売れるのには理由がある:家電と伝統工芸の融合――開発陣の想いが込められた象印マホービンの炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」 (1/2)
象印マホービンが長年培ってきた技術を、いったん白紙に戻して開発された「極め羽釜」。困難の末にたどり着いた原点回帰の炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」。その発売までに至る道のりと、秘められたメッセージに迫る。
40年以上におよぶ、象印炊飯ジャーの歴史
1918年に1本のガラスマホービンから出発したという象印マホービンだが、現在は電気ポットをはじめとした様々な調理家電、生活家電を開発し販売している。その中のひとつに炊飯ジャーがあるのだが、その歴史は1970年に電気で保温できる電子ジャーを開発したところからはじまった。
「象印電子ジャー」は、当時5000円から6000円だったというガラス保温ジャーに対して1万円という割高に感じる価格だったにもかかわらず年末商戦で注目の製品となり話題をさらった。しかし、発売にあたっては、今まで培ってきた真空保温、魔法瓶の技術から、電気保温式への転換が正しいことなのかどうか経営判断が容易でなかった。当時、開発責任者が試作品を社長の家族に試用してもらうことで、経営的決断をうながしたというエピソードもあるそうだが、それが象印マホービンが炊飯ジャー開発の一歩を踏み出した瞬間だったといえるだろう。
その後も象印マホービンでは、炊飯ジャーの開発を続け、2011年発売の「南部鉄器 極め羽釜」では1年間の生産計画を発売からわずか4カ月後に達成したほど消費者に受け入れられたという。
象印マホービンの炊飯ジャー製品の歴史
1970年 世界初、電気で保温できる電子ジャーを発売、大ヒットになった
1974年 炊いて保温できる炊飯ジャーを発売
1983年 マイコン炊飯ジャーを発売。以後、多機能炊飯ジャーを発売していく
1992年 IH炊飯ジャーを発売。より高火力で炊飯が可能になった
1996年 圧力IH炊飯ジャーを発売。「圧力の象印」という代表的な機能になった
2001年 原点の真空技術を内釜に応用した、「真空かまど釜」を内釜に採用
2007年 加圧エンジン搭載の「パワー圧力」炊飯ジャーを発売
2009年 ごはんの甘みを引き出す、「プラチナ真空釜」を内釜に採用
2010年 昔ながらの羽釜、かまどで炊いたごはんを再現した「極め羽釜」を発売
2011年 「極め羽釜」の特別仕様品「南部鉄器 極め羽釜」を発売
炊飯ジャー開発独特の難しさ
炊飯ジャーの新製品開発にあたっては、やはり「おいしさ」を最も大切にするということだが、グループインタビュー、インターネットを利用したアンケート調査、愛用者登録をした顧客への追跡アンケートなども随時行い、ユーザーの意見にも耳を傾けているという。その際に心がけているのは、「おいしさの追求」と「使いやすさの向上」のバランスだと、象印マホービンで炊飯ジャーの商品企画を担当している、第一事業部 マネージャー 後藤 譲(ごとう ゆずる)氏は言う。もちろん、おいしさ、使いやすさ、どちらかに偏っていてもダメだし、だからといって中間を取れば良いのかというとそれも違うのだという。
「炊飯ジャーは『単機能が良い』という意見もあれば、『高機能が良い』という意見もあります。でも、単機能で皆さんに本当に満足してもらえるかというと難しいですし、かといって、あまり多機能になると操作が分かりにくくなってしまいます」と後藤氏は、「どちらの意見も真実で大事にしなければならないのですが……」としながら、製品開発時に直面する矛盾、バランス感覚の難しさを説明する。
また「ユーザーが欲しい製品と売れる製品は必ずしも同じでない」という場合もあるそうだ。これは、非常にかわいらしい外観の製品があって一瞬、ユーザーの食指が動いたとしても「我が家のキッチンには合わないわ」と思い直して、結局は購入しないケースなどが考えられるという。
そして炊飯ジャー開発の根本的な難しさとしてあるのが、誰もが納得する「絶対的なおいしさの基準を決めることが難しい」点だ。もちろん、象印マホービンとしての「おいしいごはんの定義」はある。しかし、おいしさの基準は嗜好による部分が大きい個人個人のものだ。その点がマーケティングするにも、開発するにも最大の難題となっているのだという。
炊飯ジャー開発ならでは「食べ歩き」
象印マホービン、「羽釜プロジェクト」開発陣が「おいしさ」を追及する際の第一歩として行ったことに「食べ歩き」がある。これは「改めて原点に戻ろう、ごはんのおいしさというものを改めて考えてみよう」と行ったということだが、後藤氏も「ほかの家電製品などとは違った、炊飯ジャーならではのマーケティング手法でしょう」と語る。実際に「極め羽釜」の開発にあたっては、「昔ながらのかまど炊きのごはん」がおいしいと評判の店を日本全国「食べ歩き」、遂にめぐり合うことができた大阪の定食屋「銀シャリ屋 げこ亭」に協力を要請し、その理想のおいしいごはん再現を目標としたという。
「銀シャリ屋 げこ亭」店主、村嶋 孟(むらしま つとむ)氏は、開発陣の「おいしい」ごはんを実現する炊飯ジャー開発に取り組む姿勢に共感するところがあり、「ごはんのことしか分からないが、ごはんのことなら分かる」と快く釜内の温度測定をさせてくれたうえで、試作した炊飯ジャーを持ち込んで炊いたごはんを試食するなど協力を惜しまなかったという。「ここまでひとつのお店から全面的にご協力いただいた例は、他の製品の開発ではまずないと思います」と後藤氏も、自身が携わった製品開発の中でも特に印象深かったと述懐する。
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