地震発生! クロサイ逃走!――上野動物園の猛獣脱出対策訓練に密着してみた(2/2 ページ)

» 2012年02月08日 21時04分 公開
[笹山美波,ITmedia]
前のページへ 1|2       

いよいよ捕獲へ

 すでに脱走から30分が経過。記者が知らないうちに来場者2人も突進を受けて重傷を負ったようだ。ここで再び園内アナウンスが流れる。クロサイは、来場者が避難しているはずの「フラミンゴ前の広場へと移動」したらしい。やばい。早く捕獲しなければ、もっと多くの負傷者が出てしまう。


画像 突破を試みるクロサイ。職員が1人負傷した
画像 職員を担架で運ぶ
画像 すぐに応急処置を施す(あれ? 人が人形に変わってる……? のはご愛嬌。訓練ですからね)

画像 広場へサイが現れた

 広場には訓練を聞きつけた多くの来場者が詰めかけていた。そこへクロサイが現れる。「あれがサイ!?」とどっと笑いが起こり、来場者は携帯電話で写真を撮ったりしている。だが警備員は至って真面目。「来場者のみなさんは危ないですから館内へ入ってください! ここから離れてください!」と誘導している。なんとも心強い。

 クロサイはのそのそした動きで、広場を歩いては止まりを繰り返す。そうこうしている間に30〜40人ほどの職員によって、遮断網で四方を囲まれた。もう逃げ場はない。タイミングよく「捕獲班」と「麻酔班」の車が1台ずつ広場へ侵入。そして麻酔班の車の助手席から麻酔銃を発射!!!!

 と見せかけて今回は訓練なので実際に針は発射されず、「プシュ!」と効果音が流れた。少し遅れてクロサイからも「ブシュ!」と鈍い音が鳴り、お尻から麻酔の針がニョキッと生えてきたぞ。ちょっとやり過ぎ(?)な演出に報道陣は笑いをこらえ切れなくなり、声が漏れる。

 麻酔を打たれたクロサイはというと、辺りを少しフラフラした後、動きがだんだん鈍くなり、直立不動状態に。麻酔が効いた……か? 捕獲班が車を降り、クロサイの元へ。麻酔の効果を確認すると、両腕で大きく丸の文字を作った。そして捕獲班総出で網をかける。「捕獲が完了しました」とのアナウンスが入り、遮断網を作っていた職員らは片付けを始めた。ふぅ、これにて一件落着!


画像 広場をふらつくクロサイを遮断網で囲い込む
画像 麻酔を打たれたクロサイ
画像 麻酔班


画像 そして捕獲へ……
画像 しっかり網で包まれた
画像 来場客は館内へと誘導された

「立派に順調にやれた」と土居園長

画像 土居園長

 訓練後、土居利光園長(61)からは「この訓練を心の中に入れ込んで、また改めて業務に取り組んでください。連絡など立派に順調にやれたと思います」と労いの言葉が職員に贈られた。訓練に協力した上野警察署の代表者も「大変動きが良くて安心しました」と職員を称えた。

 報道陣に対し、土居園長は「実際サイはああいう形では動き回らないし、パニックになるときっと動かないと思うが、訓練ということなので負傷者の対応や捕獲など色んな要素を組み込みながら行った」と訓練の目的を説明した。

 おりは地震に備えて頑丈に作ってあり、木が倒れかかって逃走経路ができてしまうといった万が一のことが無い限り、動物は逃げ出させないという。そのうえ動物は「パニックになると始めは動かないので、その間に対処する」と、土居園長は力強くコメントした。

画像 クロサイに入った職員ら。普段はアシカやゾウの飼育をしているとのこと

 過去には、クロヒョウ(1936年)やインドゾウ(1967年、1977年)、ニホンザル(2010年)が実際に逃げてしまったことがある同園。以前の訓練では着ぐるみを使って動物を演じたが、着ぐるみは「なんかかわいい感じになってイベントっぽくなる」(土居園長)ため、今回は避けたという。

 クロサイの張りぼては大変重いため、中に入る人には「なるべく頑丈そうな職員」が選ばれた。その1人は「あくまで訓練なので笑いがあってはいけないので真剣に、職員を傷つけるぞ」という意気込みで取り組んだと、疲れた表情でコメントしてくれた。途中で少し笑ってしまった記者は自分の真剣度が足りなかったと反省。いやあ、本当にお疲れ様でした。

関連キーワード

動物 | 動物園 | 地震 | パニック | 取材 | 着ぐるみ | 避難


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  2. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  3. /nl/articles/2412/12/news089.jpg フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/14/news081.jpg 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  5. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/14/news038.jpg 「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
  8. /nl/articles/2412/14/news063.jpg 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  9. /nl/articles/2412/14/news002.jpg 【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
  10. /nl/articles/2412/15/news024.jpg おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」