第34回 「Coin」 クレジットカードをウェアラブルデバイスに変えるアイデア“ウェアラブル”の今(1/2 ページ)

米国では、「Coin」という、さまざまな磁気カードを1枚にまとめられるカードが注目を集めている。ウェアラブルやIoTにおけるデザインパターンとして、注目すべきだと考えている。

» 2015年07月02日 06時00分 公開
[松村太郎ITmedia]

 ウェアラブルデバイスの1つのデザインとして、スマートフォンやそのアプリと連動する、身に着けたり持ち運んだりできるデバイスというパターンが広く用いられている。

 例えば「Apple Watch」は、秋に公開されるwatchOS 2で単体での通信にも対応するが、現状はiPhoneがそばになければアプリの実行や通信などには対応できず、前述のウェアラブルデバイスのパターンと合致する。

 同じようなパターンで創られたデバイスを、今日は1つ、ご紹介しよう。

複数枚のクレジットカードを、1枚のカードに統合するデバイス

Coin 電子ペーパーディスプレイとカード切り替えボタンを備えたBluetoothデバイス「Coin」。付属するカードリーダーでアプリからカード情報を転送し、最大8枚のクレジットカードやデビットカード、ギフトカードを登録できる

 「Coin」は、複数のカードを1枚に統合することができるBluetooth LEデバイスだ。黒い券面には、電子ペーパーのディスプレイとボタンが1つ取り付けられており、裏面にはプラスチックカードにおなじみの磁気データを読み取らせるためのストライプと、ユーザーのフルネームが刻み込まれている。

 このデバイスには、ちょうどモバイル決済アプリSquare用のカードリーダーのようなイヤフォンジャックに差し込むデバイスが付属してくる。セットアップする際には、このリーダーからアプリにクレジットカード情報を読み込み、CoinへはBluetoothでカード情報を送り込む。

 これまでのプラスチックカードと同じサイズのCoinは、券面にあるボタンで複数読み込ませたカード情報を切り替えて、決済を行うことができる。

 米国で生活していると、クレジットカードは必需品だ。しかも、カードは複数枚ある方が安心だ。

 というのも、用心していても、カード情報が吸い取られるスキミングが、リアルの店舗やオンラインで発生するため、カードを止めている間、もう1枚のカードが利用できるようにしておくと便利だからだ。

 米国の西海岸で生活する友人に聴いた話だが、半年から1年に1度は、カードを止めて再発行する、というイベントが発生するという。これは必ずしも大げさではない、と筆者も感じる。

 加えて、銀行のカード(デビットカードとして店頭決済でも使える)や、店舗向けのギフトカードやプリペイドカード、スーパーなどの会員カードなど、プラスチックカードは財布の中で増える一方だ。

 AppleやGoogleは、スマートフォンを決済デバイスにする努力を続けており、例えば最新のiOS 9では「Passbook」から「Wallet」に改名されるアプリに、Apple Payやプリペイドカード、ポイントカードなどを統合できる仕組みが用意されている。

 しかしまだまだプラスチックカードが活躍する場面は多く、Coinの存在価値は依然高いといえる。

スマホでセキュリティを担保する

 Coinで当然気にするのはセキュリティの問題だ。正直なところ、Coinを使い始める際に、カード情報をアプリに読み込むのだが、この作業はカード情報を盗み取るスキミングと同じような手順と言えるからだ。

 アプリへのカード情報の取り込みには256ビットの暗号化が、Coinデバイスへの書き込みは128ビットの暗号化がそれぞれ施されている。また、外出先でCoinデバイスを設定する機会は少ないことが考えられるため、作業中についてはあまり心配しなくてもよさそうだ。

Coin 手持ちのAmerican Expressカードをアプリに読み込ませたところ。カードの券面の色味を変えたり、スマートフォンのカメラで撮影することで、分類しやすくできる
Coin スマートフォンのアプリで同期モードにし、カード切り替えボタンを長押しして画面に「SYNC」と表示させると、アプリのカード情報がCoinに読み込まれる

 ここから先は、スマートフォンと通信するBluetoothデバイスとしてのメリットを体験できる。

 Coinはスマートフォンがなくても、あるいはバッテリーが切れてしまっても利用できるが、スマートフォンがBluetoothの通信範囲外になった場合、ロックすることができる。解除するにはスマートフォンからか、もしくはモールス信号のようなパスコードを、Coin表面のボタンから入力する必要がある。

 また、レストランなどの店舗でカードを使用した際、店にカードを忘れるというパターンも防ぐことができる。Coinが通信範囲外になると、スマートフォンに通知が来るため、手元にカードがないことに気付くことができるからだ。

 ロック機能と、置き忘れや紛失の通知は、通常のクレジットカードにも搭載してほしい機能。これは現状、スマートフォンとつながるCoinを使用するセキュリティ面のメリットとなっている。

 ちなみに、同じようにクレジットカードやデビットカードを読み込ませるモバイル決済のApple Payとは、Coinは異なる方式だ。Apple Payは、クレジットカードと紐付いたトークンをNFCデバイスであるiPhoneやApple Watch向けにそれぞれ発行することで、そのカードでの決済を行えるようにする仕組み。

 Coinの場合はそうではなく、レガシーな磁気データをコピーする方式を採ってるため、利用できる店舗が限られているApple PayやAndroid Payとは異なり、どのクレジットカード利用可能な店舗でも使うことができる。

Coin Coinを利用する際は、カード切り替えボタンを押して、利用したいカード名を表示させる。また、スマートフォンが近くにあればロックは自動的に解除されるが、そうでない場合は、あらかじめ設定したボタンを押すパターンによって解除する
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2505/13/news020.jpg 小5のときに描いた絵→4年後…… 「ねぇ何があったん?」「鳥肌立った」中3になって描いた絵が160万再生
  2. /nl/articles/2505/13/news104.jpg 「娘の目が大きいのは赤ちゃんだから」と思っていたママ、成長すると…… 驚きの姿に「ディズニープリンセスだ」【海外】
  3. /nl/articles/2505/14/news046.jpg 「これが一番」 ユニクロ“人気590円商品”の再販に歓喜殺到
  4. /nl/articles/2505/14/news167.jpg 『an・an』などで人気だった占い師・中森じゅあんさん死去 「医学的な治療は難しい状態」で4月から入院も最後まで占い連載
  5. /nl/articles/2505/14/news017.jpg ピラティス教室に“キャラもの”靴下を履いていったら…… 奇跡的な爆笑の“再会”が450万表示「最高過ぎてwww」「これはもう運命」
  6. /nl/articles/2505/13/news190.jpg 小倉唯、“廃棄処分依頼した物”が高額転売される 「刑事面での対応も視野」と声明
  7. /nl/articles/2505/13/news015.jpg ジブリパークで「シータだ、かわいい!」と言われまくった9歳娘→思わず納得の見た目に「久々ときめいた」「完璧」
  8. /nl/articles/2505/14/news051.jpg “絵心ないOL”、超有名人を描いたはずが…… 1700万表示の衝撃展開に「予想外www」「あかん」
  9. /nl/articles/2505/14/news041.jpg ディズニーの自販機に800円入れたら…… 「だ、だれ?」まさかのキャラ登場に爆笑 「当たり」「羨ましい」の声も
  10. /nl/articles/2505/13/news058.jpg 猫の“今にも抜けそうな毛束”を引っ張ったら……「思ってた抜け方と違う」 420万再生の光景に「ふぉぉぉ!」「マジで全然違った」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 急性骨髄性白血病で闘病中だったVTuber、死去 「復帰を目指して闘病」 専門学校の講師としても活動
  2. 万博の“着物ショー”に天皇陛下だけ許される「装束」登場で物議…… 「深くお詫び」主催者謝罪
  3. 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」 投稿者に話を聞いた
  4. 大人なら解けないと恥ずかしい? 「(1/8)−(1/8)」を計算せよ!【算数クイズ】
  5. 「女の子みたいな顔だね」と言われ続けた男の子、20歳になったら→「神がかってる」姿に驚がく 「人体の不思議」「オーラが凄い」
  6. 使わなくなったカラーボックス→“ずぼらシンママ”が簡単DIYしたら…… 天才的な仕上がりに「かしこーい!!」「これ作ってみよう」
  7. クリスマスに出会ったギャルとギャル男が21年後…… 誰も予想できない現在に「素直に凄い」「人に歴史あり」と称賛の声
  8. カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収
  9. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「待ってました!」 人気作の登場に混乱の懸念も「すぐ売り切れそう」「初週ヤバいぞ」
  10. お隣さんから丸見えの土地→巨大ウッドフェンスを7日かけてDIYしたら…… 雰囲気ガラリで「すごい大作ですね」「ワクワクした」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  2. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  3. 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
  4. 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
  5. 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫、1年後の姿に「泣いた」と大反響 それからどうなった?現在の様子を聞いた
  6. 100万円の“錦鯉”を自宅の池に入れたら…… 「おかしいでしょ」3日後、まさかの事態に「鯉は難しい…」「信用が大切ですね」
  7. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  8. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  9. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  10. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」