【考察】コナンの「腕時計型麻酔銃」はいったい何を撃ち込んでいるのか?

おっちゃんは無事なのか。

» 2018年01月18日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 『名探偵コナン』の主人公・江戸川コナンは、正体を悟られることなく事件を解決に導くため、探偵の毛利小五郎を腕時計型の麻酔銃で眠らせ、蝶ネクタイ型変声機で小五郎の声に変えて推理を披露する。

 小五郎のおっちゃんは毎度のごとく麻酔銃を首に受け、フラフラと眠りにつく。幾度となく見てきたシーンだが、よく考えると小五郎が心配になる。何度も麻酔で眠ること自体身体に悪いだろうし、そもそも首に勢い良く針が刺さるのだ。

 そこで、今回はいま一度この麻酔銃に目を向けてみたいと思う。おっちゃんの身は大丈夫か?

麻酔銃の威力はどのくらい?

 コナンの持つ腕時計型麻酔銃は、麻酔針を命中させれば数秒で相手を眠らせることができる。ひと通り推理を披露してもしばらく眠っている描写があるから、麻酔が持続する時間は1〜2時間だろう。

名探偵コナンといえばこの麻酔銃。読売テレビWebサイトより

 また、手術のときに打つ麻酔と異なり、静脈に確実に流し込むことができるとは限らないから、筋肉注射でも効力をもつ麻酔薬でなければならない。

 現実では、麻酔銃は動物の捕獲用に使われることが多く(というか多分それだけ)、ケタミン(※)という麻酔薬がよく用いられる。

※ケタミンは麻薬として認定されており、取扱には免許や手続きが要る。もちろん事件の度にペチペチ撃つことはできない。

 ケタミンはコナンの麻酔銃に使えるだろうか。撃てば即座に眠る点はよいが、手術用なので麻酔としての効力が強すぎ、持続時間も短い(手術の際は継続的に薬剤を投与し続けなければいけない)。また、呼吸を抑制する副作用があるため、座って俯いた姿勢(いわゆる「眠りの小五郎」のポーズ)だと危険だ。

 また、筋肉注射に必要な薬剤の体積は、人間に用いるなら50ml。この量だと針に塗ったくらいでは足りないだろうから、注射器ごと飛ばす必要がありそうだ。腕時計に収めるには阿笠博士の手腕が問われる。

かなりダウンサイジングされている技術に驚愕

 ちなみに、ケタミンは副作用が激しく、乱用すると依存性があるとの報告もある。う〜ん……。

適切な麻酔薬とは?

 このように、動物向けの麻酔銃を流用するのはあまり望ましくない。他の方法はないだろうか。

 思うに、用いるべきは麻酔薬ではなく睡眠導入剤ではなかろうか。即効性では劣っても、一度刺せばしばらく眠ってくれるという特徴は、コナンの需要に合致する。

 マイスリー(一般名:ゾルピデム)やハルシオン(一般名:トリアゾラム)といった超短時間型の睡眠薬であれば、投与から約1時間をピークに、2〜4時間で効果が切れる

 ただし、これらの薬は副作用として健忘(記憶がなくなる)などが起きうる。小五郎がますます迷探偵に……。

 何よりの問題は、睡眠導入剤は多くが口から摂取するタイプの薬であること。このままでは麻酔銃としては使えないので、度重なる臨床実験を行い筋肉注射で効く薬を開発する必要がある。阿笠博士、頑張ったんだろうなあ。

麻酔銃の中身:まとめ

 麻酔銃に用いられる薬は次の2説のいずれかだと思われる。

  1. 麻酔薬説
    • 利点:即効性がある
    • 問題点:効果が強すぎる、推理中に目覚めてしまう可能性がある、銃で撃つには量が多い
  2. 睡眠薬説
    • 利点:程よく眠らせられる、推理中は眠っていてくれる
    • 問題点:注射薬でない

 また、銃の威力や針の構造はどうなっているのか。針を首に受けるおっちゃんが衝撃を受けている様子はないから、針はそれなりに軽いのだろう。細い針があの勢いで飛んだら結構深くまで刺さりそうだけど、首に撃って大丈夫コナンくん?

 と、ここでまた1つ、新たな仮説が誕生する。

脳振とうを起こして気絶してる可能性

 小五郎、麻酔が打ち込まれる衝撃で脳振とうになっているのでは?

 速攻で眠る(というか気絶する)し、麻酔の量も問題ではない。額を狙った時はもちろん、首筋を狙ったときでも、首が動いて脳が揺れれば大丈夫だ(大丈夫ではない)。

 どれくらいの力がかかれば脳振とうになるのか、というのは人によってまちまちだが、首の筋肉が弱いと脳が揺れて脳振とうになりやすくなる。

 原作者・青山剛昌先生いわく「麻酔銃の針は地球にやさしい素材で作られていて、後から消える」とのことだったので、素材自体の重さや硬さは期待できない。この点は射出スピードでなんとかするしかないだろう。麻酔と同じスケールだとして、50gの物体なら行けそうな気もする。

 と、力学的な難しさはあるものの、小五郎が置かれている状態を説明するには良いフィット感のように思う。麻酔ですらないけど。

 しかし、この方法にも問題点がある。継続使用すると、実は薬よりも小五郎へのダメージは大きいのだ。

脳振とうによるダメージ

 例えば、日本ラグビーフットボール協会では、一度競技中に脳振とうになった選手は3週間競技に復帰してはならないとされている。これは、短期間で複数回脳振とうになると、セカンドインパクト症候群と呼ばれる、深刻な後遺症が残る可能性が高い状態になるからだ。

 コナンくんはいまだに進級していないので、今までの事件は全て365日以内に起きているとされる。現在漫画『名探偵コナン』は1000話を超えており、かなり低めに見積もって10話に1回眠らされているとしても、小五郎が安全に(?)脳振とうを起こしているとしたら最低300週間、つまり約6年必要になる

 逆にいえば、話のペースから考えると小五郎は最低でも4日に1回は脳振とうになっているのだ。もうやめて!

脳振とう説:まとめ

  • 脳振とう説
    • (利点)即効性があり、程よく眠らせられる
    • (問題点)強い外的な力が必要、小五郎のボディがもたない

 たとえ麻酔薬であったとしても5日に1回はけっこうヤバいと思うが、脳振とうのダメージはよりダイレクトで深刻だ。首を鍛えていないことが大前提なのに、脳振とうのセカンドインパクトに耐えるというのはかなりむちゃがあった。ふつうならもう廃人である。

 軽い針に薬剤を仕込み、高速で射出して、ターゲットに当たれば特製の薬剤を流し込む……という、阿笠博士製の超テクノロジーのたまものが、この腕時計型麻酔銃ということか。真実はいつもひとつだが、それを見つけ出すのは難しいのだ。

制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  6. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  7. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/21/news005.jpg 藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」