ウェアラブル機器は単一デバイスへ向かうのか“ウェアラブル”の今

腕時計やリストバンド、指輪、メガネ……など、ウェアラブル機器はシンプルな機能を持った製品を複数身に着けるのが当たり前になってきた。これはスマートフォンのように単一のものになっていくのかを考察する。

» 2016年03月05日 07時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
Apple Watch、Coin、MISFIT SHINE 2

 筆者は普段「Apple Watch」を使いつつ、本連載でもご紹介した「MISFIT SHINE 2」を装着して睡眠記録を取っている。なんとなく昼間もSHINE 2をポケットの中に入れているが、アクティビティの計測はApple Watchに任せており、この時計では計測できない睡眠を、SHINE 2に任せている。計測といっても、寝間着にクリップして寝ているだけなのだが。

 また、週に1度、「JINS MEME」を着けてじっくりウォーキングをして、背筋を伸ばしながら歩くよう努めているところだ。ノートPCやタブレットで仕事をするとき、どうしても目線は下を向いてしまい、だんだん背筋が丸まってきてしまう。もうこの際、目をつむるか、音声入力をした方が、背筋を伸ばしながら仕事ができるのではないか、とすら思うほどだ。姿勢の矯正という意味では、頭に装着する眼鏡型のデバイスの効能は大きい。

 また、iPhoneにはApple Payが採用されたが、使用できる店舗が少なく、結局プラスティックのクレジットカードは必要なままだ。複数のカードを1枚にまとめることができる「Coin」も、常にポケットに入っているウェアラブルデバイスとして数えてよいだろう。

 また、これについては別途ご紹介すべきだが、Parrotのノイズキャンセリングワイヤレスヘッドフォンも、外出時にとても気に入って使っている。

集約したいデバイス

 最近のウェアラブルデバイスの使い方を振り返ってみると、もはや1つのデバイスに留まらず、複数のデバイスを同時に、あるいは用途に応じて使い分けるようになってきた。この流れは、モバイル化で起きてきたデバイスの集約と逆だ。ウェアラブルの世界では、逆にデバイスが増えるのではないか、と考えるようになった。

 PCやタブレットは、自宅、仕事場、外出先と、それぞれの場面に最適なデバイスを選ぶ方が良いに決まっているし、クラウド環境も整備されたため、データの移行を意識することなく利用することができる。それでも、メンテナンスの面倒さや、複数台にまたがって分散投資をするのがもったいないと考えて、1台のメインマシンになるノートPCに集約するスタイルを選んだ。

 カメラについても、一眼レフとコンパクトという2台体制が理想だが、結果的にはミラーレス1台にまとめて、レンズへの投資を一本化した経緯があった。米国などの大規模な展示会や記者発表会で大きな一眼レフカメラのレンズを担いでいくと、中国勢に席取りの段階で競り負ける経験からの工夫だった。

 おそらく人によってその用途や目的はさまざまだが、1つのデバイスの高機能化、小型化によって、「集約」が行いやすくなっていく。その結果が、現在のスマートフォンという存在だろう。スマートフォンはちょっとした情報確認やコミュニケーション、そしてカメラや懐中電灯といった多様な単機能デバイスを代替するアプリが、1枚の板に収められている。カメラの動画撮影に至っては、音声記録以外は十分なクオリティを実現しているほどだ。

 音声入力を追究するということであれば、ゼンハイザーからリリースされているLightning接続のピンマイクなどを使うと良いだろう。これも身に着けるという点ではウェアラブルデバイス。マイクが口元にあると、小声でもはっきり口を動かせば認識してくれるので、かろうじて外出先でも使うことができる。

 いや、恥ずかしくて自宅以外ではまだ試せていないのが本当のところだが。

ネットワークをまとう感覚

 できるだけ、持ち歩いて管理するデバイスを少なく絞っていきたい。モバイル時代の基本的な考え方がここにあるように感じている。

 モバイルデバイスにはバッテリーが搭載されており、あらゆるデバイスをフル充電した状態で1日をスタートさせたり、仕事に臨みたいと考える人が多いだろう。モバイル化が進む中で、デバイスの集約は、その用途の命綱ともなるバッテリーの充電の手間を低減する役割もある。

 前に指摘したウェアラブル時代の集約からの逆行によって、身の回りにはデバイスが増える一方だ。基本的には、スマートフォンからこれらのデバイスをコントロールしたり、データを集めたりするため、Bluetoothを用いたスマホを核とする小さなネットワークを「まとう」感覚。

 デバイスを体中に身に着けることは、これらが構成するネットワークを着ることになるのか。そんな気付きがあった。

スタンドアローンの考え方

 筆者は最近、米国の自宅にSONOSというブランドのスピーカー「PLAY:1」を設置した。Wi-Fiを内蔵するスピーカーで、音楽ストリーミングサービスから直接楽曲を再生できる仕組みを備えている。Spotify等に加え、最近Apple Musicが追加され、iTunesライブラリに入っている自分の音楽やプレイリストも含めて、スピーカーが直接音楽を再生できるようになった。

SONOS PLAY:1 SONOSの「PLAY:1」

 このWi-Fi対応スピーカーが、非常に快適なのだ。音質の良さもさることながら、音楽再生を行う際、Bluetoothスピーカーと異なり、スマートフォンのリソースを使う必要がないからだ。Bluetoothスピーカーの場合、iPhoneで音楽を再生する必要がある。

 例えばニュースを見ていて、YouTube動画を見ようとすると、Bluetoothスピーカーの音楽が途切れ、ビデオの音声が再生されてしまう。「音楽が流れている部屋」という環境を作っていたにもかかわらず、音楽が途切れてしまうのは非常に不快だったのだ。

 SONOSでは、同じようにアプリから流す音楽をApple Music等から選択できるが、スピーカーが自分で音楽を再生してくれるため、アプリを閉じても音楽再生は止まらない。iPhoneでYouTubeを見ようが、音楽は途切れないのだ。

SONOSが便利、となるまでの経緯

 ネットワークを着る、という表現は、スマートフォンを核として、これらのデバイスをコントロールできる様子を表している。しかしデバイスが増えれば増えるほど、だんだん勝手に動いていてほしい、と考えるようになる感覚を、SONOSで体験した。

 現存する多くの家電やオーディオ機器は、基本的にはスタンドアローンで動いてくれるものばかりで、スマートフォンとつながるからスマート、というのは安易な発想である。ただ、巡り巡ってSONOSがよい、となるまでの経緯も、今後のデバイスの発展の参考になるかもしれない。

 音楽は当初、レコードやCDというメディアの形で購入して聴いてきた。これをiTunesなどを皮切りにデジタル保管するようになり、iPodで外に持ち出せるようにした。そのiPodからiPhoneへ変わり、CDが音楽購入の主たる方法ではなくなったため、インターネットを介して音楽を楽しむストリーミング型になった。

 これまでのように、メディアや音楽ファイルを手元に蓄積しなくても、好きな音楽が楽しめる環境は、モバイル主体の生活にフィットした格好だ。しかし、多くの人にとってのメインコンピュータであるスマートフォンの負担を軽減することで使い勝手をよくしようということで、ストリーミング音楽サービスに対応したWi-Fiスピーカーが便利、となったわけだ。

 音楽のモバイル対応がなければ、おそらくCDプレイヤーとアンプとスピーカーが一番シンプルで便利だったはずだ。しかし今では、筆者の自宅にはとうにCDラックもなければ、光学式ドライブの類いは一切ない。一旦スマートフォンに集約されたが、そこから少しずつ役割を委譲しているプロセスにあるのかもしれない。

 もしかすると、ウェアラブルの時代とは、スマートフォンに集まりすぎた役割をほどいていく過程を指す、と考える事ができるのではないだろうか。

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