大相撲の座布団投げ、昔はもっと「危ないもの」を投げていた!
「痛っ! ものをっ、ものを投げないでください!」
稀勢の里ブームや遠藤、宇良、千代丸など若手力士人気により、新なファンを獲得し続けている大相撲。古くは江戸時代から続く競技であるとともに、古代より神事的役割も担ってきた、まさに日本文化の中核をなすスポーツです。
一方で、その儀式的な側面ゆえに不思議な慣習も多いもの。
土俵の中には栗が埋まっていたり、土俵を囲む俵が実は円形の配置じゃなかったり、実は鍋物に限らず力士の食事全てを「ちゃんこ」と呼んだり……まさに、雑学の宝庫です。
このような文化の多くが中継等ではスルーされているため、私達にとっては何げなくすぎ去ってしまうものも少なくありません。
でも、相撲の慣例といわれて、みなさんの頭にパッと思い浮かぶような、目立つ文化もあります。その1つが、いわゆる「座布団の舞」。
横綱が敗れた際など熱戦の後に、観客が座布団を土俵に向けて投げ入れる行為です。中継を見た人はもちろん、ニュースなどでもよく目にしているでしょう。
……あれ、なぜ投げているんでしょうか?
お祝いムードとはいえ、投げることそのものに大きな意味があるようには思えません。片付けも大変だし、先日は「観戦に来ていた浅田真央さんに当たった」なんて物騒なニュースもあり、正直危ない気がします。
しかし、そのルーツをたどると、実はもっと危なそうな慣習がもとになっていることが分かりました。なんと、もともとは自分の装身具、つまり羽織りや帽子、キセルなどを投げていたのです!
なぜ身の回りのものを投げていたのか
着ているものを投げるのはもったいないし、キセルなんて刺さっちゃいそう。しかしこれらのもの、実はあとでしっかり返ってくるので一安心。
もともと、このようなものを投げる文化は投げ纏頭(はな)と呼ばれていました。
この慣習自体は、17世紀半ばから芝居小屋などで行われるようになり、相撲には18世紀頭ごろに根付いたものです。これは、ひとことでいえば「おひねり」。見物人がひいきの力士が勝ったときに、誰が投げ入れたかを特定しやすいように自分の持ち物を投げ入れていました。
後からこれを力士の控室に取りに行き、返してもらう引き換えとして現金でご褒美をあげるのです。現在で言う懸賞金に当たるものですね。(ちなみにこのようなひいきの人、いわゆるタニマチは土俵のそばに座っていることが多く、キセルが飛んできても人には刺さらないようです。よかった……)
何も投げなくても
直接渡せばいいじゃん? いやいや、もはやこれは「粋」の世界のお話。現ナマをポイ、では美しくないのです。
この投げ纏頭自体は明治42年に相撲が競技として洗練されたことで禁止されましたが、ものを投げる観客を完全になくすことはできませんでした。時がたち、懸賞金制度も現在のような形になっていく中で投げ纏頭文化は廃れていき、次第に座布団投げへと変化していきました。お金を渡せない以上、私物を投げる意味はなくなってきたからですね。
こうして、現在まで続く座布団投げ文化が生まれました。
実は明治42年以降、ものを投げることそのものが禁止されているため座布団投げも本当はNG行為です! 念のため、注意。
ということで、相撲の座布団投げにも、由緒正しきルーツがありました。江戸時代の日本人の粋から生まれた文化だったんですね。
参考文献
大相撲の歴史に見る秘話とその検証 触れ太鼓・土俵の屋根・南部相撲など 根間弘海
関連記事
「16×4は?」「68−4だから64」 小学1年生の掛け算の計算方法が斬新だと話題に
発想が見事。「カニミソ」はカニの何なのか?
カニミソって何だ? 脳ミソか? 僕は何を食べようとしているのだ?漢字の「一」「二」「三」の次がいきなり「四」になるのはなぜなのか?
なんで横棒4本じゃないの?Suicaはなぜ「充電なし」でいつまでも使えるのか?
よくよく考えてみると。「甲子園の土、その後どうしてますか?」 元甲子園球児たちに聞いてみた
あの「奇跡のバックホーム」の走者だった方にもお話を伺いました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
お水を飲みたいカラスさんがとった行動とは……? 人間に“ある方法”でお願いするカラスが賢くてかわいい
トンボの目の前で指をグルグル回したら……衝撃の展開が!! まさかのラストを描いた体験漫画に驚きの声
猫「は、恥ずかしいニャ〜!」 黒歴史を思い出した猫ちゃんのポーズが人間そっくり
【なんて読む?】今日の難読漢字「颯と」
Windowsの「ごみ箱」を作業フォルダにしてる人がいる? 意外な使い方がネットで話題に
なんて恐ろしい 遊び方を守らないと股間が大変なことになりそうなすべり台
【漫画】「すこしくらい反応してくれてもいいじゃん…」 家主に気付かれない座敷わらしがとにかくかわいいい
でっかいワンコが子猫を優しく抱き寄せて…… ママのような愛情を注ぐ姿に心があたたまる
「別に高望みしてない」のにフラれ続きの男のタイプとは? 思わぬ答えが飛び出す漫画に「最高尊い」「それは高望みだよ」の声
口裂け女 VS 赤マント 女子高生の命をめぐる都市伝説の縄張り争い漫画がカオス
先週の総合アクセスTOP10
- 鳥取砂丘から古い「ファンタグレープ」の空き缶が出土 → 情報を募った結果とても貴重なものと判明 ファンタ公式も反応
- 「モンストのせいで彼氏と別れました」→ 運営からの回答が“神対応”と反響 思いやりに満ちた言葉に「強く生きようと思う」と前向きに
- 「この抜き型、何ですか……?」 家で見つけた“謎のディズニーグッズ”にさまざまな推察、そして意外な正体が判明
- 人間に助けを求めてきた母犬、外を探すと…… びしょ濡れになったうまれたての子犬たちを保護
- 幼なじみと5年ぶりに再会したら…… 陸上選手から人間ではない何かに変わっていく姿を見てしまう漫画が切ない
- ブルボンの“公式擬人化”ついにラスト「ホワイトロリータ」公開 イメージ通り過ぎて満点のデザイン
- 「幸せな風景すぎて涙出ました」 じいちゃんの台車に乗って散歩するワンコのほのぼのとした関係に癒やされる
- 「遺伝ってすごい」「足長っ!」 仲村トオルの“美人娘”ミオがデビュー、両親譲りのスタイルに驚きの声
- 猫「飼い主、大丈夫か……?」 毎日の“お風呂の見守り”を欠かさない3匹の猫ちゃんたちがかわいい
- 天才科学者2人が最強最高のロボを作成するが…… 高性能過ぎて2人の秘密がバラされちゃう漫画に頬が緩む
先月の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 安達祐実、グレー髪への“勘違い指摘”に「白髪は悲しくないですよ」と切り返し 加齢の考え方が称賛を呼ぶ
- 「これは妙案」「明日の朝はこれ」 “レジ袋1枚”でできるフロントガラス解氷テクに目からウロコ
- 嫌がらせ急ブレーキで追突 トラクターの進路を妨害した「あおり運転」ベンツ、ぶつけられたと運転手がブチギレ
- “東大王”鈴木光が『CanCam』デビュー “美しすぎる東大生”の新たな一面
- 柴犬たちが追いかけっこしていたら…… ワンコの“突然の裏切り”に「声出して笑った」「4コマみたい」の声
- 元「うたのおにいさん」今井ゆうぞうさんが脳内出血で急逝 生前最後のブログには“目の異常な充血”
- 「虚無僧」「言質」「古刹」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- 「えっ!? おきゃくさまっ!」 スターバックスでやけに長いレシートに遭遇 店員さんのテンションがすごかったエッセイ漫画