「1時間で出番は1回だけ」 オーケストラで“一番暇”な楽器はどれなのか?

暇すぎる。

» 2017年11月08日 11時00分 公開
[高橋ホイコねとらぼ]

 あなたはオーケストラを聴きに行ったことはありますか? もし行ったことがあるならば、ずっと座っているだけの奏者が気になったことはありませんか?

 筆者はアマチュアのオーケストラで25年間活動をしていますが、友人を演奏会に呼ぶと「あの打楽器の人、いつ出番があったの?」などと聞かれます。出番が極めて少ない楽器があるのは事実ですが、実際に一番暇な楽器はどれなんでしょう? 筆者の知る精鋭の“オケマニア”たちに聞きました。


オーケストラのイラスト 曲により暇な楽器もあるオーケストラ

誰もが答える、新世界のチューバ

 「一番暇な楽器は?」と聞くと、誰もが答えるのが、ドボルザーク作曲 交響曲第9番「新世界より」のチューバです。チューバというのは、低音を担当する金管楽器。金管楽器のなかでも、ひときわ大きい楽器です。


チューバのイラスト チューバ

 ドボルザークの「新世界より」の2楽章は、「遠き山に日は落ちて」「家路」など歌詞をつけて歌われていることもあり、そのメロディーは広く知られています。私の母校では下校放送がこの曲でした。誰でもどこかで聞いたことがある曲ではないでしょうか。

 この曲は全体で45分程度。その中でチューバの演奏時間は1分未満しかありません。手元にあったCDの演奏で測定したところ、出番は2カ所合計で55秒でした。


新世界のチューバの譜面 赤い箇所がチューバの音があるところ

 パート譜がどうなっているのか見たくて探してみたのですが、なかなかチューバのパート譜が見つかりません。よくよく調べたら、筆者がたまたま見つけた版ではトロンボーンのついでに譜面が書いてありました。チューバ専用のパート譜になっていないこともあるんですね。

 演奏箇所は、小節数にすると9小節。音は13個です。しかも、3番トロンボーンと同じ音でした。どうして、ここにだけチューバが使われたかは諸説あるようです。

新世界はシンバルも1発だけ

 ドボルザークの交響曲第9番「新世界より」は、シンバルの出番が少ないことでも有名です。出番が少ないどころか、シンバルは1発だけです。


シンバルの画像 シンバル

シンバルの出番「新世界」 ソロとか言われても…

 実際にはトライアングルとの掛け持ちが可能で、トライアングルは3楽章にそこそこの出番があるので、一般的にはチューバの方が暇と言われます。ですが、トライアングルとの持ち替えをしないで、シンバル専任として奏者が置かれることもあります。

 「若くてまだ仕事があまりなかったシンバル奏者が、やっとプロのオーケストラに呼ばれて、新世界のシンバルを演奏することになった。しかし、本番でついついたたき忘れてしまって、結局何もせずにギャラだけもらって帰ってきた」という話は、オーケストラ業界の都市伝説。似たようで、詳細が違う話を複数のマニアが話していました。

1時間超の曲で出番が1回!

 ブルックナー作曲の交響曲第7番(ノヴァーク版)のシンバルも1発しか出番がありません。この曲は全体で約67分と前述の「新世界より」よりも20分以上も長いので、暇度が高くなっています。

 打楽器はティンパニ、トライアングル、シンバルの3つが必要ですが、3つとも同時にたたくので掛け持ちができません。ちなみにトライアングルの出番もシンバルと同じ1カ所のみです。トライアングルの方は2拍間連打するので、たたく回数は少しだけ多くなります。


シンバルの出番「ブル7」 休みの小節数すら書いてない(実際には他の楽器の譜面などガイドがあります)

 この曲は1楽章が約20分、2楽章が約25分。シンバルの出番は2楽章の最後のほうにあります。手元のCDでは、シンバルの出番は2楽章が始まって21分頃にありました。

 2楽章は重い、ゆっくりとしたテンポの曲です。語弊をおそれず言うならば、聞いているだけなら眠くなる曲。お客さんも相当数が寝ていると思います。あの曲を21分も待つのは、実は相当に難易度が高いのではないでしょうか。救いなのは打楽器が3人とも同じ出番なので、誰かが気付けば気が付く可能性が高いということでしょうか。

 ちなみに、この曲でパート譜のページ数が一番多いのは第1バイオリン。全部で27ページありました。シンバルはもちろん1ページです。

 その他、ブラームス「悲劇的序曲」のピッコロ、ラヴェル「ボレロ」の大太鼓とドラとシンバル、チャイコフスキー「交響曲第6番 悲愴」のバスクラリネット、マーラー「交響曲第2番 復活」のオルガンなど、いろいろな情報が寄せられましたが、やはり、インパクトのある情報は打楽器に多いようです。生のオーケストラで「新世界より」や「ブルックナー 交響曲第7番」を聞きに行くことがあったら、是非シンバル奏者がたたいている瞬間を見つけてあげてください。

(※ブルックナーの交響曲第7番は「ハース版」の場合、シンバル、トライアングルを使わないこともあります)

高橋ホイコ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」