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北条隆博、「仮面ライダー剣」は“ネタ要素多い作品”だったが「悪いことばかりではなかった」 悔しさが絆を強くした、20周年目前インタビュー(1/2 ページ)

オンドゥル語への率直な思いも聞きました。

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 人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。


北条隆博さん

インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間

 「仮面ライダー剣(ブレイド)」は、平成ライダーシリーズ第5作として2004年から2005年にかけて放送。当初はファン評価が高い作品ではなく、キャストの滑舌をやゆした“オンドゥル語”がネットミームとして有名に。同時期にスタートした「特捜戦隊デカレンジャー」が往年の刑事ドラマを思わすけれんみあふれるストーリーで評価の高い作品だったこともあり、不遇の存在と捉えるファンも少なくはありません。

 しかし物語が後半へ進むにつれ、作品はヒートアップ。当初は未熟さばかりが指摘されたキャストも練度を増し、今では再評価するファンも多く、2024年に20周年を迎えるにあたり東映公式YouTubeでは第1話からの配信が開始され、ひときわ注目度が高まっています。

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 ねとらぼでは、トランプをモチーフにした4人のライダーのうち、クラブの仮面ライダーレンゲル/上城睦月役を演じた北条隆博さんにインタビュー。すでに俳優を引退した北条さんが役者復帰を果たす20周年イベントへかける思いに加え、人気が数字となって突きつけられる放送当時の苦しさや、3人のライダーたちとの絆、またオンドゥル語への正直な気持ちを聞きました。

特撮出身俳優イベントを全国へ 元仮面ライダーの野望

―― 放送当時は初の現役高校生ライダーとして話題に。現在は俳優を引退し、大阪でカフェバーの店長をされています。具体的なお仕事内容を聞かせてください。

北条隆博(以下、北条) ちょうど2年前くらい、2021年10月から大阪の日本橋で「Cafe 2nd STAGE」というイベントができるカフェをやっています。東京でいえば秋葉原のような場所で、平日は日替わりランチやお茶を出す一般的なカフェ営業、土日には何かしらのイベントを運営しています。主な軸は、ライダーでも戦隊でもウルトラヒーローでも、日本の特撮作品に出演された俳優さんを招待してのトークショーです。

―― なぜ大阪だったのでしょうか? 俳優時代の活動拠点は東京で、北条さんは愛知県のご出身です。

北条 日本で2番目に大きい都市といっても、東京からしてみたら大阪も地方でしかありません。名古屋も含めて、日本の西側には特撮が好きな人たちが参加できるようなイベントが全然ないんです。ファンは地方からでも東京のイベントに参加するけど、交通費だけで数万円。夜行バスを使うにしてもしんどいじゃないですか。だったら西側の人たちが、すっと参加できるようなイベントがあればいいと考えました。

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 もともと小さいころから飲食業をやるのが夢で、そこへ僕の好きな特撮と、イベントをやれるスペースを詰め込んだ場所が今の「Cafe 2nd STAGE」です。イベントの設営も自分でやりますし、平日は料理をしたりお客さまとお話ししたりという感じで過ごしています。

―― 他に同じことを考えた人がいたとしても、ご自分が看板になれる北条さんには強みはありそうですが?

北条 東映の方々とは今でも仲良くさせていただいていますし、最終的にはオフィシャルのイベントにしたいです。かつて携わった人間として全国、世界へ特撮の輪を広げる手助けができればうれしい。東映さんも巻き込んでもう一つ大きい段階へ、うまいことやれたらいいな、正直(笑)。戦隊では今、特別大使として松本寛也※くんがいて、ここ最近の戦隊イベントではだいたいMCとかやっているんです。でも仮面ライダーに大使は特にいないんですよね。

※松本寛也さん …… メインキャストとして「魔法戦隊マジレンジャー」(2005)「特命戦隊ゴーバスターズ」(2012)に出演した他、複数の作品にゲスト参加。2017年にスーパー戦隊親善大使に任命

「“会いに来て”じゃなくて会いに行く」 20年分の感謝を込めて

 「仮面ライダー剣」は2024年に20周年を記念し、主人公の剣崎一真/仮面ライダーブレイドを演じた椿隆之さんをはじめ、森本亮治さん(相川始/仮面ライダーカリス役)、天野浩成さん(橘朔也/仮面ライダーギャレン役)、そして北条さんらメインキャスト4人が出演するヒーローショーの開催を決定。情報解禁前に行われたインタビューで、イベント開催を決めるまでのいきさつや、ファンへの思いを伝えてくれました。

―― 前作「仮面ライダー555(ファイズ)」は記念作品が決定済みです。「剣」の20周年にも期待していいのでしょうか?

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北条 そもそも戦隊と違って「仮面ライダー」では20周年の前例がそんなにないんです。「555」で初めてやっと20周年の映画を作ることになりました。ファンの間では「正直、20周年イベントはいったん『剣』までしかできないんじゃないか」という話もあるんです。その後の作品を並べていったら、オリジナルキャストが全員そろって新しい映像を作れる可能性があるのは僕らまでかなって。「剣」の場合は、本当に完全な形で20周年にオリキャス全員そろった映像が見られるので、やっておきたいです。「実は決まっているけど言えない」ではなくて、今は本当に分からない状態(笑)。「555」の場合は話が決まってから撮影、発表までかなり短期間で進んだらしいし。

 「20周年でやらなきゃいけないことって何だろうね」と、椿さん、天野さん、森本さん、僕の4人でまず話をしました。もちろんゴールは映像作品であっても、われわれの気持ち的には「来てくださいじゃなくて、自分たちからファンの方々がいる場所へ行くスタンスが、20年分のありがとうの気持ちの伝え方なんじゃない」という結論に至ったんです。


「仮面ライダー剣 20thAnniversary STAGE&TALK」

―― それが「仮面ライダー剣 20thAnniversary STAGE&TALK」につながったと。イベントは2部構成で、ヒーローショーとトークショー、また4人との握手や撮影会も予定されています。

北条 それこそ「昔懐かしの『後楽園ホールで僕と握手!』を復活させようぜ」みたいな話までざっくばらんにしています。

 ずっと応援し続けてくださった方も、どこかのタイミングから新規でファンになってくださった方々もいっぱいいて、応援してくれる人たちがいたからこそ、今、感謝が伝えられる。当時と違い僕らは1年間の長期撮影をしているわけでもないですし、自分たちから日本全国をまわって地元の方々に“ありがとう行脚”をしていきます。

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 九州、四国と西日本、真ん中ら辺の東海地方を攻めて、関東、東北、行ければ北海道まで、「剣チームが20周年の感謝の気持ちを伝えにやってまいりました!」「20年ありがとうございました!」というのが筋じゃないかな。少しずつ場所も決まってきて、まずは兵庫県尼崎市から。会場が決まり次第ポツンポツンと予定を増やしていく予定です。

―― 仮面ライダーシリーズは、だいたい放送終了後のタイミングで感謝イベントを打って、ショーやトークショーをやるのが恒例です。イメージとしてはこのイベントの20周年版でしょうか?

北条 ガワ(ライダースーツ姿)もあり、僕たちもそのままの姿で出てきて生のお芝居をする、いわば20周年版舞台みたいな完全オリジナルのショーです。

 ちゃんと集大成を見せないと。さらに10年後、30周年の時でも何かできるかもしれない。つまりまだまだ年を取ってはダメだって話になってしまいましたが。

―― 「剣」のメインキャストでは、北条さんが一番若いじゃないですか。

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北条 それが「一番老けたな」といじられるのは僕なんですよ。17、18歳の時に出て、そこから20年のスパンって逆に一番老けて見えるんです……。10代から30代と、20代から40代ではだいぶ違うと思う。

オンドゥル語にキャストが思うこと 「悪いことばかりではなかった」

 「仮面ライダー剣」を語る時に、引き合いに出されがちなのがオンドゥル語。初回に登場した主人公のせりふ「本当に裏切ったんですか」が「オンドゥルルラギッタンディスカ」と聞こえたという空耳に端を発するもので、作品の枠を超えて広くネットミームとして浸透する一方、よく思わない番組ファンも存在します。

―― あらためて20周年を迎えるにあたっての思いを聞かせてください。

北条 本当にうれしいことに、当時リアルタイムで見ていた子どもたちが全員20半ばになり「懐かしいな、昔そういえばめっちゃ好きだったな」と見返してくれて、「ブレイドめっちゃ面白いやん」って……再評価っていうんですかね。「ブレイド 再評価」で検索すると結構ヒットするので、再評価されやすい作品みたいです。ネットかいわいではネタとしてすごく有名になってしまったので。

―― いわゆるオンドゥル語でしょうか。

北条 そうですね。ネットミームとしてのオンドゥル語は知っているけど、作品は知らない人が「気になるから見てみたらめっちゃ面白かった」とはまるのが王道パターン。特に仮面ライダー、特撮すら見たことなかったのにオンドゥル語のおかげでたまたまたどり着いた方々がたくさんいらっしゃり、ミーム化も悪いことばかりではありませんでした

 でもリアルに嫌な人は「本当に好きなので」と剣愛をたくさん語ってくれます。役者として僕らが嫌な気持ちになるんじゃと気にしちゃう方もいる。最近も天野さんが「オンドゥル語」と言ったら気にされている方がいました。

 いろいろなファンの方々を尊重したくて、ネタから入り「剣」を見たからこそ作品自体が好きになってくれた人たちもいるので、僕らがオンドゥル語を不快に思ってしまうとそのファンの人たちも含めて切り捨てることになってしまう。だから僕らから言うことで、少なくとも僕らは不快に思っているわけではないと分かってもらえたら。

―― 当時は今のようにSNSがありませんでしたが、反響はご存じでしたか?

北条 僕ら全員、撮影が終わって1年後くらいにオンドゥル語のことを知りました。今みたいにSNSがないからニコニコ動画とかに字幕を付けたものがアップされていて「何だその動画」とみんなで腹を抱えて笑いました。

 別に滑舌が悪いと言われようが当の本人たちは全く気にしていないんです。発端になった椿さんに関しても、ああして字幕を付けられて拡散されちゃったからそうとしか聞こえなくなっちゃっただけ。そう聞こえたらそう聞こえたで、感情が高ぶり言葉がバーッと出た時、気持ちが走ってしまい何を言っているか分からない人間をとてもリアルにやっただけだと自分たちでは全員一致して考えています。

 仮面ライダーはやっぱり新人の登竜門で、芝居なんてやったことない状態から始まり、そこから学んでいろいろと成長していく現場。だから正直、悪いこととは思っていませんし、僕らはこう考えていると伝わるといいのかもしれません。窮屈になっちゃうじゃないですか。

―― 天野さんも配信開始時、「オンドゥル講座」っておっしゃっていましたね。

「いやいやいや、『仮面ライダー剣』だからね?」

北条 「オンドゥル講座はじまるよ」って(笑)。「いやいやいや」と思いましたけど、「仮面ライダー剣」だからね? でも「仮面ライダー剣」ってそういう人間たちの集まりというか、僕らの素顔が見えるようになったのもSNS時代さまさまですね。

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