こうしてダメな文章は作られる! 読み手を混乱させる「ダメ文」の特徴 その傾向と対策(3/3 ページ)

» 2018年03月14日 12時00分 公開
[植田麦ねとらぼ]
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頭でっかちな修飾 〜蓄積されている情報が、読み手の負担になる〜

 最初から読んでいくと、情報は蓄積されていくのにそれが何を意味するのかが分からず困惑する文。それが「頭でっかちの修飾をもつ文」です。実例をみてください。

18世紀当時は蒸気機関を動力とし、その後19世紀になってガソリンエンジンを動力とする機関を備え、日本国内でも20世紀になって生産が始まった自動車は、現在、極めて一般的なものとなっている。


 「自動車」を修飾している部分が長すぎます。途中までは、まるで「自動車」を当てるクイズのようです。この文の修飾部は70字弱ですが、手元のサンプルでは、90字をこえるものもあります。被修飾語の「自動車」が出てくるまで、「この内容は一体、何についてのものなのだろう?」と、蓄積されていく情報を保持しながら読まなければなりません。読み手には大きな負担がかかりますし、途中で内容を忘れてしまいそうになります。

 この文章の場合、修飾部分をうしろにもってくると、読みやすくなります。

現在は極めて一般的なものとなった自動車であるが、日本国内での生産は20世紀に入ってからである。エンジンを動力とするようになったのは19世紀のことで、それ以前、開発当初の18世紀では、蒸気機関を用いていた。


 このように、修飾部分が長すぎるものを、わたしは「頭でっかちの修飾」と呼んでいます。頭でっかちの修飾と相性のいいのが、前回記事でも紹介した「ねじれた文」「長すぎる文」です。以下は、あるWebメディアの記事を改編したものです。

××国の大統領が昨年9月に公表した声明により、××国との関係が冷え込んだ○○国では2020年の××国万博開催の決定を控えて、△△国のオンライン請願掲示板で、万博の開催を阻止する署名運動が開始されたことを紹介する書き込みが立ち上げられた。


 まず、「大統領が昨年9月に公表した声明により、隣国××との関係が冷え込んだ」が「○○国」を修飾するのは、容易に理解できます。が、挿入された「2020年の××国万博開催の決定を控えて」がその「○○国」と、どのような関係にあるのか、考えながら読み進めることを強制されます。そして、「△△国のオンライン掲示板で、万博の開催を阻止する署名運動が開始されたことを紹介する」が「書き込み」を修飾しています。ここで、××国でも○○国でもない、第三の要素が現れたことが、内容を複雑にしています。

 そして、その「書き込みが立ち上げられた」で文が結ばれているので、その主語は「○○国」ということになると思われますが、オンライン掲示板は「△△国」のもののはずなので、文意がうまく通じません。

 そうすると、どうやら「○○国」で立ち上げられた書き込みは、△△国のオンライン請願掲示板とはまた異なったサイトもしくはオンライン掲示板かもしれないと推測されます。

 ……おそらく、多くの読者の方は、上の解説を読み飛ばしたはずです。わたしが読者であれば、スルーします。つまり、それくらい面倒な構造になっている、ということです。頭でっかちの修飾・ねじれ文・長い文の三重苦です。実のところ、上の説明も確かな内容といえるのかどうか、自信がありません。

 とはいえ、この文は、修飾関係がややこしく、ねじれも生じているものの、「多分書き手は○○国を批判したいのだろうな」という気合いのようなものだけは感じ取ることができます。もしかすると書き手は、その「気合い」を理解してもらって、「気合い」に共感してもらえれば表現はどうでもいい、と思っているのかもしれません。

ダメ文のポイント

  • 修飾部分を長くすると、文全体の意味を理解させづらくなる。
  • 長い修飾部分を持つと、文全体が長くなりがちである。
  • 長い文の場合、文のねじれを生じさせやすい。
  • 気合いが伝われば、文としての整合性は無視してもよい。




 いかがでしたか。そういえば、この時期、大学生は学期末の試験やレポートも終えて、勉強から解放された、と一息ついているころでしょうか。一方、大学に入ろうとしている受験生のみなさんの中には、入試がまだ続いているというひともいるでしょう。

 私立大学の一般入試にはあまりありませんが、国立大学の二次試験では小論文を課すところも多いと思います。二次試験対策で小論文を書く練習を繰り返してきた受験生のみなさんであれば、本稿にみるようなダメ文を書くことも少ないと思います。が、ひょっとすると、ちょっとくらいはダメ文が生まれるかもしれません。

 前回記事と今回記事を読めば、受験生のみなさんもダメ文が書けます。何しろ、稿者のわたしは浪人を2回、留年も1回経験していますから、自信をもって断言できます。

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