いかに戦ったのか――「米長邦雄永世棋聖 vs. ボンクラーズ プロ棋士対コンピューター 将棋電王戦」を振り返る:人間の徹底研究対自然体のコンピューター(1/2 ページ)
この数年、将棋ファンの間で高い関心事となっている人間vs.コンピューター将棋ソフトの対決が、一時代を築いた大棋士、米長邦雄を相手に実現。対するのはネット上でその実力を見せつけている「ボンクラーズ」。徹底研究で臨んだ米長邦雄永世棋聖は、最強コンピューター相手にどのような対局を見せたのか?
コンピューター将棋と最強の棋士が指したらどっちが強いのか――将棋ファンの間では、ここ数年コンピューター対人間の対決が大きなトピックスとなっている。そのきっかけとなったのは、2006年に行われた渡辺明竜王vs.ボナンザ戦で、コンピューター将棋ソフトであるボナンザが大方の予想を覆し善戦。敗れはしたものの、コンピューター将棋の強さを見せつけた。その後、2008年にはトップアマチュアを撃破。2010年には女流棋士最強の1人、清水市代女流王将(当時)を破り、人間側でコンピューターの挑戦を誰が受けるのかが注目されていた。
そこに、対局相手として名乗りを上げたのが米長邦雄・日本将棋連盟会長で、プロ棋士対コンピューターの新棋戦「電王戦」を創設。1月14日にその第1ラウンドとして「米長邦雄永世棋聖 vs ボンクラーズ プロ棋士対コンピューター 将棋電王戦」を、東京・千駄ヶ谷を東京将棋会館で開催した。当日はニコニコ生放送でその模様が完全生中継された。
徹底的な準備で臨む人間vs.自然体のコンピューター
人間側でコンピューターの挑戦を受けて立つ米長邦雄は、中原誠・加藤一二三とともに将棋の一時代を築いた棋士で、現在は引退しているものの今回は将棋連盟会長としてではなく「永世棋聖」として対局に臨んでいる。「永世棋聖」とは、将棋のタイトル戦「棋聖」を5回以上獲得した棋士が現役引退後に名乗れる称号で、現役で資格を持つ棋士を合わせて5人しか達成していない。
今回の対局に向け、米長永世棋聖はシングルサーバーのボンクラーズを自宅に2台用意。150局以上の練習対局を重ねて本番に備えてきた。田中寅彦八段がニコニコ生放送の解説で明らかにしたところによると、米長永世棋聖はさまざまな若手棋士を事前研究のため自宅に招き、1局1局をノートに付けつつ対ボンクラーズ対策を練っていたそうである。
一方、コンピューター代表として登場するボンクラーズは、昨年5月に行われた「世界コンピュータ将棋選手権」で優勝した将棋ソフトで、富士通研究所の伊藤英紀氏が開発したものである。ボンクラーズという名前は、コンピューター将棋界に革新をもたらしたソフト・ボナンザをクラスター接続したことに由来する。日本将棋連盟が運営するオンライン対局サービス「将棋倶楽部24」では人間相手に9割以上の勝率を出しており、その実力は将棋好きな人には広く知れ渡っている。
伊藤氏は、今回の対局に向けて11月より「将棋倶楽部24」に参戦。その結果を元にボンクラーズの弱点を改良してきたそうで、対局相手については「特に米長先生相手だからという対策はしていない」という。また、今回対局するボンクラーズがインストールされるのは、富士通製のブレードサーバー「PRIMEGY BX」シリーズの8ブレードタイプ(会場の電力事情により6ブレードのみ稼働)で、ごく普通のサーバーマシンとなっている。各ブレードは、CPUに6コアのIntel Xeon E5690を2個搭載し、ネットワークを高速通信に強いInfiniBand(最大32GB/bit)へ強化しているものの、何億円もするような高価なマシンではない。いわば、ボンクラーズは普段通りの自然体で臨んでいる。ちなみに、ネットワーク部分を強化した理由については、富士通関係者が次のように明かしている。
「ボンクラーズのクラスターシステムは、各ブレードごとが独立して動作しています。局面の読む際には、マスターとなる1台がスレーブとなるその他のブレードに読む範囲を割り振るのですが、あるマシンでの結論により、他のマシンに割り振った作業が無駄になることがあります。そこで、サーバー間で指令を頻繁にやりとりし、無駄な読みを減らすことが重要なのです」(富士通関係者)
自然体で臨むボンクラーズに対し、徹底した事前研究で挑戦を受けて立つ人間側。その熱い戦いは、1月14日の午前10時20分に切って落とされた。
序盤は米長永世棋聖が会心の指し回しで優勢に
今回の対局は、昨年10月の記者発表で先手後手が振り駒により決められており、ボンクラーズが先手番、米長永世棋聖が後手番となっている。また、ボンクラーズの手を将棋盤に着手する人間は米長永世棋聖が指名することになっており、実際に指名されたのは米長永世棋聖の弟子中で最年少のプロ棋士・中村太地五段だった。立会人の谷川浩司九段や報道陣らが見守るなか、中村太地五段が指したボンクラーズの初手は7六歩。角道を開ける、将棋では最もポピュラーな第1手目である。そして、注目された米長永世棋聖の2手目は6二玉で、その瞬間に対局室の隣にある控え室からは大きなどよめきが起きた。
6二玉は人間同士の対局では損とされているうえ、昨年12月に1手30秒のルールで行われたプレマッチでも、6二歩を採用した米長永世棋聖がボンクラーズに完敗している。にもかかわらず連続採用したということは、事前研究で自信を持っているあらわれである。
米長永世棋聖は記者会見ではその狙いについて「これは、ボンクラーズという1800万手も読む機械に対し、手を読ませないという作戦で、いわば『万里の長城』を築くというものです」と語っている。その後、後手は玉の先に金銀を繰り出し厚みを作り、先手陣を「万里の長城」で圧迫、駒を働かせない作戦をとる。
対する先手も、飛車を活用しようと縦横に動かすものの、米長陣営に隙はなく決定的な攻めを繰り出すことができない。控室で観戦する棋士たちは「シミュレーションしていたなかで一番いい差し回しではないか」(遠山雄亮五段)「6二玉とした先の局面を10種類ぐらい考えたとして一番いい展開ではないか」(船江恒平四段)と、米長永世棋聖の指し回しを賞賛していた。
一方、ボンクラーズもこの時点では「苦戦」とはいえないものの、自分の優勢度合いが下がりつつあると判断していた。ボンクラーズに限らず、コンピューター将棋ソフトは各局面の有利不利を「評価関数」と呼ばれる関数を利用して分析している。長年コンピューター将棋界に携わる瀧澤武信・早稲田大学大学院教授によると、評価関数の数値はある程度標準化されていて「評価関数の数字が100でおよそ歩1枚程度有利、1000だと逆転できないぐらいの大差とソフトが判断しているということです。逆にマイナスの数値であれば、同じだけ不利ということになります」という。ボンクラーズの評価関数は、2手目で300以上となりその後600近くまで上昇したものの、飛車を動かしている間にどんどん低下。100を切る状況になっていた。
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