入れ墨でも専用シールで隠せるなら入浴OK 星野リゾートが試験的に導入 ファッションや文化の違いを見据えて

そもそも日本の公衆浴場が「入れ墨お断り」をするのってどうして?

» 2015年04月16日 20時31分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 銭湯や温泉、サウナ、健康ランドといった公衆浴場では、入れ墨(タトゥー)をした人の入場を拒否するお店が多いです。この慣習に一石を投じるような取り組みを、宿泊事業を営む星野リゾートが4月15日に発表しました。これで入れ墨を隠せるなら大浴場で入浴しても構わないという「タトゥーカバーシール」を、10月1日から温泉旅館ブランド「界」の全施設で試験的に導入します。

画像 星野リゾート公式サイト

 「タトゥーカバーシール」は8×10センチサイズのシールで、希望者に無料で配布する予定。具体的にどのようなものにするかまだ準備段階ですが、このシール1枚を貼って入れ墨を覆い隠している状態に限り、入れ墨を入れた人の入浴を許可するそうです。

画像 8×10センチ――これくらいならシールで隠して入浴できるかも?(photo by vavva_92

 広報担当者によるとシールを導入する理由は2つ。

 1つは国内の若者にファッションとしてタトゥーを入れる人が増えてきたこと。これに伴い小さなタトゥーなら抵触しないだろうという感覚で入浴する人も出てきた一方で、大小関わらずタトゥーは好ましくないとする利用客もいるため、価値観のすれ違いが起こっていました。施設でも、タトゥーを部分的に入れた人が入浴していたことに対し、「なんで入浴しているの?」とほかの利用客からクレームが発生したケースもあったといいます。

 もう1つは、外国人利用客が増えてきたこと。中には民族や文化を背景にタトゥーを入れている外国人も多く、彼らに対し日本の慣習である「入れ墨お断り」を掲げるのは、これからの時代を見据えた上でも課題だと感じたそうです。

 課題を解決するには「何か対策を講じないことには始まりません」と担当者。まずは「タトゥーカバーシール」の実施によって利用客から具体的な意見を聞き、両者が気持ちよく入浴できる道を探っていく狙いです。

画像 「入れ墨お断り」の表記の数々――なぜこのような慣習が?

 そもそも日本の公衆浴場が入れ墨を「お断り」するのはなぜでしょう。実は入れ墨そのものに対し国内では法的規制はなく、入場拒否は個人経営者がそれぞれ自発的に行っているものです。1985年に厚生大臣認可のもと設立された全国浴場組合(登録施設3848店)も「組合の方針として入れ墨をした人の入場禁止を掲げたことは一度もない」と答えました。

 それでも拒否する店が多いのは、入れ墨に対し反社会的なイメージをもった利用客とのトラブル発生を防ぐため。入れ墨は江戸時代に刑罰として罪人に施されたり、1872〜1948年は違式註違条例によって非合法とされたり、暴力団が帰属意識のため彫っていたりと、日本においてネガティブな歴史的背景をもちます。部分的とはいえ入れ墨に対しクレームが起こるのも、こうしたマイナスイメージが根強く残っているのが原因でしょう。「入れ墨お断り」の看板を無視して入浴施設に入った山口組系組長へ、「建造物侵入罪」(刑法第130条)に当たるとして懲役7カ月の実刑判決を言い渡す裁判も2010年にありました。

 ただしファッションや異国の民族文化など、反社会的とはいえない理由で入れ墨をもつ人々が増える現代。すべて一緒くたに「お断り」していくのは多様性への否定にも見えます。今回の星野リゾートの取り組みを入浴者がどう受け止めていくか見ものです。


黒木貴啓


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」