「大好きでした」――老舗「ムトウ楽器店」が89年の歴史に幕 アイドルヲタに愛された名物コスプレ店長

4月いっぱいで閉店することが決まった、高田馬場の老舗「ムトウ楽器店」。“ヲタの裏聖地”とも呼ばれ愛されたその理由とは。

» 2013年04月24日 17時01分 公開
[寺西ジャジューカ,ITmedia]

 東京・高田馬場にて89年間営業していた老舗CDショップ「ムトウ楽器店」が、今月いっぱいで閉店することが決まった。

 このニュースが同店のTwitterアカウント(@kenkorou)から発表された2月11日以降、ファンからは「ほんとうに残念!」「どうして愛されるものが終わってしまうのか……」と、惜しむ声が止まらない。なぜこの店は、そこまで愛されていたのか、同店のアイドルに対する愛情をうかがってきた。

画像画像 アイドルグループ「ひめキュンフルーツ缶」のコスプレで接客する店長(左)/元はこれです(右)

画像画像 こちらはアイドルグループ「RYUTist」のコスプレ(左)/同じく元はこんな感じ(右)

「アイドルコスプレ」で一躍有名に

 2010年7月ごろから、「アイドルのコスプレをして、店頭に立つ」という試みを同店の足立賢吾店長はスタート。新譜発売日に合わせ、アイドルのコスチュームに身を包んだり、ダンスを覚えて店頭で披露し、その模様をYouTubeにアップしたりした。こうした活動の結果、「ムトウ楽器店」は次第にアイドルヲタが集う聖地として名を馳せていく。

画像 「元々は『ジャズとクラシックに強い』と言われていたんです」(足立店長)

 実はそれまでの足立店長、愛聴している音楽はヘビーメタル一辺倒(IRON MAIDEN推し)だったらしい。しかし2009年にAKB48の楽曲「10年桜」「涙サプライズ」に出会い、新境地を開拓。

「ストレートなアイドルソングで、非常にポップでキャッチー。そして、コンパクトにまとまっている。気になって、夜な夜なYouTubeを観るようになりました(笑)」(足立店長)

 楽曲の魅力が、全ての始まりだった。


「アイドル推し」で熱狂的なファンも

 閉店の理由に関し、足立店長は「まぁ、儲からないからということですよね(苦笑)」と、あっけらかんと答えてくれた。CDの生産量が落ち続けているここ10数年、比例して店舗の売り上げも下降気味に。そんな状況に抗うための“アイドル推し”コンセプトだった。

 結果、熱狂的なファンも誕生した。

「『ムトウ楽器店Z』(ももいろクローバーZにかけて)としてリニューアルオープンするんじゃないかって声もお客様からはありますけど、ありえないっす! そうできたら、面白いですけどね(笑)」(足立店長) 

 ファンによる“閉店を惜しむ声”はTogetterにもまとめられているので、気になる方は見て感傷に浸ってみてほしい。

画像 JR山手線・高田馬場駅早稲田口より徒歩1分の場所にある。早稲田大学生による利用も非常に多かった

画像 Togetterにも「ムトウ楽器店の閉店を惜しむ声」はまとめられている。アイドルファンが集う“裏聖地”だったことがよく分かる

 もちろん閉店後も、アイドルの応援を止めるつもりはない。

「今までは土曜が休みで、その日は2〜3現場(ライブやコンサートなど)を回るようにしてましたが、これからはしばらく自由が利きますんで。今までは週に1回しか休みがなかったですし……」(足立店長)

 ところで、気になるのは店内に展示されているサインやポスター類の数々。

画像画像 天井には直筆サイン入りTシャツが(左)/サインやポスターが所狭しと(右)

画像画像 隙間が見当たらない(左)/直筆サイン入りポスター(右)

画像画像 ブロマイドも綺麗に貼られている(左)/こちらにもブロマイドが(右)

画像画像 あのブレザーを手放すわけにはいかない(左)/アイドルからムトウ楽器店へ感謝のメッセージも多い(右)

画像画像 こちらはカウンター前。壮観としか言いようがない(左)/モチベーションの上がる職場だ(右)

「店を畳むに当たってサインやポスターは持って帰ろうと思っているんですけど、衣装をどうするか……。持って帰ったら、カミさんに怒られるなっていう(笑)」

画像 「野菜シスターズ」の前田敦子のコスチュームを再現

 きっと足立店長がアイドル現場に赴く際、今までの衣装が再び活躍する日がやって来るに違いない。


最終日“あっちゃん”降臨をひっそりと願う

「一日の営業を終える時、店内BGMを前田あっちゃん(前田敦子)の『夜明けまで』にしているんです」(足立店長)

 これは、2011年6月に発売された彼女のソロシングル「Flower」のカップリング曲。曲調がすごく好きだったのと、雰囲気が閉店時間のお知らせにマッチしていたので、「蛍の光」代わりに毎日流していた。かれこれ2年近く、毎日だ。

 だからこそ、期待を抱かずにはいられない。

画像 Twitterでも「最終営業日の4月30日、果たして あっちゃんの降臨はあるのか?!」とツイート

 最終日である4月30日には、「MAGIC」と「WELOVE」2組によるアイドルイベントが立て続けに開催される。そして、その後のサプライズを同店は待望しているのだ。前田敦子の来店である。

「Twitterから呼び掛けているのですが、本人にまでとは行かずとも太田プロくらいまでは届いてくれないかなって(笑)」(足立店長)

 これは、ムトウ楽器店からあっちゃんへ一方的に投げ掛けられているラブコール。実際に“前田敦子降臨!”となるかどうかは置いといて、その姿勢はまぶしかった。


本当は、誰推しなんですか?

 ところで、足立店長が一番好きなアイドルって、一体誰なんだろうか?

「いろいろな現場に行ったり、いろいろなアイドルがお店に来てくれたりで、もう誰が一番とか言えない状況ですよね。DD(“誰でも大好き”の略)です。僕なんか、クソDDですよ(笑)!」(足立店長)

 そんなことない。どのアイドルに対しても深い愛情で接していたのは、彼女たち自身が知っている。だからこそ、閉店に際してアイドルからの直筆メッセージが多数寄せられたのだ。店内にはそれらのメッセージが貼られており、アイドルからの愛あるメッセージをこの目で見ることができる。

画像 「大好きでした」「ムトウさん大好き」「マジ○チ店長足立様 愛してるZっ」

画像画像画像 閉店ボードにもアイドルからの寄せ書きが。ムチャクチャ書いてある

 ムトウ楽器店の閉店を惜しみ、以下のアイドルイベント開催も決定している。

4月28日 ムトウライブ(恵比寿Live Gate)

5月4日 MUTO IDOL FESTIVAL(Studio Cube)

5月5日 5月5日は端午の節句!HIKO☆星祭with足立店長w(仙台での定期公演)

 閉店日の4月30日まで、店内の商品ほぼ全品が50%引きの閉店セールも実施中。自分を「クソDDです!」と言いつつ、最後までアイドルとファンに愛された足立店長の勇姿をぜひ見届けに行ってみてほしい。

画像 衝撃的なお知らせだった

関連キーワード

アイドル | コスプレ | 衣装 | Togetter | AKB48 | ダンス | 音楽


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」