「あなたブラクラ貼ったでしょ?」→39歳男性を書類送検 検挙男性が明かす「兵庫県警“決めつけ”捜査の実態」(1/3 ページ)
検挙された男性はメディアのインタビューに初めて応じ「悔しい」と語りました。
「あなたがやったことはこれだけ大きな罪なんですよ」――インターネット上の掲示板に「不正なプログラム」を書き込んだとして検挙された男性がねとらぼ編集部の取材に応じ、兵庫県警に受けた取り調べの一部始終を語りました。「ブラクラ」という言葉すら知らなかった男性はなぜ書類送検されたのでしょうか(関連記事)。
事件のあらまし
猫のアスキーアート(AA)とともに、「何回閉じても無駄ですよ~ww」と書かれたポップアップが繰り返し表示されるサイトのURLをインターネット上の掲示板に書き込んだとして、13歳の女子中学生が補導、39歳と47歳の男性が家宅捜索を受けたとの報道がなされたのは3月初旬のこと。
一部では掲示板に貼られたURLが「ブラウザクラッシャー」(通称:ブラクラ)にあたるとの報道もありましたが、問題視されたURLを確認してみると当該プログラムにブラウザをクラッシュさせる機能はなく、厳密には「無限アラート」へのリンクであり「ブラクラではない」という意見の人が大半です。
またポップアップについてもタブを閉じてしまえば消せることから大きな害はほとんどなく、いたずら目的のジョークページとみる人が大半ですが、女子中学生ら3人は「不正指令電磁的記録供用未遂の疑い」(通称:ウイルス罪)で兵庫県警の摘発を受けました。
ネット上ではこうした兵庫県警の判断に批判的な声も多く上がっていますが、プログラミングに関する著書も持つデータサイエンティストの加藤公一(@hamukazu)さんは、「みんなで逮捕されようプロジェクト」と題して同様のプログラムを公開し、抗議活動を行っています(関連記事)。
ねとらぼ編集部は「みんなで逮捕されようプロジェクト」の取材過程において、加藤さんを通じ、家宅捜索を受けた39歳の男性(以降、Aさん)とコンタクト。Aさんが家宅捜索を受けたときの生々しい状況や、現在の心境についてメディアではじめて語りました。
早朝の扉ドンドンに家族が恐怖を覚えて通報 兵庫県警の不可解な家宅捜索
――兵庫県警が家宅捜索に来たのはいつのことですか。
Aさん:2019年3月4日の早朝6時20分ごろです。5~6人の男女がインターフォンのチャイムを何度も鳴らしたり、ドアを激しくたたいたりしていたので、一緒に住んでいる家族が「変な人たちが家のドアをたたいてくるので怖い」と最寄りの警察署に通報しました。すぐに最寄りの警察署の警察官がうちに来てくれて、玄関前で兵庫県警と話し合い、「とりあえずドアを開けてください」ということになったので、家族がドアを開けたところ、兵庫県警の刑事がパシャッと家族の写真を無断で撮影しながら入ってきました。
――ご家族の写真をですか……。その後はどうなりましたか。
Aさん:私は2階の自室で寝ていたのですが、兵庫県警が大人数で部屋に入ってきて、「(部屋にあった携帯電話を見て)この黒い携帯電話はあなたが使っているものですか?」「今から家宅捜索するので部屋の中や携帯電話の中身を調べさせてもらいます」というようなことを言われました。そのとき「不正指令電磁的記録供用未遂の罪」と書かれた令状を見せてもらいましたが、何のことかさっぱりで、ずっとベッドの上でじっとしていました。
――そのときはブラクラや無限アラートに関係するお話は出なかったのでしょうか。
Aさん:なかったです。兵庫県警の刑事から「何の件で来たか分かるか」ということ聞かれたのですが全く思い当たらず、「身に覚えがないので分かりません」と返答していました。そのうちに私の携帯電話を解析しているらしい刑事の一人が「この携帯ではない」と言い始め、「(最近)携帯買い替えた?」と聞いてきたので、「2018年11月14日に買い換えました。以前使っていた機種は5年ほど使っていたものだったので、ボタンが変色していたり、充電器との接触が悪かったりして調子が悪かったんです」と答えました。すると、しきりに「なんで携帯変えたんだ!」「以前使っていた携帯はどこにあるか」「以前使っていた携帯電話の製造番号は残っていないか」と尋ねてきたので、「手元にはない」と答えました。
――その後は警察署に移動して取り調べが行われたんですね。
Aさん:そうです。自宅からパトカーに乗って、最寄りの警察署の生活安全課に行き、当日は17時過ぎまで、翌日は10時半から19時半まで、チーフと呼ばれる男性刑事と女性刑事の取り調べに応じました。何度も聞かれたのは「何でここに来たのか分かるか」「掲示板で今まで書き込んできたことは分かるか」「たった1行だけのURLを投稿したことはないか」ということで、特に「たった1行だけのURL」についてはかなり何度も聞かれたのですが、本当に分からなかったので私自身困惑するばかりでした。
――無限アラートのURLの件だと分かったのはどのタイミングでしたか。
Aさん:刑事からURLをプリントアウトしたものを見せられたことからです。最初は「このURLを書き込んだ記憶はないか」という話でしたが、スレッド名とタイトルを見て、少しずつ記憶が戻ってきました。このときの様子を思い出せる限りでまとめてみます。
【 以下、Aさんの記憶をもとに兵庫県警とのやりとりを再現 】
チーフ男性刑事:不正指令電磁的記録供用未遂って聞いて、何かピンとくる?
Aさん:いえ、全く……。
女性刑事:ブラクラって知ってる?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.