スマートウォッチの大敵に意外なところで気付いた:“ウェアラブル”の今
携帯電話が普及し始めた頃、それは社会の中でいろいろな摩擦を生んだ。スマートウォッチは今、その頃と似たような状況にあると言えるだろう。Apple Watchをはじめとするスマートウォッチは、世の中にどう受け入れられていくのか。
スマートウォッチは、テクノロジーの側面から見れば、超小型コンピュータ、あるいはスマートフォンの優秀なサブディスプレイ、という位置付けになる。おそらくこれまで腕時計を作ってきた時計メーカーにとっても、この位置付けの範囲で発展してくれることを望んでいるはずだ。
しかし、街中で、あるいはレストランの食事中、家の中などで、他人からは「腕に巻き付けている道具」として同じように認識される。スマートウォッチを見たり操作したりする仕草も、細かく注意しなければ、それがスマートウォッチなのか普通の腕時計なのか分からない。
ここに、社会的な摩擦が生まれている。
“時計を見る仕草”について
先日食事に行ったときの出来事だ。金曜日の夕方早めの時間から友人と店に入った。金曜の夕方というのは、週末前に送っておきたいメールやメッセージが駆け込みでたくさん届く。
それらは家に帰ってから読もうと思っていたが、Apple Watchはひっきりなしに振動し、ついつい3回に1回程度は自分の腕を傾けてその内容を見てしまう。実は友人も同じような状況に見舞われており、ときおりApple Watchに目を落とす仕草を繰り返していた。
そのとき筆者はハッとした。友人はApple Watchに届くメールの通知を見ているだけではあるのだが、その一方で、これまで長らく染みついてきた動作、すなわち時計を気にしている仕草に見えてしまったからだ。
筆者も相手に同じことを伝えているということに気づき、ハッとしたのだ。
腕時計を気にする仕草は、小説やドラマでなくても、「時間を気にしている」ことを周囲の人に伝える。特にテーブルを囲んでいる相手がいる場合、さらに意味が拡がり、「退屈である」という無意識の動作になってしまう。
いくらスマートウォッチであっても、腕をしきりに見ていれば、退屈しているということを相手に伝えてしまう。
ステーキは大敵
Apple Watchに限らず、多くのスマートウォッチは、ディスプレイの消費電力を抑えるため、腕を自分の方に傾けたときに点灯する仕組みを備えている。腕時計を見る動作をセンサーで解釈して、そのときにきちんと時間が確認できるよう配慮されているのだ。
そんなスマートウォッチの特性から、意図しない形で時計を気にしている仕草が成立してしまうことに、焦った経験があった。
それはステーキを食べているときだ。
ステーキを食べる時、右手にナイフ、左手にフォークを構え、フォークで肉をとらえ、ナイフで切り、口元に運ぶ。この、フォークで肉を押さえた瞬間、前述の「腕時計を見る仕草」と同じ動作が成立してしまい、Apple Watchのディスプレイが点灯してしまうのだ。
何回肉を切るかは、オーダーしたステーキのサイズにもよるが、例えば10回切って食べるとしたら、そのたびにApple Watchが点灯する。
もちろん、時計を気にする意図がなかったとしても、自分はもちろんのこと、テーブルを囲む他の人からも、手首のディスプレイの点灯はハッキリと認識できる。
すなわち、「このひとは肉を食べるごとに、時間を気にしているのだな」と思われても仕方がないのだ。
スマートウォッチがいかに受け入れられるか?
ビーフステーキに限らず、ポークチョップでもローストチキンでも、ナイフとフォークを使って食事をする際、Apple Watchは外すか、電源を切った方が余計な軋轢を生まなくて済むはずだ。あるいは、長袖に隠れるような服装をすべきかもしれないが、夏場には厳しい要求と言えるだろう。
そんな事を気にするならスマートウォッチを着けなければ良い、という意見ももっともだ。
その一方で、筆者は、「スマートウォッチを着けている人、あるいはそうした人たちの仕草が、どのように社会に受け入れられていくのか」という興味も持っている。
かつて携帯電話が普及していない頃、自宅や電車の中などのさまざまな場所で、携帯電話は軋轢(あつれき)を生んでいた。公共空間ではルールが作られ、最近では食事の席でテーブルにスマホを置いても、目くじらを立てる人は減ったかもしれない。
あるいは「電話」に注目すれば、自宅の固定電話はかかってきたら必ず出なさいとしつけられていたはずが、携帯電話の場合、自分の状況次第では着信を拒否することも当たり前になった。知らない番号には応答しなくても良い、という安全対策すら成立しているほどだ。
テクノロジーという、人々にとって新しいものは、普及が進むにつれて、あるいはトラブルを経験することによって、ルールが作られていったり、常識が変化したり、あるいはそのものに対して寛容になっていく。
では、スマートウォッチという、よりパーソナルなデバイスは、どのようにして社会に受け入れられ、また寛容さが作られていくのだろうか。
これは筆者の個人的な予想だが、スマートウォッチを見ることは、スマートフォンを手に眺めるよりも、より受け入れられるのではないか。これはスマートウォッチの方がスマホよりもできることが少なく、また眺める頻度が短いからだ。
スマホに通知が届くごとに手にとって、1分近く返信に費やして会話に戻ってくるよりも、スマートウォッチを1秒眺める方が、目の前の人との会話がおろそかになる時間が短いはずだからだ。
こうした、「よくよく考えてみれば」という実質的な話と、過去から脈々と受け継がれてきた「時計を見る仕草」の意味が、どのように決着するのか、とても楽しみだ。
関連記事
- 第30回 Apple Watchを使うとあまりにも簡単なApple Payの決済
米国ではVISA、MasterCard、American Express、Discoverと、主要なクレジットカードが対応を表明している決済サービスApple Pay。Apple Watchがあると、この決済が驚くほど簡単に利用できる。 - 第29回 想像以上に面白い、Apple Watchのバンド交換
Apple Watchに対応したサードパーティーベンダー製のバンドが発売されたので、早速手に入れてみた。Apple純正と比べると少し質感は劣るが、バンドを交換する楽しさが手軽に味わえる。 - 第28回 Apple WatchのHandoffから面白い使い方が生まれる?
Apple Watchを使うようになり、iPhoneをずっと握りしめながらの生活からの変化を感じる一方、Apple WatchとiPhoneの連係にはまだ便利なパターンがよく分からない。ここが大きく変わると、面白い使い方が生まれるかもしれない。 - 第27回 Apple Watchを着けて1週間で分かったこと
Apple Watchが手元に届いてから1週間強。もともと腕時計はしていたが、それがApple Watchになって、どんなシーンで活躍しているか。簡単に紹介しよう。 - Apple Watchのバッテリーは1日以上持つか?
そのバッテリー駆動時間が約18時間と発表されて以来、Apple Watchのバッテリーの持ちには不安の声が多かったが、実際に使ってみると、1日以上持つことがほとんどだ。iPhone 6 Plusとの組み合わせでは、夜充電すれば毎日問題なく利用できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
-
「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
-
友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
-
後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
-
毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
-
「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
-
「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
-
余りがちなクリアファイルをリメイクしたら…… 暮らしや旅先で必ず役に立つアイテムに大変身「目からウロコ」「使いやすそう!」
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」