ピカソの絵が何百億円もするのってなんでなの?【芸大生が5分で解説】
「自分にも描けそう」なんて思っている人も多いのでは?
世の中に芸術家と呼ばれる人はたくさんいますが、「天才芸術家」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはきっとパブロ・ピカソでしょう。
「ゲルニカ」など数多くの名画を描き、今に至るまで絶大な評価を得ているピカソですが、その絵のいくつかは「わけが分からない」と評されることがあります。また、子供にも描けそうな絵といわれたりもします。
少し前には、「ピカソより普通にラッセンが好き」というお笑い芸人のネタもありました。確かに誰が見てもきれいで分かりやすいラッセンのイルカの絵に比べて、ピカソを普通に好きになれる要素を見つけるのは難しいかもしれません。
ではそんなピカソが教科書に載るような巨匠として扱われ、ここまですごいといわれているのはなぜなのでしょうか。
圧倒的な技術力
まず、ピカソの絵が「良い」か「悪い」かはさておき、「うまい」絵であったことは確かです。
この絵は「科学と慈愛」という題で、ピカソがわずか15歳の時に書き上げた大作です。この時点で類稀なる画力を身につけていたことが分かります。
ピカソの父親であるホセは美術教師であり、ピカソが幼い時から厳しいデッサン教育を施しました。そうして少年時代に培われた、絵を描く上での圧倒的な「画力」がピカソの絵を支えているといえます。
後年にはそれこそ「子供が描いたような」とても写実的とはいえない絵を多く残したピカソですが、そのような絵も土台にはこの画力があり、とても誰でも描けるような線ではないのです。
新しい絵画を切り開いた
ピカソといえば、ジョルジュ・ブラックと共に「キュビスム」という絵画様式を生み出したことで知られています。
キュビスムとは人や自然の立体的な風景を全て複数の視点から見た幾何学的な形で捉え、平面にそのまま表す様式です。描かれているそれぞれの構成要素が立方体(キューブ)のように見えることからキュビスムと呼ばれています。
私たちは普段、ものを1つの視点からしか見ることができません。例えばサイコロのある1つの面を見るときには、その反対側の面を見ることはできないようにです。しかしキュビスムでは全ての面を同時に描くことで、見る側の視点を超えた物や人の本質に迫ろうとしました。ピカソは現実をただ模倣するだけの絵画をやめることで、より「純粋な絵画」を目指したのです。
つまり目に見えるものをあらゆる角度から分析することで、3次元の物体をそのまま2次元に展開しようとする試みがキュビスムなのです。
一見奇抜ともいえるこのキュビスムがなぜこんなにも評価されたのかといえば、それはキュビスムが旧来の遠近法に縛られた絵画を破壊し、全く新しい道を切り開いたからです。
目に見えるものをそのままではなく幾何学的な形として捉えるというのはピカソに始まったことではなく、「近代絵画の父」とも呼ばれるポール・セザンヌが編み出した手法です。
しかしピカソはそのセザンヌの手法を極限まで推し進め、自然の単なる捉え方にとどまらず画面全体を覆うような平面での立体表現を生み出してしまったのです。
ピカソは初期の「青の時代」や「ばら色の時代」から後期のシュルレアリスム(超現実主義)的な作品を描く時代など、その生涯で幅広いジャンルの絵画に取り組みました。彼が制作した作品数は15万点にものぼり、「最も多作な芸術家」としてギネスブックにも記録されています。
抽象絵画で有名なアメリカの画家ジャクソン・ポロックは、ピカソの画集を床に投げつけ「ピカソが全部やっちまった!」と叫んだという逸話が残っています。
それほどまでにその人生で絵についてやりつくし、描くことを極め切ったのがピカソなのです。
ピカソというスター
たとえピカソの技術がいかに優れ、どれほど革新的であったとしても、その作品に何百億もの値段がつくのはおかしいと思う人も多いのではないでしょうか。
ここで気を付けなければならないのは、作品の価格=作品の価値では必ずしもないということです。
ピカソが活躍したのは20世紀初頭のことで、ちょうどオークション市場が活性化し、「アートがビジネスとして」見られるようになった時代でもありました。
そこで時代の最先端を走り新しい絵画をひっさげ登場したピカソは、まさに市場にとって待望の存在。多くの投資家やコレクター達に次々と作品が買われていきました。このある意味バブルともいえる状態で、ピカソの絵の値段は跳ね上がっていくこととなります。
こうした背景もあり、ピカソはゴッホのように貧しい中で絵にしがみついていたような画家ではなく、比較的裕福な中で制作に没頭することのできた芸術家となりました。キュビスムを象徴する作品である「アヴィニョンの娘達」も、生活への心配がない中で売れるかどうかを考えず、純粋に表現を突き詰めることができたために生まれた作品でした。
芸術を追い求めるピカソと、その作品を望むマーケット、更には新たな美術を確かなものにしようとする美術館が一体となって作り上げたのがピカソというスターなのです。
まとめ
生涯作品を作り続け、また多くの愛人とのスキャンダルでも知られるピカソはまさに今の「芸術家」のイメージを作り上げた張本人です。
確かにピカソの絵はよく分からないものばかりかもしれませんが、そこには確かな表現と美術としての大きな意味があります。
それを踏まえると、「普通にピカソが好き」と少しでも思えるようになるのかもしれません。
参考文献
『ピカソは本当に偉いのか? 』西岡文彦(新潮新書)
See Lee Krasner Pollock, “An Interview with Lee Krasner Pollock by B.H.Friedman,”in Jackson Pollock:Black and white, exh. cat. (New York: Marlborough-Gerson Gallery,1969)
関連記事
「40−32÷2=?」この問題、解けますか?
理系にはすぐ解けて、文系には解けない、とんち問答のような問題がネットで話題に。21年前のワープロ「書院」で2018年にインターネットをしたら、無間地獄に突入した
ネット機能を搭載した21年前のワープロで、2018年のネットの世界を見てみました。これ12歳が解けるの!? 超難関「灘中学」の入試問題「初日の出を2回見るには?」を解いてみた
あなたは最強小学生に勝てるか?「16×4は?」「68−4だから64」 小学1年生の掛け算の計算方法が斬新だと話題に
発想が見事。「カニミソ」はカニの何なのか?
カニミソって何だ? 脳ミソか? 僕は何を食べようとしているのだ?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
鮮魚店で瀕死の“巨大ガニ”を購入→家に連れて帰り、お風呂場に放ってみると…… まさかの展開に「こわっww」と800万表示
雑草ボーボーの荒れ地に“牛3頭”を放牧→2週間後…… まさかの光景に「感動しました」「いい仕事してますねぇ〜!!」
5歳のときにトレーニングを始めた女の子→3年後…… 現在の姿が「ハハハすごすぎる」「めちゃくちゃ尊敬」と250万再生【海外】
古いタオルを手で裂いていくだけで→「すごい…」「意外!」便利アイテムに! 生活の質“爆上がり”アイデアが話題
「夢見たディスプレイ」空中浮遊するガンダムのプラモデル、その仕組みは…… “122時間”かけて作った超大作が40万再生「マジで感激」
海外で暮らすパパとビデオ通話中、1歳娘がとったけなげな“行動” 大反響から約1年後……家族の現在を聞いた
←夫に出すやつ 自分で食べるやつ→ 目を疑うレベルの“落差”に爆笑「わ〜おw」「なんかとんでもないのいた」
妻「“157センチ、43キロが理想”と言う夫に、かわいいと言われたい」→プロに依頼したら…… 「エグッ!」「黒木瞳さんかと」
伸び放題になった実家の庭木→50代女性が2日間どんどん切ったら…… “見違える光景”に「さすがですね!」「明日は我が身」
最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
- パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
- 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
- 14歳のとき、親友の兄と付き合うことになった女性→13年後…… “まさかの結末”に「韓国ドラマみたい」【海外】
- リンゴを1年間、水の中で放置→顕微鏡で見てみたら…… 衝撃の実験結果に「これはすごい」「息をのみました」【海外】
- 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
- “駐車場2台分”の土地に、建築家の夫が家を建てたら…… “とんでもない空間”に驚き「すごい。流行る」
- 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」
- 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
- ズボラ母が5人分サンドイッチを爆速で作ったら…… 目からウロコの時短テクと美しい仕上がりに「信じられない」
- 【今日の計算】「7−2×0+9」を計算せよ
- ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
- 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
- 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議