これさえ守れば「ダメ文」が書ける! 人に伝わらない「ダメな文章の書き方」講座

ダメ文は、ダメポイントでできている。

» 2018年02月17日 12時00分 公開
[植田麦ねとらぼ]

 大学教員という仕事柄、普段から学生が書いた文章に触れる機会が多くあります。わたしは、自分の担当授業を受講してくれた学生については、「知識」ではなく「理解」を問いたいので、なるべく論述形式の課題を出すことにしています。要はレポートです。

 そうしたレポートを読んでいると、理解の度合いの高さもさることながら、文章も整っている、というものに出会うことがあります。わたしが教えられたことはほとんどなかったかもしれない、と思わされます。

 その一方で、理解うんぬん以前に、何を言いたいのか読み取りづらい、そもそも何を言っているのか理解しがたいレポートに出くわすのも事実です。時には「ひょっとして、このレポートを書いてるひとは、わざとダメな文章を書く修行をしてきたのではないのか?」とすら思われされます。

 そういう「ダメな日本語の表現」を多くみているうちに、どうしたらダメな文章を書けるだろうか、と思いたちました。以下は、いくつかのパターンで学ぶ「ダメな文章(略してダメ文)の書き方」です。

植田麦

明治大学政治経済学部専任講師。研究の専門は古代を中心とした日本文学と日本語学。



読点を使わない、変なところに打つ

最もわかりやすいダメ文のパターンはひたすら長い文であるにもかかわらず読点を全く使用しないタイプのものです。


 上の文は50字ほどですが、これだけでも「、」がないと読みづらいです。下の文と比べてみてください。

最もわかりやすいダメ文のパターンは、ひたすら長い文であるにもかかわらず、読点を全く使用しないタイプのものです。


 50字くらいならまだ読めますが、恐ろしいことに、200字以上の長文でも「、」を全く使用しない、というレポートに出くわしたことがあります。そして、長い文の場合、主語と述語が一致しない「文のねじれ」を生じていたり、並列関係が整っていなかったりといった、他のダメ文成分を含んでいることも多々あります。

 とはいえ、この手のダメ文にお目にかかる機会はあまりありません。それよりは、変なところに読点を打って、わかりづらい文章にしてしまうパターンをよく見ます。

 以下は、某ウェブメディアの記事を少し改編したものです。

かつてプロ野球などで活躍した山田太郎氏が破産宣告し、J3へと降格した渋谷サッカークラブの買収に乗り出していることが分かった。


 最初、「山田太郎氏」が「破産宣告」したのかと思いきや、「破産宣告」は「渋谷サッカークラブ」だった、というパターンです。「活躍した山田太郎氏」と「破産宣告しJ3へと降格した渋谷サッカークラブ」がそれぞれ意味のまとまりですから、

かつてプロ野球などで活躍した山田太郎氏が、破産宣告しJ3へと降格した渋谷サッカークラブの買収に乗り出していることが分かった。


 とすれば、意味が理解しやすくなります。

ダメ文のポイント

  • 長文で「、」を全く打たない。
  • 意味のまとまりの間で「、」を打ち、修飾関係を混乱させる。


文をねじれさせる

 以下は、わたしが某所でみつけた「ヤマモモ」の説明です。

ヤマモモ 直径1〜2センチの球形で真っ赤に熟す実がなって食べられます。


 なかなかに味わい深い文です。意味はすぐ理解できるのに、読んだときの違和感はなかなか説明しづらいですね。まず、述語である「食べられます」に対応する主語が何か、よくわかりません。「実」だと思うのですが、その「実」の述語は「(が)なって」とあります。では、この「(が)なって」を省いたらいいのかとも思われますが、

ヤマモモ 直径1〜2センチの球形で真っ赤に熟す実が食べられます。


 今度は「実」の修飾部分である「直径1〜2センチの球形で真っ赤に熟す(実)」が、なんだか違和感をもたらします。全体を書き換えるなら、

ヤマモモ 実は直径1〜2センチの球形で、熟すと真っ赤になる。食べることができる。


 といったところでしょうか。ここまでのものではないにせよ、レポートなどでは、

ではなぜ実施すべきなのかを、施策のメリット、デメリットについて考え、明らかにしていくことを目的とした論文である。


 といった文にお目にかかることはしょっちゅうです。

ダメ文のポイント

  • 主語と述語を一致させない。なお、長い文だとさらにポイントが高い。


並列関係を混乱させる

 以下は、大阪の某所にあるビルの注意書きです。

セールスマン・犬等の愛玩動物を連れての外来者の出入は絶対禁ず


 書き手の意図としては、「セールスマン」「犬等の愛玩動物」が並列されているのでしょうが、「・」のせいで、「セールスマン」と「犬」が並列されていて、その両方が「等の愛玩動物」を修飾しているようにみえます。

 さらにこの文章の場合、「外来者の出入りは絶対禁ず」と続いてしまっています。そうすると、愛玩動物を連れていない場合の外来者は出入りが許されてしまうのでしょうか? たぶんダメでしょう。

 つまり、「犬等の愛玩動物」と「セールスマン等の外来者」が並列されていて、それらの出入りを禁じているはずなのですが、中身が混乱しているので、別の文脈になってしまっているのです。

 レポートでは、

業務の効率化にあわせ、機密情報の保持やシステムを新たにするようになった。


 のような例を多くみます。ここでは、「機密情報の保持」と「システムを新たにする」が並列関係にありますが、述語が「(新たに)するようになった」となっていて、「機密情報の保持」が浮いてしまっています。そのため、

業務の効率化にあわせ、機密情報の保持やシステムの更新をするようになった。


 のように、「保持」と「更新」を並列関係にして「するようになった」につなぐと、整った文章になります。

ダメ文のポイント

  • 並列関係にある要素をバラバラにする。
  • 並列関係にあるものは、片方だけを述語につなげる。




 ほかにも、いろいろなダメ文のパターンがあるのですが、すぐに使えそうなものをご紹介しました。これで読者のみなさんも、明日からダメ文がすぐ書けるはずです。がんばって単位を落としてください!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」