大相撲の座布団投げ、昔はもっと「危ないもの」を投げていた!

「痛っ! ものをっ、ものを投げないでください!」

» 2017年09月06日 10時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 稀勢の里ブームや遠藤、宇良、千代丸など若手力士人気により、新なファンを獲得し続けている大相撲。古くは江戸時代から続く競技であるとともに、古代より神事的役割も担ってきた、まさに日本文化の中核をなすスポーツです。

advertisement

 一方で、その儀式的な側面ゆえに不思議な慣習も多いもの。

 土俵の中には栗が埋まっていたり、土俵を囲む俵が実は円形の配置じゃなかったり、実は鍋物に限らず力士の食事全てを「ちゃんこ」と呼んだり……まさに、雑学の宝庫です。

 このような文化の多くが中継等ではスルーされているため、私達にとっては何げなくすぎ去ってしまうものも少なくありません。

 でも、相撲の慣例といわれて、みなさんの頭にパッと思い浮かぶような、目立つ文化もあります。その1つが、いわゆる「座布団の舞」

 横綱が敗れた際など熱戦の後に、観客が座布団を土俵に向けて投げ入れる行為です。中継を見た人はもちろん、ニュースなどでもよく目にしているでしょう。

advertisement

 ……あれ、なぜ投げているんでしょうか?

 お祝いムードとはいえ、投げることそのものに大きな意味があるようには思えません。片付けも大変だし、先日は「観戦に来ていた浅田真央さんに当たった」なんて物騒なニュースもあり、正直危ない気がします。

 しかし、そのルーツをたどると、実はもっと危なそうな慣習がもとになっていることが分かりました。なんと、もともとは自分の装身具、つまり羽織りや帽子、キセルなどを投げていたのです!

キセル。これが飛んできたら痛いし熱い

なぜ身の回りのものを投げていたのか

 着ているものを投げるのはもったいないし、キセルなんて刺さっちゃいそう。しかしこれらのもの、実はあとでしっかり返ってくるので一安心。

advertisement

 もともと、このようなものを投げる文化は投げ纏頭(はな)と呼ばれていました。

 この慣習自体は、17世紀半ばから芝居小屋などで行われるようになり、相撲には18世紀頭ごろに根付いたものです。これは、ひとことでいえば「おひねり」。見物人がひいきの力士が勝ったときに、誰が投げ入れたかを特定しやすいように自分の持ち物を投げ入れていました。

 後からこれを力士の控室に取りに行き、返してもらう引き換えとして現金でご褒美をあげるのです。現在で言う懸賞金に当たるものですね。(ちなみにこのようなひいきの人、いわゆるタニマチは土俵のそばに座っていることが多く、キセルが飛んできても人には刺さらないようです。よかった……)

何も投げなくても

 直接渡せばいいじゃん? いやいや、もはやこれは「粋」の世界のお話。現ナマをポイ、では美しくないのです。

 この投げ纏頭自体は明治42年に相撲が競技として洗練されたことで禁止されましたが、ものを投げる観客を完全になくすことはできませんでした。時がたち、懸賞金制度も現在のような形になっていく中で投げ纏頭文化は廃れていき、次第に座布団投げへと変化していきました。お金を渡せない以上、私物を投げる意味はなくなってきたからですね。

 こうして、現在まで続く座布団投げ文化が生まれました。

 実は明治42年以降、ものを投げることそのものが禁止されているため座布団投げも本当はNG行為です! 念のため、注意。

 ということで、相撲の座布団投げにも、由緒正しきルーツがありました。江戸時代の日本人の粋から生まれた文化だったんですね。

参考文献

大相撲の歴史に見る秘話とその検証 触れ太鼓・土俵の屋根・南部相撲など  根間弘海

制作協力

QuizKnock

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/01/news049.jpg 一般家庭で暮らすワニ、“ご飯だよ”の合図を聞いた瞬間 400万再生の予想外すぎる顔に「温室育ちの純粋な目をしてて草」
  2. /nl/articles/2502/03/news057.jpg 「押すなよ、絶対に押すなよ」なポーズの猫ちゃん→次の瞬間…… 笑っちゃうほどの展開が200万再生「爆笑しました」
  3. /nl/articles/2502/02/news028.jpg 生後2カ月で迎えた保護たぬき、犬に囲まれて育ち5カ月後…… 見事な“オラオラ俺様モード”に「愛嬌の塊みたい」「可愛すぎて虜」
  4. /nl/articles/2502/03/news152.jpg 母「昔は男性からモテまくりだった」→娘は信じられなかったが…… 当時の“説得力ある姿”が260万再生「なんてこった!」【海外】
  5. /nl/articles/2501/31/news050.jpg 「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
  6. /nl/articles/2502/03/news157.jpg 「目を疑った」 “8割引”も……恵方巻の「大幅値引き」目撃相次ぐ 「予約購入は少数派」消費者との温度差も
  7. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  8. /nl/articles/2502/03/news009.jpg 27歳女性がひとりで営む“おにぎり屋台”が話題沸騰中 必死にリヤカー引く姿に「なんだか泣けました」「見かけたら必ず買う!」400万再生
  9. /nl/articles/2502/03/news025.jpg 真冬なのに“様子がおかしい木”を発見→近付きよく見てみると…… まさかの正体が200万表示「初めてみた」「マジで存在するんだ」
  10. /nl/articles/2501/31/news164.jpg 妻「おはぎ教室行ってくる!」→持って帰ってきたものは…… 妻が作った“衝撃のおはぎ”が400万表示 「知ってるおはぎと違う」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議