iPhoneの「総務省指定」はなぜAndroid端末に刻印されないのか arrowsとXperia担当者に聞いてみた
先に話題になった、iPhone 7に刻印されている「総務省指定 MIC/KS」の文字――どうして他社のFeliCa対応機種にはないのか調べてみた。
先日「iPhone 7/7 Plus」が発売されるや、製品の背面に「総務省指定」の文字が刻印されていることが賛否両論を呼びました(関連記事)。これは同端末が国内向けの非接触ICカード技術「FeliCa」に対応したため、電波法に従い表記が必要になったと見られています。しかし一方で、なぜAndroidのFeliCa対応端末には「総務省指定」の文字がないのか疑問の声もあがっていました。
「arrows」シリーズを開発販売する富士通、「Xperia」シリーズのソニーモバイルコミュニケーションズへ取材したところ、両シリーズのFeliCa対応機種はいずれも、電界強度が電波法の基準値以下になるよう設計しているため、総務大臣からの指定がいらなくなっているそうです。以下、詳しく見ていきます。
なぜiPhone 7には「総務省指定」の文字が?
総務大臣は先日の記者会見で、iPhone 7に「総務省指定」が刻印されているのは、SuicaなどのICカードの情報を読み書きする機能をもつため、電波法に従って表記する必要があったと説明しました(関連記事)。
Appleは10月から日本で「Apple Pay」をスタートするのにあわせ、Suicaをはじめ国内のあらゆる電子決済に利用できるFeliCaを、iPhone 7に採用しています。そのためFelicaのリーダ・ライタも端末に搭載したと考えられるのですが、こちらは電波法において「誘導式読み書き通信設備」に該当します。
誘導式読み書き通信設備は、設備から3mの距離における電界強度が500μv/m以上だと、総務大臣から個別に許可を取る、または「型式指定」を受けなければ使えないよう、電波法と電波法施行規則で定められています。iPhone 7は後者の「型式指定」を受けたため、製品に「総務省指定 MIC/KS」を表記しているようです。
Felica対応端末でも「電界強度」次第
しかしAndroid端末――例えば「arrows」シリーズや「Xperia」シリーズのFelica対応機種は、FelicaのICチップとリーダ・ライタを内蔵しながらも、総務大臣からの指定を受けていません。
富士通はしかるべき機関が実施している微弱証明試験を受け、電界強度が基準値以下の「微弱無線設備」になるよう設計しているそう。ソニーモバイルコミュニケーションズもXperiaのFeliCa対応機種について、「高周波利用設備の電界強度は個別の許可を不要とされる範囲に収まっている」と回答しました。
2社とも誘導式読み書き通信設備を搭載しながらも、電界強度が基準を下回る範囲で――つまり設備が発する電波が弱くなるよう設計しているため、表記どころか総務大臣の許可すらいらないのです。
ではiPhoneも同様に電界強度を基準値以下に収めることはできなかったのでしょうか? Apple PayでSuicaを使うには、SuicaをiPhoneにかざしてチップの情報を読み込ませなければならないという、おサイフケータイにはないシステムがあります。これが強い電波を要するのではという推測がネットにはあがっていました。これらを含めApple Japan社に質問しましたが、「弊社から回答申し上げておりません」と回答をすべて控えられました。無念。
ちなみに「総務省指定」の表記は、iPhoneでも次世代あたりで背面から消えるかもしれません。もともとiPhone6までさまざまな認証表示が刻印されていましたが、iPhone 7ではすっかり消え、端末内の電子表示に切り替えられています。じゃあ「総務省指定」もと行きたいところですが、現行法でこちらは電子表示できない制度になっているのです。
しかし今年7月に行われた電波政策2020懇談会で有識者から提言があり、現在総務省が「総務省指定」の電子表示の導入を検討しています。もし成立するとiPhoneの刻印は電子表示に切り替えられるでしょう。
「ダサい」と否定の声もあがる一方、「逆にかっこいいと思うんだけどなぁ」など一部にはウケていた、「総務省指定」入りiPhone。発売から2週間が経って気にしている人はほとんどいないでしょうが、ひょっとすると数年後には希少価値が上がっている、かも?
(黒木貴啓)
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