敗者を作らないゲーム作りを――ネオウィズゲームス「ブラウザ戦国」を日本でサービス
ブラウザゲームによるグローバル展開を表明したネオウィズゲームスのキーマンに聞いてみた。
ネオウィズゲームスは海外サービス推進の第一弾として、日本を意識したブラウザゲームで直接サービスを提供すると発表した。そのタイトルが「ブラウザ戦国」である。
ネオウィズゲームスは2007年11月、韓国のゲームホールディングスとともにゲームオンに対するTOBおよび第三者割当の引き受けを通じて戦略的資本業務提携を行い、その後日本での展開についてゲームオンを通してサービスを行ってきた。
そんな折、ネオウィズゲームスは日本を皮切りに、ヨーロッパ、北米等、そして世界へと様々なジャンルと内容のタイトルを順次投入すると発表。この海外サービスを通じて現地ユーザーとのコミュニケーションを図りつつ、現地市場に対するノウハウはもちろん、各国においてブランド・パワーを築き、海外事業を強化していくことを表明している。
今回、来日したネオウィズゲームスの海外戰略 Eric Young S. Oh 部長、Louis Kimプロデューサー、朴志雄マーケティングマネージャーにインタビューをする機会を得た。ブラウザゲームによるグローバル展開とはなんなのか。そして、日本を意識したブラウザゲーム「ブラウザ戦国」とはなんなのかを聞いてみた。
「ブラウザ戦国」は、その名のとおり戦国時代を舞台にした戦略シミュレーションゲーム。戦国時代を舞台に、プレイヤーたちは拠点を充実させ、武将たちを育成し、全国統一への覇を他者と競う。いわゆる「トラビアン」系とはちょっと趣を異なるようだ。
前述したとおり、日本においては従来のゲームオンを通した形を取らず、「ブラウザ戦国」はネオウィズゲームス独自展開となる。サーバを置く場所もケースバイケースで対応。チャネリングなどニーズに応じて柔軟に対処していくと、Eric氏を含め皆一様に笑顔で不安はない様子だ。
だが、すぐに笑顔は消える。ゲームの題材が題材だけに、ある程度の“懸念”はあると推測していると皆神妙だ。日本のユーザー的にも“なぜ韓国のゲーム会社が戦国時代もののゲームを作るのか?”と思うかもしれない。だからこそ、日本の戦国時代の専門家をアドバイザーとして迎えているし、テキストについても日本人スタッフによる徹底的なチェックを受けているとEric氏。また、テーマ的にも日本の戦国時代を選択した段階で、ローカライズは必要としない。ユーザーからの意見は積極的に吸収し、対応しやすいと語る。
「世界的にも、ウェブブラウザ市場だけを鑑みると、日本の成長率には大いに興味があった。欧米や中国に比べると、規模的にはそう大きくはないが、可能性は高く評価している」。市場を分析した結果、従来の日本で展開しているブラウザゲームはソーシャルネットワークゲームのような“軽い”ゲームばかりだった。日本人に好まれていた戦略シミュレーションゲームにしても、テーマ的に戦国時代を扱ったものがなかったのだ。
こうした分析は、なにもネオウィズゲームスだけがしていたわけでない。スクウェア・エニックスとYahoo!が提供する「戦国IXA」も同ジャンルといえる。ただし、Eric氏は似ているようで「戦国IXA」とは違うものだとはっきりと断言した。曰く、「戦国IXA」は従来のライトユーザーをターゲットにしているのに対して、「ブラウザ戦国」はもっとディープ。しかも、正面から戦国時代を描いている点にも言及した。
Eric氏は、「2つは競争相手というより、戦国時代のゲームを活性化する力を合わせるべくタイトル」と、他の戦国時代にフィーチャーしたブラウザゲームとともに、この分野の“パイ(=ユーザー層)”を大きくしたいと期待感を持っている。
「ブラウザ戦国」は来年春正式サービス開始を目指し、現在開発が急がれている。「ブラウザ戦国」は先にも挙げたように、日本で展開するグローバル展開の第1弾という立ち位置だ。もちろん、欧米でのコンテンツとして本作をそのままローカライズするわけではない。各国の市場情勢や嗜好を分析し、各国に合わせたジャンルを投入していくことになる。今後は第2弾、第3弾と計画も進行している。
日本でのサービスについて目標を訊ねるとEric氏は、「どうすれば日本ユーザーがハッピーになれるかを考えている」と、あくまでも同時接続数や金額といったものは二次的な目標でしかないと説明した。その根本には、すべての日本のゲームユーザーをカバーした、誰しも楽しめるものを提供するのは無理だと分かっているからだ。ただEric氏は、リーチすべきターゲットは理解していると真剣だ。「戦国時代が好きで、戦略ゲームが好きで、ブラウザゲームを楽しめる、そんなユーザーに届くコンテンツにしようとしています」。
戦略性が高いブラウザゲームのトレンドは、自分が強くなって、弱者へ攻撃するのが常だと3人。PvPなどが顕著な例だ。強くなった時にどう他のユーザーから見られるか、それを会社がどう支援しているのかが重要と分析する。それは、誰かが勝つと誰かは被害者になる世界だ。勝者への満足度を上げたいが、敗者の不満は解決していないのではないだろうか? と考えたのだ。
「特定の満足度を上げても、不満が出ないようにバランスを取るべきだと考えている」と、3人はランキングを例にとる。すごくランキングの高いユーザーが、ランキングの低いユーザーを攻撃すると、低ランキングのユーザーは通常進退きわまるのが常。だからといって、低いレベルのユーザーのために、素早くレベルアップするような施策はバランスを崩してしまう。ランキングの差を埋めるべき、“敗者の戦略”も用意すべきと「ブラウザ戦国」には、さまざまなシステムを忍ばせていると、Eric氏はうれしそうに笑う。それは、正規戦では勝てなくても、存在感を示すことができるものになるそうだ。
一般的なゲームは、他者を滅亡させることはできるが、滅亡させられたほうはその時点でゲームから離脱することを意味する。それではユーザー数はある一定値から増えていかないし、第一面白くない。滅亡させられてから面白くなるゲームがあってもいいじゃないかと考えたわけだ。本作はどちかというとRPG性が強く、武将のレベルが大事だからこそ拠点がなくても問題はない。詳しいシステムについては後日明かすと前置きしながら、実にいたずらっ子のように楽しそうに説明してくれたのが印象的だった。
韓国でも近年、有名武将などは漫画や大河小説、ゲームなどからキャラクター人気が高まりつつある。書店などでも戦国時代を扱ったものも並んでおり、認知されてきているとEric氏。「韓国のゲーム会社として、日本の歴史をテーマにしたものをゲーム化するのは、自分で考えても日本のユーザーも間違っている歴史を作っていると思われるのではないかと疑念を抱くのは理解できます。ですから、そこだけは間違ってはいけないし、考証をしっかりしています。とてもダイナミックな時代なので、どう作っていくか。戦国時代が好きな人にどう満足感を与えるか――。開発側とユーザーとのコミュニケーションが大事だし。どういう意見でも受け入れます。運営的にもオンライン、オフラインともに、信頼感を得るためにコミュニケーションを取れる機会を設けたい」。
「ブラウザ戦国」は、MMORPG並みのユーザー対応を目標にしている。掲示板も活用するし、アップデートのタームも一般のMMORPG並みに頻繁に、アップデートを実施していきたいとしている。呉氏は最後に、「従来の考え方では十分なアップデートをすることなく、次々にゲームは消費されていく側面がある。ゲームがなくなるのは悲しい。継続的に楽しめるコンテンツとなることが目標です」と意気込みを語った。
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