“ウェアラブル”の今:第31回 進化したAndroid Wearが見せる多様性と成熟
常にApple Watchと比較されるAndroid Wear。そんなAndroid Wearだが、先行する腕時計型デバイスとして、多くのユーザーが感じている課題をフィードバックを得ており、それを解決する仕組みを組み込み始めている。
Googleが5月28日(米国時間)、年次開発者イベント「Gogole I/O 2015」を開催した。基調講演では、Googleのさまざまな技術プラットフォームに対して用意されたアップデートについて紹介した。
Androidの最新バージョンとなる「Android M」では、アプリが利用する端末の機能やセキュリティ機能、バッテリー管理機能などが強化された。また、Android Payと名付けられた新しい非接触ICによるモバイル決済機能も披露され、最大の競合であるAppleを意識したプラットフォーム強化が行われた。
ただし、プレゼンテーションを見る限りにおいては、Android Mよりも、Android Wearに力点が置かれていたような印象を受けた。Android Wearは、Apple Watchに先行してリリースされてきた、ウェアラブルデバイス向けのAndroid OSだ。
LG ElectronicsやSamsung Electronics、Motorola、ASUSなどのAndroidスマートフォンやタブレットでおなじみのメーカーがこぞってデバイスをリリースしている。特に、円形のモデルを初めて登場させたMotorolaの「Moto 360」や、LG Electronicsの「G Watch R」など、人気のモデルも増え始めている。
スマートウォッチの不便さへの解決策
Android Wearとしては、2014年6月の発表から、今回が5回目のアップデートとなる。このアップデートでは、スマートウォッチにまつわる不便さをていねいに解決する姿勢を感じることができた。
すでにいくつかのアップデートは先行して発表されていたが、特に「Always-on」アプリは、普段スマートウォッチを使っているユーザーにとっての不便さを解決してくれる新機能だ。
普通の時計とスマートウォッチの違いは、ただ時間を確認しようとするときにも現れる。通常の文字盤の時計であれば、どんな角度であろうが、見れば時間が確認できる。あるいは向かいに座っている人が時計を見て時刻を認識することもできるほどだ。
しかしスマートウォッチは、自分の方に時計を向けたり、タップしなければ画面が見られない。アプリを使っている時も同様で、常に情報が表示されているわけではない。
そこでAndroi Wearの最新盤では、時計やアプリなどを黒い背景で常時表示させておくことができる機能を用意した。それがAlways-onの意味だ。
Apple WatchにもAndroid Wearデバイスにも搭載されている有機ELのディスプレイ。液晶ディスプレイの場合、どんな表示でもバックライトが点灯するため電力消費が変わらないが、画素自体が発光する有機ELの場合、黒はその画素を点灯しない(電力をあまり消費しない)ことを意味する。
新機能のAlways-onでは、画面を白黒反転させ、黒い背景の画面に情報を常に表示することができるようにした。これにより、時間や情報は常に表示されているが、消費電力を抑えることができる。とっさに見ても時計としての役割をきちんと果たしてくれるようになったのだ。
これらに加えて、手首を振ることで情報をスクロールさせる機能や、絵文字の検索を手書きで行う機能、音声を使ったアプリランチャーなど、スマートウォッチをさらに便利に活用できるようにする工夫が見られる。
Android Wearは、先行してユーザーを抱えることができたことによる、使い勝手の面での改良が、今後も進んでいくものと考えられる。
自由さと多様性
Android Wearの発表はApple Watchを意識したものだった。これはAndroid本体にも共通するが、Android Wearの最大の特徴は、スマートウォッチを製造しているメーカーに多様性があることだ。
前述の通り、Moto 360やG Watch Rは人気がある円形の文字盤のデバイスだが、それでも現段階で2つのメーカーから選択できる。スクエア型のケースであれば、さらにその選択肢は拡がり、メーカーごとにさまざまなバンドも用意されている。
今現在はそれでも、スマートウォッチのデザインを超える特徴的なものは登場していないが、例えばTAG Heuerのような時計メーカーやファッションブランドのAndroid Wearが登場する可能性も高く、スマートフォン市場をほぼ独占するAndroid陣営にとってはスマートウォッチをより多く販売するチャンスが広がるだろう。
もう1つ、Googleが強調していたのは、自由に開発できるアプリだ。Android Wearでは、時計の中のモーションセンサーや心拍センサーなどを活用したアプリ開発が既にできるようになっている。
そのため、心拍数を活用したフィットネスアプリや、GPSを使って単体でナビゲーションを行うなど、開発の自由度は高い。
他方、Apple WatchはiPhoneアプリに含む形でWatchアプリがインストールされ、Apple Watchのみで動作するアプリや機能は非常に限られている。この違いは、Android Wearの優位性として当面認識されていくことになるはずだ。
Google Nowと音声認識
Google I/O 2015で非常に印象的だったのが、Google Nowの進化だ。
Google Nowは、ユーザーの現在とこれから先の未来の行動に合わせて、最適な情報を提示する仕組みだ。最新のデモでは、音楽を聴いていたり、Webページを見ているときに質問をすると、その文脈を読み取って答えてくれるようになった。
Android Wearの機能というよりは、Googleが現在力を入れている機械学習の分野の成果を活用するという話だが、人々が行動しながら身に着けているAndroid Wearにとって、その「行動」が検索のキーになり、その場面で必要な情報を得られるようになる。
そんなGoogle Nowは、画面は小さいがいつも確認できるスマートウォッチを使う上での大きな武器になるはずだ。
Apple Watchを使っていると、iPhoneのサブディスプレイ、という感覚が非常に強い。しかしAndroid Wearは、Google Nowの活用を進めていくと、スマートフォンというよりはクラウド、あるいは巨大なネット上の知識グラフのサブディスプレイという新しい感覚になるのではないだろうか。
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