鹿児島の猫カフェで経営者が失踪、店内は猫4匹息絶えた惨状 法制度の不備浮き彫りに

発見当時、店内には大量の汚物やノミが。生き残った13匹が現在保護されています。

» 2017年06月30日 07時00分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 鹿児島県鹿児島市にある猫カフェ「にゃんCafe猫之坊」の経営者が猫を置き去りにしたまま失踪していることが、6月28日に動物愛護団体からの報告で明らかになりました。店内は汚物やゴミで溢れかえり、猫4匹が息絶えている状態で発見。現在生き残っていた13匹を同団体が保護し、ネットで里親や支援を募っています。

猫カフェ 猫之坊 経営者 失踪 「にゃんCafe猫之坊」に残された猫。(写真は清掃後の様子、提供:犬猫と共生できる社会をめざす会鹿児島)

ここ数年は廃業状態だった「猫之坊」

 鹿児島市の健康福祉局保健所生活衛生課獣疫係によると、最初に発見したのはカフェの上階に住む大家さん。猫の鳴き声が騒がしいので部屋を開けてみたところ惨状に気づき、6月21日に同係へ相談しました。店内は異臭が漂い、ノミも大量発生していたとのこと。子猫3匹と成猫1匹が死んでいた他、生き延びていた13匹も痩せこけ、中にはノミアレルギーで毛が抜け落ちている猫もいました。

猫カフェ 猫之坊 経営者 失踪猫カフェ 猫之坊 経営者 失踪 生き延びていた猫も、人間への警戒心が高く、部屋の隅に固まりなかなか動かないという

 「猫之坊」は2013年3月に第一種動物取扱業へ登録、5月ごろから営業を開始。SNSで猫の情報を頻繁に発信していましたが、2015年7月から更新はぱたりと止まっていました。大家さんによるとここ数年はほとんど営業しておらず、経営者がカフェで寝泊まりする状況が続いていたそうです。廃業届も出されていませんでした。

猫カフェ 猫之坊 経営者 失踪 「猫之坊」がFacebookに最後に投稿した子猫の写真(2015年7月31日、「猫之坊」Facebookページより

 市や大家さんから経営者へは連絡が取れない状態が続いており、いつからなぜ店を空けているのかは分かっていません。子猫が生き延びていたり、活発的に逃げ回る猫もいたりしたことから、最近までエサが与えられていたのではないかと市の担当者は推測しています。

 「動物愛護管理法」で愛護動物の遺棄や虐待は犯罪として禁止されています。また猫カフェ営業にあたる第一種動物取扱業を営む者も、「動物の管理の方法や飼養施設の規模や構造などの基準を守ること」が義務づけられており、「猫之坊」経営者の行為はこれらに抵触しそうです。獣疫係では今後の対応について、市の各部署や警察へ相談を進めています。

 生き残った猫は、市の動物愛護団体「犬猫と共生できる社会をめざす会鹿児島」が保護。近日中に13匹を別の場所に移し、体調が回復した後に順次里親探しをしていくとしています。復調や人への警戒心を払拭するのに最低1カ月以上はかかる見込みで、どの猫が不妊手術をしているか確認作業も必要。保護に要する物資の提供や寄付をFacebookで呼び掛けています

猫カフェ 猫之坊 経営者 失踪 会が保護した、一番弱っていたというキジ猫

猫カフェ経営に対する覚悟の欠如 法制度の不備

 猫を保護した中村順子さんは、鹿児島市内で猫カフェ「猫と人のいやし処 そら猫」を営業。同業者として今回の件について、猫カフェを経営する場合は相応の覚悟を持ってほしいと訴えます。

「今回は偶然耳に入ったので公になりましたが、猫カフェで猫たちが人知れず放置されるケースは今までもおそらくあったと思います。猫カフェって世間的にはいいイメージでしょうが、実際には経営はかなり難しいんです。鹿児島市では私が知るだけでも3店舗も閉まっています。軽い気持ちで始めてこういうケースになることも今後ありうるので、覚悟がなきゃやれない商売というのがもっと広く知られてほしいです」(中村さん)

 また「自治体にも立入検査を定期的に行って欲しい」と、猫カフェの経営放置がまかり通ってしまう法制度の問題にも触れていました。

 環境省に取材したところ、動物愛護管理法において第一種動物取扱業の規制は業種ごとに異なっています。例えばブリーダーといった「販売」業には営業報告が義務付けられていますが、猫カフェの「展示」業には定期的な検査や報告は法律で規定されていません。ちなみにドッグカフェ(飼い主が犬を連れていけるカフェ)のように飲食物を提供している店は、食品衛生法も関わってくるので報告義務が課せられてくれるとのこと。

 自治体によっては猫カフェに立入検査を行っているところもあります。鹿児島県でも動物取扱責任者に「自治体が開催する研修会を1年に1回以上受講する」よう義務付けていますが、お店の経営状況を確認するというよりは、動物取扱の知識の向上を図るのが目的。市の担当者によると、講習会の案内を出す際に責任者と連絡がとれなくなることがありますが、だからといって特別に何か対応するわけではないそうです。

 このように国や自治体による第三者の定期的なチェックがないため、経営者が猫の飼育を放棄しても発覚しにくい現状が猫カフェにはあります。今回の「猫之坊」の一件は、単に経営者に責任感やモラルが欠けているという話だけではなく、動物カフェ経営に対する法制度の不備も浮き彫りにしています。

黒木貴啓


関連キーワード

| 経営 | 猫カフェ | 動物 | 経営者 | 自治体 | 社会 | 虐待 | 環境省 | モラル


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/11/news012.jpg 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. /nl/articles/2502/15/news032.jpg 163センチ、63キロの女性が「武器はメイクしかない」と本気でメイクしたら…… 驚きの仕上がりに「やっば、、」「綺麗って声でた」
  3. /nl/articles/2502/16/news086.jpg 年の差21歳で「夫は娘の同級生」 “両親大激怒”で結婚は猛反発されるも……“まさかの行動”で説得
  4. /nl/articles/2502/16/news005.jpg 1歳双子の姉が退院日、妹と再会する“瞬間”が「涙出ちゃった」と大反響 あれから約9カ月後……現在を聞いた
  5. /nl/articles/2502/15/news002.jpg 山で発見したサワガニ、「どうやって生きてきた!?」と目を疑う状態で…… 連れ帰った後の“驚きの行動”に「泣いた」「これは目が離せない」
  6. /nl/articles/2502/16/news039.jpg スーパーで買ったロブスターを、アワビと一緒に育てたら…… 「スゴすぎ」“予想外の展開”が150万再生「感動しました」
  7. /nl/articles/2502/14/news121.jpg 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  8. /nl/articles/2502/16/news009.jpg 「これすごい」 飛行機のエコノミークラスに搭乗→“まさかの機内食”に思わず二度見 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2502/16/news050.jpg 穴が開いたユニクロのカシミヤニットを“いったん解いて”リメイクしたら…… 息をのむほどの仕上がりへ「びっくりした!」「人間ってすげーな」
  10. /nl/articles/2502/14/news033.jpg コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  2. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  3. 14歳のとき、親友の兄と付き合うことになった女性→13年後…… “まさかの結末”に「韓国ドラマみたい」【海外】
  4. リンゴを1年間、水の中で放置→顕微鏡で見てみたら…… 衝撃の実験結果に「これはすごい」「息をのみました」【海外】
  5. 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
  6. “駐車場2台分”の土地に、建築家の夫が家を建てたら…… “とんでもない空間”に驚き「すごい。流行る」
  7. 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」
  8. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
  9. ズボラ母が5人分サンドイッチを爆速で作ったら…… 目からウロコの時短テクと美しい仕上がりに「信じられない」
  10. 【今日の計算】「7−2×0+9」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議