雑誌『建築知識』建築基準法をまさかの擬人化 売れ行き3倍、編集部は「間取りも擬人化してみたい」
建築の未来を感じる。
建築の専門雑誌『建築知識』。普段はまじめでちょっぴり固いイメージがありますが、たまにアニメの表紙になったり(関連記事)、なぜか「猫のための家づくり」を全力特集するなど(関連記事)、時々ほんわかさせてくれることに定評があります。そんな同誌の2017年12月号は、なんと建築基準法を女の子に擬人化した特集。
一瞬脳の理解が置いて行かれそうになりますが、表紙を見れば一目瞭然。本当に建築基準法を擬人化してしまっています。特集では「敷地」「防火」「面積」など、建築基準法のテーマに添って、擬人化キャラを配置。難しそうな建築基準法を楽しく理解できる特集になっています。
意表をついた特集はたびたび話題をさらってきましたが、今回もネット上では「猫特集で爆発的に売れてから、建築知識さんの中で何かが変わったに違いない」「よく分からない一線を超えてきた」「萌えページは数ページと思っていたら80ページ近くあって、本気度が伺える」等、困惑や絶賛の声が多数上がっています。
なぜ擬人化だったのか? そこにはどんな意図が込められているのか? 『建築知識』編集部にお話を伺いました。
体系的に学べるよう、曼荼羅のような階層構造を込めた
―― 『12月号』の売れ行きや反響はいかがでしょうか。
『建築知識』編集部(以下、建築知識):発売からまだ2日しかたっていないのですが、Amazon.co.jpをはじめとするネット書店は初回出荷分が完売(随時補充予定です)しました。ありがたいことです。リアル書店でも通常の3倍の売れ行きとなっております。このような企画に賛同いただいた読者の皆さまに感謝申し上げます。
―― そもそもなぜ、擬人化しようと思ったのですか?
建築知識:動物や刀剣、戦艦などの擬人化が流行っていることが一番の理由ではあるのですが、難しい内容をやわらかく見せる手法として擬人化は適していると考えました。また、ねとらぼさんに紹介いただいた2017年1月号「猫のための家づくり」特集が一般の方にも多くの支持をいただいたように、専門雑誌でも内容次第で一般の方にも受け入れられることが分かったことも大きいですね。
―― (ホントに猫特集もきっかけになっていた……!)
建築知識:毎日暮らしている家は「建築基準法」をはじめとする多くの規制によってカタチや大きさが決められています。駅前には高いビルが建つのに、住宅街には低層の住宅しか建てられないのも、この法律で決められているからです。窓の大きさや天井の高さにも最低限のルールがあるのです。そんなルールを一般の方々にも知ってもらうことで、もっと建物に関心をもってもらえるのではという期待もありました。
―― 擬人化するにあたり、工夫した点などはありますでしょうか。
建築知識:この特集で擬人化したのは建物そのものではなく、規制内容です。建物を扱う法律のため規制の多くは具体的なカタチとして示せるので、人に置き換えることはそれほど難しくはなかったのですが、それぞれの規制内容には緩和規定(角地に立つ建物は大きくつくれる、広い道路に面していれば高くつくれる)や例外規定などもあり、それらを違和感なく漏れなく人間で表現することに苦労しました。
―― 確かに、物体として存在しない分、キャラクター化するのは観念的な作業になりそうですね。
建築知識:そこで、仏像をお手本にするというアイデアが生まれました。仏像は頭髪、アクセサリー、服装、持ち物、しぐさ、光背などで、その仏様が誰なのか、どのような役割をもち、得られるご利益は何かが分かるようになっています。今回の登場人物にもそれらを駆使して、さまざまな内容を網羅したつもりです。また曼荼羅のような階層構造を持たせることができれば、各規制内容の相関関係も理解でき、より体系的に法律が学べるようになります。この擬人化でも人間関係、名前の付け方や、性格付けといったところにも時間をかけて設定し、世界観を構築してみたつもりです。
―― パッと見ても作り込まれたキャラクターに感じましたが、そんな深いところまで考えられていたんですね。
建築知識:表や図のタイトルもキャラクターにしゃべらせているのですが、これもキャラクターの個性を引き立たせるために多少冗舌(じょうぜつ)にしました。また、それぞれの規制内容が分かっている方が見るとクスッとくる内容になっています。一部分かりにくいというご指摘もいただいておりますが、その分、無機質な規制内容が頭に入りやすく、記憶に残るものになったのではないかと……。
―― デザインはどのように決めていかれたのでしょうか。
建築知識:いかんせん擬人化は弊社初の試みのため、はじめはどうしたものかという感じでした。ですが、以前から同人誌で建物の擬人化をしている方がいるらしいという情報はありましたので、まずその第一人者である、モエストロさんに、イラストの作成依頼と、企画の相談を兼ねてお会いしました。
その際に建物の擬人化の現状についておうかがいしたのですが、実践されている方は多くないということでした。そこで、建築に限らず、さまざまなジャンルの擬人化で活躍されている作家さんを起用することにいたしました。結果的にですが、ほぼ章ごとに作家さんを切り替えることができ、それぞれの世界観を構築するのに良い方向に働いたのではないかと思います。
また、その時にモエストロさんから教えていただいた作家さんの一人が、しきしまふげんさんという、人工衛星を擬人化されていた方でした。しきしまさんからは、擬人化に際して、「ルールを設けるとよい」というアドバイスをいただいきまして、それが先の仏像の見方にもつながっています。
―― 今後キャラが増える可能性はありますか?
建築知識:ぜひ増やしていきたいと思います。間取りを擬人化するとかも面白いかもです。
―― こんなにかわいいとグッズ化などにも期待してしまいます。
建築知識:そういう分野に疎い出版社ですので、その方法を教えてほしいくらいです。ラバーキーホルダーはマストだとして、ぬいぐるみバッジ、立体フィギュアなどもできたら最高ですね。
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“デスマーチ”ちゃんもいるよ。
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