「首相」と「大統領」ってどっちが偉いの? そもそも何が違うの?
安部首相もミサイルを発射できるの?
「首相と大統領ってどっちが偉いの?」
小学生の頃に誰もが抱いて、そして大人になっても正直よく分からない、そんな疑問だと思います。大統領の方が偉い場合もあれば、首相の方が偉い場合もあって、何が何だかごっちゃになります。
例えば、最近ではトランプ大統領が北朝鮮への攻撃をほのめかすということがありましたが、これと同じように安倍首相は他国に攻撃を仕掛ける決定ができるのでしょうか? トランプ大統領のように、安倍首相もボタン1つでミサイルを放つことができるのでしょうか?
日本と米国を見てみると、首相より大統領のほうが強そうな印象を受けますが、ドイツではメルケル首相が目立ち、フランスでは現在大統領選が盛り上がっているように、歴代大統領がパワーを握っていました。両国には首相と大統領の両方がいるのに、です。
ということで今回は、首相とは何者か、大統領とは何者かについて、具体的な事例を交えながら解説していこうと思います。
事例1:緊急時、安倍首相はボタン1つでミサイルを発射できる?
米国の場合、もしもの事態に備えてミサイル発射についての装置が常に大統領の側に置かれます。つまり、大統領の一存でミサイルは発射されます。
さて、いざミサイルが日本を標的に発射されたらどうするのでしょうか? 日本から迎撃ミサイルを発射することは、首相の一存で可能なのでしょうか?
この場合は、「破壊措置命令」が出されます。これは日本を標的にしたミサイルの破壊を許可する命令で、防衛大臣が首相の認可を受けて出します。つまり、間接的には首相が関わってはいますが、米国とは異なり即座に首相が発射命令を下すことはできません。
ちなみに、2016年8月に北朝鮮が発射したノドンが秋田県男鹿半島沖に落下した事態を受け、それからは破壊措置命令が常時出されている状態になりました。そのため現在は自衛隊がいつでも迎撃できるようになっています。
事例2:米国では大統領だけが恩赦を実施できる?
恩赦(おんしゃ)とは、政府が牢屋にいる人の罪を減らすことを意味します。我が国では、憲法において恩赦は内閣が決定し天皇が認めると定められています。
一方、米国では大統領は強い力を持っていますが、州ごとに独自の法律が定められており、州ごとの力も強いです。
このことを象徴するかのように、米国では連邦法違反についての恩赦は大統領が、州法違反についての恩赦は州知事が、それぞれ行うという形をとっています。強大な力を持っていそうな米国大統領も、実は意外とたくさんの制約を抱えているんですね。
事例3:ドイツ vs フランス どっちの方が首相の仕事が多い?
国際面のニュースを見ると、ドイツはメルケル首相、フランスはオランド大統領が出てきます。一方で、ドイツにも大統領、フランスにも首相がそれぞれいます。これはどういうことなのでしょうか?
ドイツでは、大統領が国の「象徴」の役割を果たし、首相が政治を全て動かします。日本の天皇陛下と総理大臣の関係を想像すれば分かりやすいと思います。
一方、フランスにおいて大統領が果たすのは「象徴」の役割だけではありません。大統領は外交において強権を握っています。その分、首相が果たす役割は内政が中心になります。
よって政治の実権を全て握るドイツの首相の方が、フランスの首相より仕事が多いと言えそうです。一口に首相や大統領といっても、各国で立ち位置がかなり異なるんですね。
首相は内政、大統領は外政に強権を持つ
以上のように各国の事例を見てきました。こうやって個々のケースから考えると、首相と大統領の仕事はバラバラなように思えます。しかし、おおまかに捉えると「首相は国内政治に強い力を持ち、大統領は国外との関係に強い力を持つ」といえるでしょう。
安倍首相は内閣を通して政治方針を決定します。よく日本の政治は国会が動かしていると思われがちですが、国会はあくまで法律を作り議論する場所であり、直接的には内閣、ひいては首相が政治のかじ取りを行っています。しかし、軍事や外交について首相一人が強い力を持つわけではありません。
一方で米国の大統領などは、外交・軍事においては一人で強大なパワーを持ちますが、国内においては州の法律や権力に阻まれて動きがとりづらい状態です。
このように、「国内か国外か」という視点から両者の立場を見ると、よりニュースが分かりやすくなるはずです。トランプ大統領の顔を見たら「ああ……意外と内側では苦労してるのかもなあ……」などと考えてみるのもいいかもしれません。
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