予約を無断キャンセルした客の番号を共有するサイト、注目浴びる 背景には飲食店の“泣き寝入り”事情(2/2 ページ)
無断キャンセルされても泣き寝入り 飲食店側の悩み
「予約キャンセルデータベース」の試みはユニークだが、体制が万全とはいい難いようだ。しかし問題なのは、こうしたサービスの必要性が出てくるほど、「予約の無断キャンセル問題」を抑止する手段やシステムが飲食店業界にないところにあるだろう。
「予約した人が何も連絡なしに来ないケースは飲食店業界でざらにあります。ですが、お客さんに何も請求しないのがもっぱらです」
そう話すのは、2014年から東京・池袋でイタリアン居酒屋「酒場がぶ」の経営者だ。肉バル&チーズフォンデュが安く堪能できるとして団体客にもよく利用されるが、8人ほどの予約の無断キャンセルは、2、3カ月に1回はあるそうだ。大繁盛しているなら週に3、4回は起こっている店もあるだろう、と推測する。
「正直言うと、ドタキャンされた分を回収できることはほぼないんです。うちの場合ですと8人ならお会計は3万円くらい。店への利益だと7000、8000円ほど。従業員1人1日分の給料を逃してしまうことになります」(酒場がぶ 経営者)
それでも無断でキャンセルした人に費用を請求しないのは、手間がかかるからだ。弁護士への相談料もそれなりで、客単価1万円以下なら刑事事件として立件するのも難しく、お客さんとももめる。相応の賠償金をもらえたとしても、とにかく見合わないという。
「それなら『また来てください』と笑って対応して、もう一度足を運んでもらう可能性にかけた方がいいと考えてしまいます。キャンセル料が発生する取り決めもホテルとかならいいですが、うちのような居酒屋がやるには重く、予約が取りづらくなってしまいます」(酒場がぶ 経営者)
大手グルメサイトには、無断キャンセルした利用者にペナルティを科すところもあるが、「サービスごとに違うシステムでは意味がありません」とKさん。だから「予約キャンセルデータベース」は垣根のない、経営者であれば個人経営だろうとチェーンだろうと自由に使えて共有できる仕組みとして作ったという。
「ホテルの予約のように、登録済みクレジットカード等からの事前申込みでキャンセル料あり、という考え方が飲食店全体に根付いていく以外、解消の道は無いように思います」(Kさん)。消費者のモラル任せになっている「予約無断キャンセル問題」――業界では、改善に導くシステムの登場が望まれている。
お詫びと訂正:2017年7月12日19時38分
記事掲載後、「予約キャンセルデータベース」の適法性や一部表現の誤りについて、個人情報保護の専門家である高木浩光さん(@HiromitsuTakagi)より指摘をいただきました。その後高木さんの意見を参考にしつつ、個人情報保護委員会事務局および高木さん、運営者のKさんにあらためて取材した結果、以下の箇所を修正しました。お詫びして訂正いたします。
- 個人情報保護法の対象となる「事業者」は、運営者が非営利だと該当しないような書き方をしていたが、事業者は営利・非営利問わないため、訂正した。
- 電話番号のみでは個人情報に当たらないと説明していたが、場合によっては電話番号だけでも個人情報に当たることが分かったので、訂正した。
- お店側が個人情報を「予約キャンセルデータベース」に提供するのは違法性があるとしていたが、その理由について詳述した。
- 「予約キャンセルデータベース」で「電話番号が暗号鍵とともに不可逆暗号化して保存されている」なら万全であるかのような説明をしていたが、復元や悪用される可能性もあるため、高木浩光さんと運営者のコメントでその点を補強した。
(黒木貴啓)
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