日本初の「八丁味噌コーラ」、「岡崎味噌コーラ」に名称変更していた GIブランド問題のあおりを受け

いつの間にこんなことに。

» 2018年04月21日 12時30分 公開
[福田瑠千代ねとらぼ]

 木村飲料(静岡県島田市)が2月23日に発売した日本初の「八丁味噌コーラ」の名称が「岡崎味噌コーラ」に変更されていたことが分かりました(関連記事)。変更の理由について農林水産省と木村飲料に取材しました。

日本初の「八丁味噌コーラ」、「岡崎味噌コーラ」に名称変更していた GIブランド問題のあおりを受け日本初の「八丁味噌コーラ」、「岡崎味噌コーラ」に名称変更していた GIブランド問題のあおりを受け 中止前の八丁味噌コーラ(左)と現在流通している「岡崎味噌コーラ」(右)

ブランド論争

 今回の名称変更の背景にあるのは、八丁味噌のGI(地理的表示)保護制度を巡るブランド論争。GI保護制度とは、地域と結びついた産品の名称を知的財産として登録し、保護する制度です。

 昨年(2017年)12月、愛知県全域の生産者が加盟する「愛知県味噌溜醤油(たまりしょうゆ)工業協同組合」の申請した“八丁味噌”がGIとして登録されました。一方、より伝統的な製法を重んじ、より厳しい基準を求めていた岡崎市八丁町の2社「まるや八丁味噌」「カクキュー」からなる「八丁味噌協同組合」の申請は採用されず、本場の八丁味噌がGI登録を受けられないという逆転現象が発生していました。「八丁味噌コーラ」で使用された八丁味噌は、GIが認められなかった「まるや八丁味噌」のもの。

日本初の「八丁味噌コーラ」、「岡崎味噌コーラ」に名称変更していた GIブランド問題のあおりを受け 「まるや八丁味噌」はより伝統的な手順を重んじている

 GI登録を退けられた2社ですが、GIマークの使用はできないものの、国内流通分の商品ではこれからも問題なく“八丁味噌”の名称が使用可能です。ただし海外への輸出時に一部制限を受ける可能性があります。

 農水省は除外された2社の基準は県組合の基準を満たすものであり、今の基準のまま再申請をすればGI登録が可能という立場を明かしています。しかし老舗2社は納得せず、主張は平行線をたどっています。


なぜ「八丁味噌コーラ」がNGなのか

 なぜ「まるや八丁味噌」社は“八丁味噌”の名称を継続使用できるのに、同じ「まるや八丁味噌」社製の味噌を使ったコーラが「八丁味噌コーラ」を名乗ってはいけないのでしょうか?

 農水省担当課によると、「まるや八丁味噌」社が引き続き“八丁味噌”の名称を使えるのは、GI登録される以前から販売している商品に同じ名称を使用しているため。一方、「八丁味噌コーラ」は“八丁味噌”がGI登録された後に発売された商品であるため、登録産品(県組合の八丁味噌)を使用していないことになり、GI名称としての“八丁味噌”は使えなくなるとのこと(※)

※ただし「まるや八丁味噌」社が権利を有している商標は使うことはできる。実際、よく見ると「岡崎味噌コーラ」の新ラベルには「まるや八丁味噌社の味噌使用」と書かれている。

日本初の「八丁味噌コーラ」、「岡崎味噌コーラ」に名称変更していた GIブランド問題のあおりを受け GI登録以前から名称を使用していた場合は“先使用”が認められ規制対象にならないため、「まるや八丁味噌」社が“まるや八丁味噌”を売るのはOK。画像の「ケース10」に当てはまる(農林水産省の資料より

 つまり、県組合の八丁味噌を使っていれば「八丁味噌コーラ」を名乗れるのに、県組合に属さずGI登録を受けていない老舗2社の八丁味噌を使用した場合、「八丁味噌コーラ」は名乗れないということになります。

日本初の「八丁味噌コーラ」、「岡崎味噌コーラ」に名称変更していた GIブランド問題のあおりを受け 木村飲料が「まるや八丁味噌」社の味噌を使ったコーラを製造した場合、登録産品を使用していないと見なされ、画像の「ケース4」に分類される(農林水産省の資料より

 木村飲料によると、2月末ごろに違反状態にあることを認識し、即座に出荷を停止。その後順次「岡崎味噌コーラ」の新名称で製造・出荷していたとのこと。担当者は「今後は『岡崎味噌コーラ』の商品名で、本場の味を感じてもらえれば」と語りました。

 本物の八丁味噌を使っているのに、(追加登録しない限り)“八丁味噌”を名乗れないという奇妙な状態。こうした前例があると、今後“八丁味噌”を使った商品を展開したい企業が老舗2社を避けるようになってしまう可能性も考えられます。

 地元岡崎市議会は政府や農水省に対し、利害者の合意形成が行われる前に登録公示がされたことは遺憾であり、「利害者の合意形成について、指導・調整されるよう強く要望する」との意見書を3月に提出しています。

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