昭和すごかった “やり過ぎ”上等「スーパーカー自転車」はいかに少年の心をつかんだのか(1/4 ページ)
昭和少年を熱狂させたゴテゴテフル装備とダブルフロントライト。スーパーカー自転車ブームを支えた「レジェンド開発者」に聞きました。(画像80枚)
昭和の時代、少年の心を踊らせ、離さなかった「すごい乗りもの」がありました。
ときは1970年から1980年代(昭和45年頃から昭和50年台)。セミドロップハンドル、艶消し黒のダイヤモンドフレーム、トップチューブ(自転車フレームの上部にある水平部分のパイプ)上に備えた多段ギアシフト、フラッシャー(ウインカー機能や、光が左右に移動する光りモノギミックがある装備)などを備えた少年用自転車「ジュニアスポーツ車」が流行しました。
このジュニアスポーツ車は登場間もなく昭和少年の心をグッとつかみ、熱狂的なブームになります。そして、少年用自転車としては「やり過ぎ!」なほどまでに装備がどんどん過激になっていきます。「少年の期待に応えたい」──。当時の自転車メーカーはこぞってこのジュニアスポーツ車に力を入れました。
この、少年をウキウキさせた数々の装備を備えたジュニアスポーツ車は、後に「スーパーカー自転車」などと呼ばれます。フェラーリ512BB、ランボルギーニ カウンタック、ポルシェ ターボ……。当時はスーパーカーブームも真っ盛り。スーパーカー自転車は、これらのスーパーカーに憧れる少年の心とがっちり結び付き、「憧れを、ちょっとだけでも」「これならば、買える」「自分でも、乗れる、運転できる」を実現できるアイテムだったからです。当時の少年は欲しくてたまらなかったがゆえ、カタログをまくら元に置いて寝ていたという話も聞きます。
スーパーカー自転車とはそもそも何か。どのようにして生まれ、開発され、ブームとなり、そして消えたのか。スーパーカー自転車ブームを支えた1社「ナショナル自転車」で、当時実際にスーパーカー自転車の開発を担っていた「レジェンド」、森田茂さんと北山隆弘さんに話を聞きました。
「当時は戦争のようでした」──レジェンドが振り返るスーパーカー自転車ブーム
「1971年(昭和46年)からナショナル自転車の商品企画とデザイン、一部は開発や設計に関わってきました。当時は競争の連続。戦争のようでした。毎年のようにデザインや仕様を変更して、他社に勝つべくあらゆるアイデアを練り、ひり出し、盛り込んでいました」(森田さん)
当時、家電メーカー大手の松下電器産業(現パナソニック)が「ナショナル自転車」ブランドでスーパーカー自転車を製造販売していました。もちろん2018年現在もパナソニック サイクルテックがパナソニックブランドの電動アシスト自転車やスポーツ車を中心に広く展開しています(関連記事)。
ちなみにパナソニックが自転車製品を手掛けるのは、創業者の松下幸之助氏が自転車店に丁稚奉公したことが仕事の始まりで、最初の商品が自転車用のライトだったことから「初心忘れるべからず」の精神があるからなのだそうです。なお、パナソニックのロードバイクは昔も今も、ロードバイク乗りにとって憧れのブランドの1つでもあります。
パナソニックOBの森田さんは工業高校とデザイン学校で機械とデザインを学び、松下電器産業に入社。長きに渡ってナショナル自転車の企画開発を担当し、そして、数々のスーパーカー自転車を生み出したレジェンドの1人です。
「自転車は、規格化された部品を仕入れて、フレームに組み付けて完成させる製品です。既製品、外注品で組んでも形になります。しかしそれだけで他社に勝てるわけはありません。自社でアイデアを出し、それを実現する独自パーツを開発して装備していく必要もあったのです。数え切れないほど開発しましたよ。例えば、手元ボタンのワンプッシュでチェーンにオイルを注せる“チェーンオイルボックスシステム”とか。今思うと“そんなのいらんわ(笑)”となりそうな装備ですが、当時はこういうのも本気。何より少年の期待に応えたい。またオトナの事情としては2万台、3万台単位の台数を売って、金型代を償却しないと利益を生み出せません。だから毎回真剣勝負でした」(森田さん)
当時は自転車が商業用や大人だけのぜいたく品だった時代から、「子どもに買い与えるもの」としての新たな認識が広がり始めたころ。この特需を巡り、各メーカーがこぞってジュニアスポーツ車を発売しました。業界はさながら百花繚乱だったと森田さんは当時を振り返ります。ゴールドラッシュのように我先にとユーザー獲得競争が過熱していく中で、自社の商品を選んでもらうには……。こうして「各社が、毎年、主要商品をフルモデルチェンジする」勢いで、装備やデザインを追求する開発競争が過激になっていったのです。
しかし、新たな装備やデザインを盛り込むといっても、パーツの金型を新たに作るだけでも数百万円単位の開発コストが新たに掛かります。現在のクルマや自転車、PCやスマートフォンなどの工業製品と同じように、数年単位のフルモデルチェンジと年単位のマイナーチェンジを繰り返す方法で、毎年の変更はカラーリングで見た目の印象を変えたり、機能の一部を変更するのみ、といっただけでもよかったのではという声も上がりそうです。
「いや、スーパーカー自転車についてはそれでは全くダメだったんですよ。完全にモデルチェンジしないと明らかに売れませんでした。貧相なデザインや仕上げではライバルに負けてしまいます。本当に手は抜けなかったのですね」(森田さん)
関連記事
どれもこれも懐かしすぎるだろ…… Twitterハッシュタグ「インターネット老人会」で時の流れを実感する
ほんの十数年前なのに異様に懐かしい……。いま2018年ですよね? 名作Flashゲーム「艦砲射撃!」がなぜか突然アップデートされ「懐かしい!」「遊んでた!」と話題に
懐かしすぎる……!昭和テイスト満載! 木目調ボディの懐かしいラジカセがUSBやSDカード対応で登場
もちろん、カセットテープも。アルゼンチンから里帰り「昭和の赤い丸ノ内線」が公開 東京メトロ、「本線でまた走らせたい」
東京メトロが復元をほぼ完了。丸ノ内線500形、地球の裏側からお帰りなさい(厳選写真100点)。やしろあずきの調査―― 昔懐かしい「手を使った遊び」をまとめてみた
ちょっと男子! 手遊びしてないで掃除しなさいよ!昭和の駄菓子がまた1つ 「梅ジャム」が2017年末に製造終了、唯一の作り手が体力の限界で引退
1948年に紙芝居の駄菓子として生まれた、梅の花本舗の「梅ジャム」が製造終了に。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
ahamoなど新料金プランのデメリット、イエモンの告知きっかけで拡散 メールや決済に注意
子猫と暮らし始めた和菓子屋のおばあちゃん 手のひらで爆睡する無防備な姿に目を潤ませる漫画がいとおしい
【漫画】海外の友人から送られてきた謎の動画 カメラが収めた「不気味な儀式」の正体にほっこり
正体判明までおびえること約1年…… 台湾人が日本で遭遇した「謎の宗教音楽を流す車」の正体に爆笑&納得
手乗りサイズの子猫を保護 → 立派な美猫に! 成長した姿に「昔も今も天使」「すくすく育ってよかった」と反響
【なんて読む?】今日の難読漢字「雪洞」
「木村拓哉の娘だ」「マジか」 Koki, 中国のオーディション番組にゲストとして登場 スタンディングオベーションで熱烈歓迎
「分かる」「ついさっきやった」 “歳取ったと感じる瞬間”を描いた漫画にダメージを受ける読者続出
「すマッチョぐらし」「乳首まで再現すなww」 「すみっコぐらし」の和菓子、予想外の“肉体改造”を施されて話題に
柴犬「いいもの見つけたワン!」 謎の大きな物体をくわえた柴犬さん、ご機嫌で散歩する姿がかわいい
先週の総合アクセスTOP10
- 指原莉乃、すっぴんからのメイク動画が1日で100万再生を突破 「プレゼンがすごく上手くてビックリ」と高評価も続々
- お水を飲みたいカラスさんがとった行動とは……? 人間に“ある方法”でお願いするカラスが賢くてかわいい
- 菊地亜美、体調不良の原因は「赤ちゃんと同じような大きさの…」 RIZAP10キロ減から2年で襲った悲劇
- アンガ田中、「みなおか」で買わされた“高級腕時計”を披露 438万円→800万円に価値高騰で「欲しがるコレクターもたくさん」と反響
- 息子が「パパ」と言って指さしたのは……? 親子でバスに乗ったときのエピソードを描いた漫画がジワジワ面白い
- アントニオ猪木、“リハビリ中”の現在の姿を公開 激励相次ぐ「猪木さんは不死身の漢や!」「負ける訳ないやないか」
- 「綺麗で腰抜かした」「シワ少ない!!」 67歳の研ナオコ、華やかメイク動画で披露したすっぴん姿に反響
- 実家に「ねこ様元気?」と聞いた結果…… やりたい放題のお猫さまが笑ってしまうかわいさ
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- インコさんが逆さまのまま「すやぁ……」 衝撃の寝相で爆睡するインコが面白かわいい
先月の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 痩せたらこんなに変わるのか 丸山桂里奈、現役時代の姿が別人過ぎて「誰かわからん」の声殺到
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- セーラーサターンの変身シーン、四半世紀を経てアニメ初公開にネット湧く 「ついに公式が」「感謝しかない」
- 「髪型体型全て違う」 丸山桂里奈、引退直後のセルフ写真にツッコミ 4年前のスレンダーな姿に「今も輝いててかわいい」の声も
- 鳥取砂丘から古い「ファンタグレープ」の空き缶が出土 → 情報を募った結果とても貴重なものと判明 ファンタ公式も反応
- 「マジで助けてくれ」 試験中止で教授に“リスのさんすうノート”を提出することになった大学生に爆笑
- 「140秒とは思えない満足感」「なぜこれだけの傑作が埋もれているのか」 崩壊した日本を旅する“最後の動画配信者”のショートフィルムが話題
- 「化粧! 今すぐ落としてこい!」 男性教師に怒鳴られる生徒をかばう女性教師を描いた漫画に納得と感謝の声
- 畠山愛理、いま着たらピチピチなレオタードを公開 「とんでもなく可愛い」「見惚れてしまいました」と反響