せっけんからおっぱい? 「お風呂で乳がんチェック」を促す意外なアイデア
乳がんに対する正しい知識を広げ、検診の大切さを伝える「ピンクリボン運動」は世界中で展開されています。より女性の関心を高め、がんの早期発見につなげるためには――。今回は、乳がんチェックをグッと身近なものに感じさせる、優れたアイデアを紹介します。
「大切だけど忘れる」リアルな悩みにアプローチ
女性なら誰もが気に掛けておきたい乳がんチェック。定期的な検診は必要だと分かっているものの、毎日の忙しさでおろそかになってしまったり、日常的なセルフチェックも忘れてしまう女性は多いでしょう。そんな女性にアプローチするのが「Remind Me Soap」という「せっけん」です。
「Remind Me Soap」は、白いせっけんの中にほんのりピンク色のおっぱい型の固まりが入っているのが特徴です。せっけんを使ううちに次第にピンクの固まりが出てきて、しこりのように手にあたります。それが、乳がんチェックをしましょうのサイン。入浴中の女性たちに乳がんのセルフチェックを促すというわけです。
オーガニック×ハンドメイドで女性心をくすぐる
女性の日常生活にさりげなく入り込みながら、乳がんのセルフチェックをリマインドするようにデザインされたせっけん。このせっけんを紹介する約1分半のプロモーション映像にも、女性の共感を誘う工夫が施されています。
映像の冒頭に登場するのは、オーガニック素材のせっけんをハンドメイドで作る、アメリカ人職人のLeyna Mastersさん。穏やかな光が差し込むキッチンで「Remind Me Soap」を一つ1つ丁寧に作っていく様子が、ドキュメンタリータッチで映されていきます。
映像には、せっけんに込められたメッセージが字幕で流れます。
「乳がんは、発見が遅れたがために死に至るケースが多い病気」
「入浴中のセルフチェックで早期発見につなげることができるかもしれない」
「でも、女性は忘れてしまいがち」
一見、がん検診の啓発メッセージとしてはありふれた内容に感じられますが、リズミカルな音楽と女性の日常を切り取る映像との組み合わせによって、見る人を飽きさせません。女性なら思わずそうそうと頷いてしまうでしょう。
このせっけんとPR動画は、自動車メーカーのフォード・モーター社による社会運動「Warriors in Pink」の一貫として制作されました。 映像をFacebookでシェアしたひとからは「なんてすてきなせっけん! お風呂がセルフチェックに一番いい場所だと気付かされる」「この小さなせっけんが命を救ってくれるかもしれない」などのコメントが寄せられています。
せっけんは、女性を中心に世界中にユーザーを抱えるハンドメイドECサイト「Etsy.com」で販売されており、日本を含む世界中の女性たちが購入することができます。
日本では10月は「ピンクリボン月間」とされ、建物をピンク色にライトアップするなど毎年さまざまなキャンペーンが催されています。こうしたキャンペーンによって、女性の乳がんの知識や乳がん検診の重要性に対する意識は高まっているでしょう。
しかし、一時の関心の高まりで終わるのではなく、実際にアクションを促すことができるかどうかには、また別の難しさがあります。
今回の「Remind Me Soap」とその映像が優れているところは、「検診は大切だと分かっているけれど、ついおろそかになってしまう」という、解決すべき根本的な課題にアプローチしたところでしょう。そして、乳がんという少し重たいメッセージを日用品に込めた軽やかな発想と、女性の共感を誘う映像。さらに、ECサイトでリアルな日常生活に落とし込んだ、優れたアイデアに溢れる啓発キャンペーンでした。
ライター:早川すみれ
2009年にフリーライターとして独立。仕事情報を発信する「CINRA.JOB」や「an」などでインタビューやコラムを担当。2014年に拠点をシンガポールに移し、「シンガポール経済新聞」など日本のニュースサイトやWebマガジンで執筆している。(編集協力:岡徳之)
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