック向けのサービスは淘汰され、そのたびに新しいプラットフォームが台頭できるチャンスが生まれる。

「今のスパコンは、10年後には1000ドルクラスのPCになる。今の1000ドルPCは、10年後には200ドル以下のモバイル端末になる。重要なのは、そのタイミングでいかに自分たちのサービスをオーバーラップさせるかであり、そのチャンスは今後何度でも訪れる」と新氏。

 また同時に、今後のカギは「物語性」をいかに盛り込むかであるとも語る。

 ここで言う「物語性」とは、いわゆるストーリーのことではない。物語とはプレイヤーがそこから得る体験そのものであり、それは製品や企業、個人など、どんなところにでも含まれると言う。例えばiPad対Kindleのどちらが勝つか、という論争はなぜ盛り上がるのか。なぜ巨人阪神戦は盛り上がるのか。それは、人々がそこに物語を見出しているからにほかならない。

 新氏は現在のデジタルコンテンツ市場を、「価格と価値のバランスが崩れた状態」と表現する。無料、もしくは低価格で遊べるコンテンツが市場に溢れた結果、これまで当たり前のように「1本7000円」で売られていたゲームは「高い」と思われるようになってしまった。

 このバランスが以前の状態に戻ることはおそらくないが、それを食い止めるカギが「物語」にはあると新氏は予測する。プラットフォームが変わるタイミングを見極め、そこで人々が好きになってくれる“物語”を供給することができれば、次の成功者になるチャンスはいくらでも転がっている。ソーシャルアプリがこれほどの人々の心を捉えたのも、ちょうどプラットフォームが変わるタイミングで、「人対人」という何よりもエキサイティングな物語を提供できたからではないだろうか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/15/news019.jpg 4カ月赤ちゃん、おねむのひとり言が止まらず…… 心とけそうなおしゃべりに「とてつもなく可愛すぎる!」「ウルウルした」
  2. /nl/articles/2404/15/news020.jpg 1歳妹が11歳姉に髪を結んでもらうやさしい光景が160万再生 喜ぶ妹のノリノリのリアクションに「可愛すぎて息できない」「ねぇね髪の毛結ぶの上手」
  3. /nl/articles/2404/13/news014.jpg 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  4. /nl/articles/2404/14/news013.jpg 海岸を歩いていたら「めっちゃ緑のヨコエビがおって草」 作りものと見まごうほどの色合いに「ガチャの景品みたい」と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/11/news165.jpg 遊び疲れた子猫を寝かしつけてみた 絵本のような光景に「きゃーあ」「可愛すぎて変な声出た!」
  6. /nl/articles/2404/15/news038.jpg ダイソーの材料を“くっつけるだけ”で作れる、高見え「カフェコーナー」 今流行りのジャパンディな風合いに「天才的に美しい」「まねする!」
  7. /nl/articles/2404/15/news103.jpg 「ケンタッキー」新アプリ、不具合や使いづらさに不満殺到…… 全面的刷新も「酷すぎる」「歴史に名を残すレベル」
  8. /nl/articles/2404/15/news014.jpg 100均大好き起業ママが「考えた人天才すぎる」と思わず興奮 ダイソー&キャンドゥの優秀アイテム5選が参考になりすぎる
  9. /nl/articles/2404/14/news006.jpg 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  10. /nl/articles/2404/15/news021.jpg 下っ腹に合わせて購入したGUデニムで50代女性に悲劇→機転を利かせたコーデに称賛!! 「笑って楽しんで60代、70代を迎えたい!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  2. 500円玉が1つ入る「桜のケース」が200万件表示越え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「オトナも絶対うれしい」「美しい〜!」
  3. 赤ちゃんがママと思ってくっつき爆睡するのはまさかの…… “身代わりの術”にはまる姿に「可愛いが渋滞」「何回見てもいやされる!」
  4. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  5. 日本地図で「東京まで1本で行ける都道府県」に着色 → まさかの2県だけ白いまま!? 「知らなかった」の声
  6. 中森明菜、“3か月ぶりのセルフカバー動画”登場でネット沸騰 笑顔でキメポーズの歌姫復活に「相変わらずオシャレで素敵」「素敵な年齢の重ね方」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. もう別人じゃん! 「コロチキ」西野、約8カ月のビフォーアフターが「これはすごい」と驚きの声集まる
  9. 娘がクッションを抱きしめていると思ったら…… 秋田犬を心ゆくまで堪能する姿が440万再生「5分だけ代わっていただけますか?」「尊いなぁ…」
  10. 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」