“ウェアラブル”の今:Appleの“進化のスパイラル”に入ったApple Watch――watchOSらしさを取り入れるiOS
一般のユーザーも、実際に試すことができる「iOS 10」のパブリックβ版が公開されたので、さっそく試用してみた。すると、iOSには“Apple Watchからのフィードバック”を強く感じた。その理由をひも解いてみる。
Appleが7月8日、WWDC2016で発表したiPhone・iPad向けの最新OS、「iOS 10」のパブリックβ版を公開した。ユーザーは、自己責任で手元のデバイスにインストールして、新機能を試してみることができる。Appleでは、パブリックβ版をインストールする前にバックアップを取った上で、主として使っているデバイス以外への導入を推奨している。
今回と次回は、パブリックβ版のiOS 10について取り上げる。その理由は、iOS 10に“Apple Watchからのフィードバック”を強く感じるからだ。
Appleはしばしば、製品ラインアップ間で人気のある機能を相互に取り入れ合ってきた。特にMacBook Airが登場した際には、iPhone → iPad → MacBook Air → iPhone……という製品のスパイラル成長モデルを示し、それ以降、これを堅実に実行してきた。
デザインや操作方法に、各デバイスの良さを取り入れて新鮮さを演出することができるだけでなく、例えばiPhoneが使えればApple Watchも利用できる、といった具合で体験の共通性が強化されることから、「指先にAppleブランドを覚えさせる」役割を果たすことになる。
Apple体験を進化させる仕組みに加わったApple Watch
もともとMac OS X(その後「OS X」となり、現在は「macOS」になっているが)から当時のiPhone OSを派生させたという意味では、Macが起点だったが、Appleの主力ビジネスは完全にiPhoneに移行し、起点はiPhoneになった。例えば音声アシスタントのSiriは「iPhone 4S」で導入され、その後iPad、Macへと導入されている。Apple Payも同様だ。そしてTouch IDも同様の経路をたどるだろう。
こうしたスパイラルの中に、もう1つの製品ライン、Apple Watchがどのように関わってくるのか、非常に興味を持っていた。
2015年4月のApple Watch発売に遅れること5カ月、ジョニー・アイヴ氏が新設されたChief Design Officerに就任する際、ユーザーインタフェースを担当する副社長としてアラン・ダイ氏が昇格した。同氏は広告のクリエイティブの仕事を経てKate Spadeのデザインディレクターを経験し、2006年にAppleに入社した人物だ。
ダイ氏はアイヴ氏の下で、iPhone向けのユーザーインタフェースをデザインし、Apple Watch向けのインタフェースデザインに主体的に関わったという。そして、UIデザイン担当の副社長として、日々のデザインに関するマネジメントを行う役割を果たすようになった。
新たな体制でリリースされるiOS、watchOSの組み合わせとなる、2016年の新ソフトウェアからは、Apple Watchも、前述の進化のスパイラルに組み込まれた印象を覚えた。そのため、本稿を起こすことを思い立った。
iOS 10が「最大のアップデート」たる理由とは?
この記事は、iOS 10のパブリックβ版を試用した際の第一印象を元にしている。β版であることが示す通り、まだ正式なソフトウェアでないため、今後操作方法やデザインが変更される可能性がある点は留意してほしい。
iOS 10にアップグレードしたiPhoneの第一印象は、非常に戸惑うものだった。
iPhoneを持ち上げると画面が点灯する。またこれまでのようにロックを解除しようと画面上で指を左から右へスワイプしても、ウィジェットが現れるだけで、パスコード入力画面は現れない。写真を撮りたいときに使っていた、右下のカメラアイコンはなくなり、ロック画面のどこでも、右から左にスワイプすればカメラが起動する。
変わらなかったのは、上から下にスワイプすると通知センターが呼び出せることと、下から上にスワイプするコントロールセンターが現れることだけで、それ以外のジェスチャーはこれまでとは全く異なる動作をするようになった。そのことが、戸惑うであろうと考えた理由である。
筆者は、ユーザーインタフェースについては「慣れているものが使いやすい」という基本的な価値観を持っている。その点からすれば、2007年のiPhone登場から、「画面上の左から右へのスワイプがロック解除のジェスチャー」であり続けた9年間の「慣れ」の否定は、非常に大きなチャレンジであると感じた。
ユーザーが最初にiPhoneに触れるタイミングでアルロック解除が変わるということは、多くのユーザーにとっても不自由になる可能性がある。そこで、「iOS 10は史上最大のアップデート」というWWDC16のステージでの言葉を思い起こすことになった。
ロック解除されているロック画面
しかし、Appleもこの変更に対して、なんの準備もしていなかった、というわけではない。iPhone 5s以降のiPhoneにはTouch IDが搭載されており、画面をスワイプしてパスコード入力を行わなくても、ロック画面を解除することができる仕組みを用意してきた。
15桁ほどのパスコードを設定している筆者は、今やTouch IDによる指紋認証でのロック解除以外は使わなくなっており、ホームボタンを押し込んで画面を点灯させると同時にロックが解除されている、という動作を気に入って使ってきた。もしこちらの手順に慣れている人であれば、そもそも画面をスワイプしてパスコードを入力する、という使い方をしなくなっているだろう。
iOS 10でTouch IDを設定しているiPhoneのロック解除を行う場合は、登録している指でホームボタンを押し込むだけで良い。その間に、指紋認証を行って、ホーム画面を表示してくれる仕組みだ。
ちなみにiOS 10では、「ロック画面でロック解除済み」という、これまでにはなかった新しい状態も登場している。ロック画面でホームボタンを押し込まずにTouch IDによる指紋認証だけを済ませた状態のことだ。
これまで、ロック画面はロックされているから「ロック画面」と呼んでいた。しかし、前述のウィジェットや、本稿では触れないがインタラクティブな操作や表示ができるリッチ通知(新着通知を3D Touchで押し込む)という新機能が追加された結果、ロック画面の上での操作にもロック解除の必要性が出てきたからだ。
iOS 10の新機能について、頓知のような話で終わってしまったが、次回はApple WatchとiOS 10を比較しながら、納得いく操作性について、考えていく。キーワードは「プロアクティブ」と「アプリではなく機能の主張」だ。
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