Apple WatchとApple TVの連携から生まれる“非パーソナル”なアプリ“ウェアラブル”の今

アプリが動く「Apple TV」の登場で、リビングルームにおけるApple Watchの活用の範囲が広がりそうだ。iPhoneやApple WatchとApple TVが連携するとどんな変化が生じるかを考えてみる。

» 2015年11月03日 07時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
Apple TV

 2015年のApple向け開発者コミュニティはなかなか忙しい。Apple Watch(腕時計)、Apple TV(テレビ)と、アプリを開発できる新しいデバイスが2つも増えたからだ。

 対応アプリがまだまだ少ないうちに、新デバイスにアプリを対応させると、App StoreでAppleがピックアップしてくれたり、メディアで報じられることもある。PR効果はとても高く、またとないチャンスでもある。

 難しいのは、iPhoneとApple Watch、Apple TVともに全く異なるデバイスであること。Apple Watchは非常に小さな画面で、通知やパッと見るだけの使い方を主体とする。Apple TVは逆に、スマートフォンやタブレットよりも非常に大きなディスプレイを、それらのデバイスより簡易なインタフェースで操作できるようにしなければならない。

 もちろんあらゆる開発者たち、もしくはあらゆるアプリが、iPhoneやiPad以外のアプリをサポートする必要はないし、デバイスの特性に合ったアプリを作らなければ、ユーザーに使ってもらえない。その一方で、新デバイスから刺激を受けて、新たなアイデアが生まれる瞬間にも、今後多く出会うことになるだろう。

 ただし、Appleは早急に、Apple TV向けのApp Storeで、よりアプリを見つけやすくすべきだと思う。テレビなので積極的に検索して見つけるものではない、という意見もうなずけるが、お勧めされていないアプリの存在に気付くのは至難の業だからだ。

腕時計とテレビの連携を考える

 リビングルームにおけるウェアラブルの活躍は、正直あまり期待しているわけではなかった。というのも、その状況ではスマートフォンやタブレットは身近なところあり、より大きな画面のテレビも目の前にある。

 ただ、以前からApple TVを使用する際に、Apple Watchに入っているリモートアプリは多用していた。そのため、テレビに限らず「リモコン」という用途については、Apple Watchの可能性を感じる使い方であると考えている。

 その点で、Apple TVに対しては、Apple Watchはもっと活躍してくれても良いのではないか、と思う。現状、Bluetooth接続のSiri Remoteは、1台のApple TVに対して1つしかペアリングできない。

 そこで例えばテレビの前にいるとき、あるいはリモートアプリを起動してでもよいので、Apple WatchからSiri Remoteの変わりとなるコントロールを実現してほしい、と思うのだ。音声検索が使えても良いし、Siri Remoteで最大のイノベーションとも言える、テレビの電源や音量がコントロールできる機能も、Apple Watchからこなせるようになってほしい。

 いくらアプリがテレビの未来を創っても、リモコン探しからエンターテインメントが始まる、という伝統的なスタイルはいまだに変わっていないからだ。

 筆者のリモコンに対する大きすぎる期待はさておき、すでにApple TVとApple Watchを連携させるアイデアは存在している。App Storeでアプリそのものの評価はあまり高くないが、「Zova」というフィットネスアプリでは、Apple Watchで計測したそのときの心拍数を、Apple TV経由でテレビ画面に表示することができる仕組みを備えている。

 いちいち手首を気にしなくても、画面上で心拍数が確認できる仕組みは、Apple TV+Apple Watchならではの体験といえる。そのほかにApple Watchの活用例はまだ発見できていないが、例えば、Apple Watchで取得したモーションセンサーの情報を活用するゲームなども可能性があるかもしれない。

通知とHandoffというiOSらしさ

 Apple WatchとApple TVの連携について考えているが、現状、こうした連携はアプリ開発者がすべて設計する必要がある。iPhone、Apple Watch、Apple TVそれぞれに役割を持たせて、体験を切り替えるようなアイデアを作る必要があり、またアプリの目的そのものについても、こうした異なるデバイスを横断して使うような「壮大な」ものである必要がある。

 つまり、多くのアプリにとって、Apple TVへの対応は必須ではなく、またApple Watch対応と同様に、難しさが存在している。

 テレビに関して、開発者がすべて設計する、という言い方をしたが、Apple Watchについては、「通知」と「Handoff」という、iOSで汎用的に利用されている手段を活用することができる。

 例えば、Apple Watchで通知を受け取る場合、iPhoneに届いたメールやメッセージの差出人や件名を確認して、メールをその場で見るかどうかを判断することができる。もしアクション付き通知であれば、ちょっとした反応を返したり、メールをそのまま削除する、といったことも可能だ。こうした通知を活用すれば、必ずしもApple Watchアプリがインストールされている必要はない。

 また、Handoffは、Apple Watchで何か情報を開いたり、メッセージのスレッドを確認した際、身近にあるiPhoneなどでその作業を引き継いで、より大きな画面で続きを行うことができる仕組みだ。

 Apple WatchはiPhoneと完全に組み合わせて使うという前提があるため、通知も連動するしHandoffができてしかるべき、という意見もある。ただ、iOSをベースとしたデバイスにおいて、通知やHandoffは、共通した体験やデバイス間連携の最も基礎的な手段になっている。

 しかしApple TVには「通知」という概念はないようだし、デバイス間連携についても、各アプリごとに体験を設計しておく必要がある。例えば、AirBnBの場合、Apple TVでは大画面で美しい写真を楽しむことができるが、予約はできず、お気に入りのマークをつけておけるに留まる。

 例えば、Apple TVで見ていた商品を、Apple Payが設定されているiPhoneにHandoffして決済を済ませる、という体験は非常に自然で先進的に見えるが、そうしたスマートさはまだ実現されていない。

パーソナルでないものをいかにデザインするか

 Apple TVの例を見ていると、体験そのものは、まだまだ始まったばかりというイメージが強い。逆説的になるが、Apple Watchは小さな画面ながら、iPhoneとの連携を密に設計されていることから、初期の「使い道」を発見することに成功しているように考えられる。

 もう1つ別の視点を加えるならば、アプリが初めて、パーソナルではないものに着手する産みの苦しみに直面している、ととらえることもできる。

 今までのモバイルアプリはすべて、そのデバイスの画面に触れる事ができる人が利用者だった。ところがテレビは、本人もやや画面から離れて楽しむし、それ以外の人たちがソファに並んで座っていることも少なくない。

 やはりここは、これまでテレビで発展してきたゲームを参考にすべきであり、ネット越しの対戦や同時プレイなどを、ゲーム以外のアプリでどのように再現するかを追究していくべきではないか、と思う。

 そこに、iPhoneやApple Watchで参加できるようになると、パーソナルが集まってテレビを楽しむ、という良い形につながっていくのではないだろうか。

 かつて任天堂のファミコン(ファミリーコンピュータ)で、マットを使った「ファミリートレーナー」シリーズというゲームがあった。例えばApple Watchを身に着けてひたすら腕を振って、画面の中のキャラクターを勝たせる、みたいなゲームが登場したら、試してみると、テレビに集まる感覚のヒントがつかめるのではないだろうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/22/news047.jpg 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. /nl/articles/2412/18/news207.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. /nl/articles/2412/21/news040.jpg 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  4. /nl/articles/2412/22/news034.jpg 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  5. /nl/articles/2412/21/news019.jpg 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. /nl/articles/2412/22/news036.jpg 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. /nl/articles/2412/21/news023.jpg 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news042.jpg 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. /nl/articles/2412/22/news020.jpg 余りがちなクリアファイルをリメイクしたら…… 暮らしや旅先で必ず役に立つアイテムに大変身「目からウロコ」「使いやすそう!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」