酒に溺れる父とDV彼氏の板挟み アルコール依存漫画『酔うと化け物になる父がつらい』の恐怖は加速する
ページをめくるのもつらい。
「哀しくてツラい」「ざりざりと心をやすりで削られていく」「毎回怖さが増す」――。
4月18日にWebコミックサイト「チャンピオンクロス」で連載開始した漫画『酔うと化け物になる父がつらい』が、読者の心をえぐり続けている。
同作は、作者の菊池真理子さんとアルコール依存症の父との生活を描いたエッセイ漫画。(2年前、当時連載していた作品の)取材のためアルコール外来を訪れた菊池さんが、「父は、アルコールによって壊れていたのかも」と気付いたことから始まった連載で(関連記事)、7月25日に第8話が公開された。
普段は無口で小心者なのに、ひとたび酒が入ると人が変わったようになる父。母はといえば、新興宗教を心のよりどころに耐え忍ぶ生活を送るも、菊池さんが中学2年生になるころに自ら命を絶つという悲しい最期を迎えてしまい――と、ここまでが第1話の内容だ。ヘビーすぎる。
妻を亡くした父は心を入れ替えて酒を断ち――となればよかったが、1カ月もたたずに泥酔生活を再開。別人のようになって帰って来る父に、最初こそ「もう飲まないでね」と(表面上は)優しい言葉をかけていた菊池さんだが、年月を経るごとにその対応も変化していく。高校時代は友達が面白がってくれることを理由に笑い話に昇華させる術を身に付け、卒業後は「介抱する身にもなってよ」「それでも親なの?」と責めるようになる。そしてついには、見つけた母の日記から自分が父にとって望まれない命であったことを知ってしまう。
娘からの必死の呼びかけにも耳を貸さず、酒に溺れ、化け物でありつづける父。監禁されているわけでもなく、やろうと思えば家を飛び出し、1人暮らしもできたかもしれない。それでも、暴言に暴言で返し、時には手をあげることさえあっても、体を気遣ってしまう菊池さん。血のつながりの残酷さを否が応でも感じさせる描写の連続。そして登場する、マザコン&束縛&DVという3つの地雷を抱えた同い年の彼氏、太一。
途中からは父の言動がまだマシに感じるほど、この太一という地雷男との強烈なエピソードが続く。
論文を書くから(院生で頭は良いらしい)付き合えと夜中の3時に電話してくるのは常で、寝る際には寝息が聞こえるまで通話状態にしておかないと何度でもかけ直してくるという束縛っぷり。傘をさそうとすれば、どこで買ったものなのかを知りたがり、答えられないと「男に買ってもらったんだろ」と激高&殴打。かと思えば、「愛してるよ〜」と受話器越しに甘えてきたりする。父とはまた別の化け物に振り回される菊池さん。思わず、お願いだから目を覚ましてくれと液晶を前に固く拳を握ってしまう。
簡単にこれまでのストーリーをなぞってきたが、最新話では長年好きなように酒を飲み続けてきた父をついに病魔が襲う。げっそりとした父だが、存在を無視するように生活していた菊池さんは父が痩せたことにも、最近咳が止まらないということにも気付いていなかった。弱った化け物を前に、これから親子の関係はどう変化していくのだろうか。
9月15日には、単行本第1巻が発売される。価格は900円(税別)。
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