第45回 初のブランドコラボ「Apple Watch Hermes」のこだわり:“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)
なぜエルメスなのか?
Apple、エルメス、双方がコラボレーションに取り組んだのは、お互いのクラフトマンシップに共感したから、としている。フランスの職人と米国カリフォルニアのデザイナーという、異色ともいえる組み合わせの実現は、Appleが近年意識してきたファッションとのコラボレーションにも影響している。
エルメスも時計のコレクションをそろえており、自ら資本参加している名門ヴォーシェに、エルメス向け独自のムーブメントを製造させている。2015年に発売したスリム・ドゥ・エルメスは、自動巻ながら厚さ2.6ミリを実現しつつ、奥行きのあるデザインに仕上げた。文字盤の書体にもこだわりがみられる。
Appleがエルメスとコラボレートした理由を推測すると、エルメスは独立しており、グループや傘下の時計ブランドがないことが挙げられる。
例えばルイ・ヴィトンもAppleとのコラボレーション先として有望に見えるが、LVMHグループ傘下に、ブルガリ、タグホイヤー、ショーメ、デビアス、フレッド、ディオールウォッチ、ウブロなどの高級時計ブランドをそろえており、Apple Watchを登場させるとしても、その位置づけが悩ましい。
もう1つの理由を挙げるとすれば、いずれも中国市場での販売拡大を目論んでおり、前述のしがらみのなさも相まって、思惑が一致しやすかったのではないだろうか。
外見も中身も違う
エルメスモデルは、ステンレススチールケースのApple Watch本体にもカスタマイズが施されている。
ケースの背面、Apple Watchのロゴと素材名がセラミックのセンサー部分を取り囲んで書かれている部分には「HERMÈS」の文字が刻まれている。また、文字盤には既存のデザインに加え、Apple Watch Hermes専用のデザインが用意されている。
シンプルなアナログ時計ながら、文字盤の中央には「HERMÈS」の文字と、小さな月の満ち欠けを表すアイコンが配置されている。そして文字盤のインデックスは独特な3種類のタイプフェイスから選ぶことができ、他のApple Watchユーザーとの差をつけている。
加えて、コンプリケーションズでは3種類が選択でき、日付表示、世界時計、そしてストップウォッチも独自のデザインで表示できる。
かなり限られた店舗での販売
エルメスとのコラボモデルを「Apple Watch Edition」としてリリースしなかった点は、やや意外だった。そのため価格も、10万円中頃から20万円未満に収まっている。エルメスも自信の時計をこの価格帯からそろえており、バッグとのマッチングをしやすい、ブティックでの1つの選択肢となる。
Apple Watch Hermesが販売されるのは、日本ではエルメス銀座店、御堂筋店、アップルストア銀座店、表参道店、心斎橋店の5店舗。東京と大阪での販売となる。
販売都市が限られるのは米国も同じだ。ニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミのエルメスブティック、アップルストアと、パロアルトにあるアップルストア。4都市12店舗のみだ。最も販売店舗数が多いのは中国で、17店舗となっている。
Apple Watch SportやApple Watchのように、より幅広く販売していこうというよりは、限られた都市の客層に向けて届けるという切り分けが見られる。中でも中国市場に力を入れている点も、特筆すべきだろう。
Apple Watch Hermesは、当初10月5日発売とアナウンスされ、ウェブサイトにもそのように記載されていたが、現在は「2015年10月登場」と改められている(エルメスのウェブサイトは依然10月5日と表記されている)。
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