なぜApple Watchは「防水」ではなく「耐水」なのか

Apple Watchは、「IPX7」の防水性能を持ちますが、公式Webサイトには「防水性能はありません」と記述されています。耐水性能はあるのに、防水性能はない、という不思議な表現はなぜ生まれたのでしょうか。また、本当にApple Watchは防水ではないのでしょうか。

» 2015年05月11日 06時30分 公開
[ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Apple Watchは耐水 Apple Watchは防水ではないと記載されていますが、その理由とは

 「Apple Watchは防水ではない」――。米国時間の3月9日にApple Watchの詳細情報がAppleから発表されたとき、多くのメディアがそう報じました。おそらくAppleのWebサイトの説明文や、タッチ&トライ会場での説明員の発言を元に、そのように判断したのでしょう。

 Apple Watchの製品紹介ページには、以下の記述があります。

Apple Watchは防沫性能と耐水性能を備えていますが、防水性能はありません。例えば、エクササイズ中、雨の中、手を洗う時にApple Watchを着用および使用できますが、Apple Watchを水に浸すことは推奨しません。Apple WatchにはIEC規格60529にもとづくIPX7等級の耐水性能があります。レザーバンドは耐水性ではありません。

 確かに「防水性能はありません」とあります。しかし、これだけでApple Watchが水没したら壊れる、と判断するのは早計です。よく読むと、「IPX7等級の耐水性能があります」と書かれています。このIPX7が、防水性能を読み解くキーワードになります。

 IPX7とは、国際電気標準会議で標準化されている、電子機器の外郭(ケース)に対する水や固形物侵入の保護等級を評価する試験のうち、水の浸入を防ぐ項目を一定レベルまでクリアしていることを表しています。IPX7の場合「常温で水道水、かつ静水の、水深1メートルの水槽に本体を静かに沈め、約30分間水底に放置しても、内部に浸水がなく、性能を保持できる」ということを意味します。

 細かい条件設定が多いため、省略されたり、あるいは誤解されたりして紹介されることも多いのですが、単純に「水深1メートルまで防水」という話ではありません。「静水」なので、「流水」とは違いますし、約30分という時間も、「放置」した場合であって、水中で動かしたり操作したりするわけではないのです。

 こうした条件が、Appleが「防水性能はありません」と記述した原因ではないかと考えます。「防水性能があります」と書けば、多くの人が「水の中でも使える」と誤解する可能性があります。そうすると、「プールで付けて泳いでいたら壊れた」「ダイビングで使ったら動かなくなった」といったクレームが発生することも考えられます。

 一方で、国内で発売されている、多くのAndroidスマートフォンは、防水性能があることをうたっています。それらの製品は「IPX8」もしくは「IPX7」に対応しています。IPX8は、IPX7よりも厳しい条件でのテストでも浸水せず使用できることを表す等級なので、実は厳密な規定はありません。水深がより深かったり、時間が長かったりすることが多いですが、その条件はメーカーなどによりまちまちです。

 いずれにせよ、国内では、IPX7対応のスマートフォンといえば、「防水スマホ」と認識されているわけです。この観点からすると、Apple Watchには防水性能があると言っても差し支えないでしょう。少なくとも、一般的な防水スマートフォンと同等の防水性能はあるわけです。

 ではなぜAppleはApple Watchに防水性能がないといっているのでしょうか。その秘密は、単純な言葉の認識の違いではないかと思われます。英語では、耐水を「Water Resistant」と表現します。防水は「Waterproof」です。先ほどの注意書きを英語で見ると、以下のようになっています。

Apple Watch is splash and water resistant but not waterproof. You can, for example, wear and use Apple Watch during exercise, in the rain, and while washing your hands, but submerging Apple Watch is not recommended. Apple Watch has a water resistance rating of IPX7 under IEC standard 60529. The leather bands are not water resistant.

 Water Resistantという表記は、腕時計などではよく見ると思います。国産の時計では、Water Resistantという記載がある場合、2〜3気圧の防水性能を示し、日本時計協会によると、「日常生活での汗や洗顔のときの水滴、雨などに耐えられるものですが、水仕事、水上スポーツ、素潜り(スキンダイビング)、潜水には使用しないで下さい。水圧の変化が激しい条件では使用しないで下さい。」という注意事項が挙げられています。

 つまり、英語を日本語に訳す中で、ちょっとしたニュアンスの違いが生じ、最終的に「防水ではない」と記述されるに至った可能性が高いと言えます。また「防水」と表現してしまうと保証しなくてはいけない範囲が広くなりすぎ、誤解されやすいことから「耐水」といっているのではないかとも考えられます。

 ティム・クックCEOは、以前「シャワーをあびる際にも身に着けている」と話していましたし、先日Appleが公開したApple Watchの手入れ方法によれば、Digital Crownがスムーズに動かなくなった場合は「蛇口から弱めの水流でぬるま湯を出し、その下にデジタルクラウンを10〜15秒さらします。デジタルクラウンと筐体の狭いすき間を水で流しながら、デジタルクラウンを回したり押したりする動作を続けます。」と案内されています。

 多くの人は、防水対応をうたうスマートフォンを海水に入れてはいけないことや、水中で操作することはできないことは知っているかと思います。その点では、Apple Watchは「防水」と表現しても差し支えないレベルにあると言えそうです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」