これは“大人のための”コナンだ 「名探偵コナン ゼロの執行人」7つの魅力【ネタバレなし最速レビュー】

それが、お前の真実か――。

» 2018年04月13日 20時30分 公開
[赤いシャムネコねとらぼ]

 劇場版名探偵コナン最新作「ゼロの執行人」が4月13日に公開されました。シリーズ第22作目にあたる本作のキャッチコピーは「真実を暴く者 VS 正義を貫く者 魂がぶつかり合う極秘任務(シークレットミッション)ミステリー」。カギとなるキャラクターは「私立探偵・公安警察・バーボン」の3つの顔を持つ男――安室透(降谷零)です。



 僕は物心ついてからというもの、「劇場版名探偵コナンは初日に見に行く」という誓いを立てています。2018年はなんと公開日が金曜日になってしまったので、迷わず会社を休みました。労働とコナンのどちらが大事なのか? 愚問でしょう。

 東京湾の海上に作られた東京サミット会場で、突如大規模爆破事件が発生する。その犯人として捜査線に上がったのは……毛利小五郎!? コナンたちが否応なく巻き込まれていく陰謀の背後には、“トリプルフェイスの男”、安室透(降谷零)の姿があった。「今回の安室さんは敵かもしれない」。安室は敵なのか? 公安で何が起こっているのか? コナンが“正義”と対決する――。

 安室とFBI捜査官赤井秀一の因縁の関係を描いた20作目「純黒の悪夢(ナイトメア)」から2年。安室が単独で活躍するファン待望の本作は――シリアスで骨太な“異色作”かつ、劇場版コナンシリーズ随一の“大人向け”コナンでした。ネタバレなしで魅力と見どころをお伝えします。


コナンマニア・赤いシャムネコさん過去記事


見どころ1「最高のオープニング」

 絶対に見逃さないでほしいのが、オープニングの“入り”。劇場版コナンのオープニングでは「新一がコナンになるまでのいきさつ」がメインテーマのアレンジとともに流れます。例えば前作の「から紅の恋歌(ラブレター)」では和風のアレンジでした。

 本作はこのアレンジが過去最高クラスにカッコいい。あらすじの演出も、出だしのエピソードからシームレスにつながった上に、重要なモチーフである「サイバー」感のあるものになっていて「もうこれだけで1800円の元は取った」と確信してしまいます。


見どころ2「期待を裏切らない大爆発」

 劇場版コナンの醍醐味は劇場ならではの「爆発」。本作には東京サミット開催地として東京湾の新施設「エッジ・オブ・オーシャン」が登場します。オリジナルの建物が出てきた瞬間に多くのファンは「どんな爆発をするんだろう」と期待するものですが、冒頭から期待を裏切らない爆発を見せてくれます。

 しかもその爆発の演出が、少し違和感があるようなものになっています。シリーズ作の爆発を見慣れている人ほど、「今回の爆発は違うな……」と思うはず。これが手掛かりの1つでもあるので、必見です。


見どころ3「骨太な公安ストーリー」

 ストーリーの大きなカギとなっているのが、安室が所属する公安組織。中盤はかなり力を入れて警察と公安という組織を描いているので、人によっては分かりにくいと感じるかもしれません。冒頭で“大人向け”と称したのはそこが大きくて、なじみのない単語が連発されるので、寝不足の人は置いていかれるかも……。過去作「瞳の中の暗殺者」を思わせる、シリアスで重い雰囲気のもとに話が展開していきます。

 本作の脚本は櫻井武晴さん。これまで「絶海の探偵(プライベート・アイ)」「業火の向日葵」「純黒の悪夢(ナイトメア)」を担当しています。櫻井さんはドラマ「相棒」など、組織に生きる人間を描いた警察ドラマに定評のある脚本家です。ただしその強みは「絶海」「業火」では十分に発揮されたとはいえませんでしたし、「純黒」は思いっきりアクションに振っていた。本作を見て僕は「櫻井さんがずっとやりたかったコナンミステリーはこれだったんだ!」と膝を打ちました。


脚本は「純黒の悪夢(ナイトメア)」など過去3作を担当してきた櫻井武晴さん

 ただし組織ドラマをしっかり描いた代償として、「公安」という組織についてインストールされていないとストーリーを全て見失う可能性も。最初に「警察庁と警視庁は違うんだなぁ」「公安には『公安警察』と『公安検察』があるんだなあ」くらいの警察知識を覚えておくのがオススメです。


見どころ4「意外な真相、そしてインターネット」

 歴代シリーズの中でも、かなり意外な真相ではないでしょうか。非常にシンプルな話に見えるのですが、テロの真実が明らかになったときに「えっ!」と声が出そうになります。特に犯人の動機には唸らされました。堂々と目の前に「動機」が示されているのに、ミスリードが完璧に効いているから、気付く人は少ないでしょう。「まさかそこに」と思うような細かい部分にも伏線が張り巡らされているのも素晴らしい!

 また、本作は「インターネット」を扱った事件としても、見どころが多くあります。コナンは新しいテクノロジーを取り込むチャレンジをしていて、第7作目の「迷宮の十字路(クロスロード)」ですでにインターネットを使ったトリックが描かれているんです。あれから15年、犯人も僕たちもずいぶんインターネットに詳しくなったな……としみじみとしますね。


いち早くインターネットを使ったトリックが描かれた「迷宮の十字路(クロスロード)」

見どころ5「シビれるアクション」

 大規模爆破事件から始まる本作ですが、アクションシーンにも力が入っています。例えば服部平次ものならバイクアクション、怪盗キッドものなら空中アクション――その年のメインキャラクターを活かせる舞台を用意する劇場版コナンですが、今回は安室さんのアクションにとにかくシビれました。

 銃やタックルや追跡などなど、「安室さんってこんなにカッコよかったんだ……!」とあらためて確認できるようになっています。一番はシリーズ屈指の本格的なカーアクション。安室さんの、時に華麗、時に無謀なドライビングテクニックを大スクリーンで見ずに春を終えるわけにはいきません。



見どころ6「号泣の主題歌」

 エンディング主題歌は福山雅治さん書き下ろしの「零 -ZERO-」。名曲ぞろいの劇場版コナン主題歌の中でも素晴らしい出来です!

 何と言っても、歌いだしが「真実はいつもひとつ」。コナンがいつも言っているセリフですが、コナンと安室という“2つの異なる正義”がぶつかった本作の展開をなぞるように「でも正義は涙の数だけ」と続きます。僕は映画館でボロボロ泣き、拍手喝采したい気持ちを必死に抑え込んでいました……。

 エンディングの映像については、シリーズファンとしては少し文句を言いたくなるところもあるのですが、そこについては賛否が分かれるかもしれません。個人的には“いつものパターン”を崩していただきたくはなかった……!


見どころ7「安室透という男」

 最大の見どころは、やはりこの男。安室さんは今回、本当に“主役”でした。

 安室さんは「純黒」ではまさにそうでしたが、赤井との対比で語られることの多いキャラ。しかし今回は、“安室透とは何者なのか?”にとことん向き合っていましたね。全てのセリフがキマっていて、個人的には「純黒」以上にカッコよく見えました。

 彼の行動は、コナンから見ると必ずしも「正しく」ない。味方もダマすし、ウソもつくし、裏表があるし、彼の行動によって傷つく人もいる。でも安室は絶対に自分の信念――正義を曲げません。そのためにはどんな手段も使う。彼が抱いている「正義」は、コナンの正義とは形が違い、スタンスも異なる。



 アニメで前日譚として放送された「ケーキが溶けた!」は、まさにそれをストレートに表したエピソード。「なぜかケーキが溶ける」という謎に対して、事件の全貌を解き明かすことで解決しようとしたのがコナン。その一方で安室さんは、溶けても大丈夫な解決策を考えていました。同じものを見ているけれど、向き合い方が違う――という、本作をそのまま日常回にしたようなお話でした。

 とはいえ、ダークヒーローというわけでもないのがミステリアスな魅力につながっています。安室さんは手段を選ばないけれど、真実を追い求める「探偵」でもある。だからコナンとは違うけれど、分かりあえる部分もあるし、“協力者”として対等に向かい合うこともできる……。最後のセリフは「これを言ってほしかったんだよ!」と拍手せずにはいられないはずです。

 ちなみにネタバレになるので詳しくは書けませんが、本編の連載を追いかけている人には「おっ!」となるようなシーンもあるので原作ファンも必見。安室さんファンはもちろんですが、政治・警察ドラマが好きな人にも見に行ってほしい。“大人の魅力”を堪能しましょう。


(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会




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