「応援なんて誰にでもできる」という正論に、プリキュアはどう立ち向かったのか? 「HUGっと!プリキュア」開始3カ月を振り返るサラリーマン、プリキュアを語る(2/3 ページ)

» 2018年04月26日 18時00分 公開
[kasumiねとらぼ]

2:敵組織クライアス社が社会人の心に刺さる

 「HUGっと!プリキュア」が大人を引き付ける魅力の1つに、プリキュアの敵「クライアス社」があります。

 クライアス社は「会社組織」なのですが、劇中で使用する単語が「会社用語」連発で、一緒に見ているお父さん、お母さんの心に刺さります。

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート クライアス社のアルバイト、ルールー

 毎週のように、

「稟議承認」
「発注」
「始末書もの」
「報・連・相(ホウ・レン・ソウ)」
「有給」
「休日出勤」

などの単語が飛び交い、日曜日の朝のTwitterなどのトレンドワードにトレンド入りし、ニチアサ事情を知らない人を驚かせています。

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート クライアス社の課長、パップルさん

 会社組織の描写は、日本経済新聞社の日経MJで取り上げられもしました。

HUGっと!プリキュア 日本経済新聞社 日経MJ プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート 筆者所蔵の日経MJ

 そして「プリキュアの未来」を阻むものが「会社組織」である、というのも、今作の面白い点です。

 プリキュアの敵に会社組織が選ばれるのは「Yes!プリキュア5」以来なのですが、子どもの目には「会社」はお父さんお母さんを奪う「悪者」に映っているのかもしれませんね。

 「子どもの未来を奪うのは、ブラック企業である」という観点で、「規律の象徴」でもある「会社組織」に対し「なんでもできる、なんでもなれる」と自由を説くプリキュアがどう立ち向かうのか?

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート YouTuberに転職したチャラリート

 1クール目では、敵幹部、チャラい格好の係長「チャラリート」さんがプリキュアに敗れました。しかしその後、チャラリートさんは第12話で「YouTuber」になった様子が描かれ「プリキュアによって、ブラック企業から解放され、自分の適性のあった仕事に就く未来」が描かれました。

 今作のプリキュアが「なんでもできる、なんでもなれる」をキーワードにしている以上、大人もやり直しがきく、「大人だって、なんでもできる、なんでもなれる未来」を描いてくことは本当に素晴らしいと思います。


3:「応援することの意味」を問い続ける、深いストーリー

 そして、個人的に今年のプリキュアが一番「すごい」と感じたのは、放送からわずか3カ月の間で、物語の根幹をなす「応援」の意味を問うたことです。

 「HUGっと!プリキュア」の主人公、野乃はなちゃんは「超イケてるお姉さんになりたい」という漠然とした夢を持っています。またキュアエールという応援のプリキュアでもあり1話の時点からずっと他人を応援し続けてきました。

 1話で「フレフレ!お母さん」で始まったその応援も、この3カ月間の間に、子ども向けアニメとしてはやや重めの言葉をたくさん投げかけられてきました。

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート 「応援なんて誰にでもできる」と野乃はなに問うアンリ君

 いわく、

・「十分頑張っとるやつに、頑張れ言うのは酷」(5話)

・「応援なんて誰にでもできる」(8話)

・「頑張れなんて言わなくても、ほまれは、頑張るよ」(8話)

・「その無責任な応援が彼女の重荷になっているんだよ」(8話)

「頑張れ」という言葉の否定です。

 そのたびに、はなちゃんは落ち込み、応援することの意味を自問自答し続けます。

 「私には何もない」

 「どうして私は何も持っていないんだろう」


HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート 変身できなくなるまでに追い詰められた野乃はな

 はなちゃんは「何もない」「何もできない」ことに悩み続けます。

 例年のプリキュアシリーズにおいても、こういった主人公が内面を問われて落ち込み、立ち直り成長する、といった描写は数多く見られますが、今作はそのペースが速く、他シリーズのプリキュアたちが1年かけてたどり着くレベルの出来事をわずかこの3カ月で経験しているように感じます。

 そして「応援なんて誰にでもできる」「無責任な応援が重荷になる」といった正論に、プリキュアは、野乃はなちゃんは、どの様な結論を出したのでしょうか?

 象徴するエピソードがあります。

 プリキュアに変身できなくなるまでに落ち込んでいるはなちゃんに、お母さんが声をかけ、抱きしめて言うのです。

 「ただ、生まれてきたことがうれしい」「はなの笑顔を見ているだけで幸せ」、と。

 これは存在を認める「共感」の言葉です。それをきっかけに、はなちゃんは立ち直り始めます。

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート 「ただ、あなたがいてくれるだけで、うれしい」という共感

 そう。はなちゃんは、母親からの「アドバイス」ではなく「共感」により復活するのです。

 その後、さあやとほまれにも「大好き」と言われ、「存在を認められた」はなは完全復活を果たします。

 そして異形化したチャラリートとの闘いの中で、プリキュアの新しい武器が「剣の形」となってキュアエールたちのもとに来たときには、

「必要なのは『剣』じゃない」と、楽器に形を変えたスティックで、「応援」するのです。

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート メロディソードは剣ではなく、ハーモニーを奏でる楽器

 剣で排除するのではなく、相手に寄り添い、思いを受け止めるための「応援」をするのです。

 相手のことを考えず、「自分のために」他人を応援するのではなく、

「私はあなたを認めています。そばにいます」

それを伝えるために、はなちゃんは「応援」をするのです。

HUGっと!プリキュア 東映 プリキュア 野乃はな キュアエール 薬師寺さあや キュアアンジュ 輝木ほまれ キュアエトワール クライアス社 チャラリート 応援する野乃はな

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/11/news012.jpg 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. /nl/articles/2502/15/news032.jpg 163センチ、63キロの女性が「武器はメイクしかない」と本気でメイクしたら…… 驚きの仕上がりに「やっば、、」「綺麗って声でた」
  3. /nl/articles/2502/16/news086.jpg 年の差21歳で「夫は娘の同級生」 “両親大激怒”で結婚は猛反発されるも……“まさかの行動”で説得
  4. /nl/articles/2502/16/news005.jpg 1歳双子の姉が退院日、妹と再会する“瞬間”が「涙出ちゃった」と大反響 あれから約9カ月後……現在を聞いた
  5. /nl/articles/2502/15/news002.jpg 山で発見したサワガニ、「どうやって生きてきた!?」と目を疑う状態で…… 連れ帰った後の“驚きの行動”に「泣いた」「これは目が離せない」
  6. /nl/articles/2502/16/news039.jpg スーパーで買ったロブスターを、アワビと一緒に育てたら…… 「スゴすぎ」“予想外の展開”が150万再生「感動しました」
  7. /nl/articles/2502/14/news121.jpg 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  8. /nl/articles/2502/16/news009.jpg 「これすごい」 飛行機のエコノミークラスに搭乗→“まさかの機内食”に思わず二度見 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2502/16/news050.jpg 穴が開いたユニクロのカシミヤニットを“いったん解いて”リメイクしたら…… 息をのむほどの仕上がりへ「びっくりした!」「人間ってすげーな」
  10. /nl/articles/2502/14/news033.jpg コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  2. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  3. 14歳のとき、親友の兄と付き合うことになった女性→13年後…… “まさかの結末”に「韓国ドラマみたい」【海外】
  4. リンゴを1年間、水の中で放置→顕微鏡で見てみたら…… 衝撃の実験結果に「これはすごい」「息をのみました」【海外】
  5. 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
  6. “駐車場2台分”の土地に、建築家の夫が家を建てたら…… “とんでもない空間”に驚き「すごい。流行る」
  7. 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」
  8. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
  9. ズボラ母が5人分サンドイッチを爆速で作ったら…… 目からウロコの時短テクと美しい仕上がりに「信じられない」
  10. 【今日の計算】「7−2×0+9」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議