ドラマ「高嶺の花」出演の「銀杏BOYZ」峯田和伸、ファンを熱狂させるバンドマンが役者をやる理由とは
汗だくになって歌っていた「銀杏BOYZ」峯田和伸は変わってしまったのか。
女優の石原さとみさんとロックバンド「銀杏BOYZ」の峯田和伸さんが出演する日本テレビ系の水曜ドラマ「高嶺の花」が7月11日22時からスタートします。
「101回目のプロポーズ」や「高校教師」などで知られる野島伸司さんの脚本で、石原さん演じる華道の家元・月島ももと、峯田さん演じる商店街の自転車店を営む風間直人との“格差恋愛”が描かれます。
今作が民放連続ドラマ初レギュラー出演となる峯田さんは、今でこそ役者として活躍する姿が多く見られますが、本業は「銀杏BOYZ」のボーカルでバンドマン。真っ直ぐな歌詞や魂の叫びのような歌声などが人気を博し、2017年10月には初の武道館ライブ「日本の銀杏好きの集まり」を行い、1万人超を熱狂させました。そんな峯田さんに、なぜ役者を続けるのか、“演じる”ことについて話を聞きました。
歌はドラマの世界観を引き締める
―― いよいよドラマが放送となりますね。演技で気をつけたことや役作りなどはされましたか?
峯田和伸(以下、峯田) 考えると怖くなっちゃうので、あまり気にしないようにしています。役作りで意識したのは、普段猫背でいるとかパキッとしないとか、そのくらい。こういう風な人格をつくろうというよりは、姿勢を悪くとか、そういう感じ。
―― 確かにすごく猫背です(笑)。峯田さんが演じる役にとって、石原さんは“高嶺の花”な存在ですが、峯田さんにとって高嶺の花のような存在はいますか?
峯田 ビートルズとかですね。
―― ビートルズ! NHK連続テレビ小説「ひよっこ」ではビートルズが大好きな役でしたね。思い出しました。そういえば今作の主題歌はエルヴィス・プレスリーの「ラヴ・ミー・テンダー」ですね。
峯田 野島さんのドラマは、高校時代に見た「未成年」「人間失格」「聖者の行進」で流れていたサイモン&ガーファンクルや森田童子さんとか、今その歌を聴いても当時がよみがえってくるような感覚になる歌が多いので楽しみにしてたんです。
それで、撮影が始まる直前にプロデューサーから「峯田くん、主題歌誰か分かる? 想像してみて」って言われて、知ったときはうわ〜って、もう本当に拍手しました。
僕、歌がドラマの世界観を引き締めると思うんです。だからエルヴィスの声とギターでしっとり奏でる「ラヴ・ミー・テンダー」は、いい選曲だと思いました。
バンドマンが役者として演じ続ける理由とは
―― 最近は役者としての活躍も目立ちますよね。きっかけは何だったのでしょうか?
峯田 僕、2003年にGOING STEADYというバンドを解散したんです。でも音楽はやり続けたくて、新しいバンド名「銀杏BOYZ」を考えてたときに、田口トモロヲって人から連絡があったんです。「アイデン&ティティ」というバンドマンの映画を撮りたいから、俳優じゃなくて実際にバンドをやっている人にお願いしたいと。それまで演技をやってみようと思ったことはなかったんですけど、自分のバンドが解散したこのタイミングでこういう話がくるのは、やれってことなのかなというか、そのときの状況も含めてやろうと思えたんです。直感みたいなもんで。
だから、僕の中では「アイデン&ティティ」だけで終わりでよかったんです。演技を続けていこうとは思ってなくて、これっきりだなって。自分から率先して役者をやりたいという気持ちはなかったんです。
―― それでも役者を続けている理由とは?
峯田 一緒にやりたいと言ってくれる人がいたからですかね。自分では自分の役者の良さは分からないんですけど、「アイデン&ティティ」の後も田口さんや脚本を務めた宮藤官九郎さんが声をかけてくれたりとか、自分を客観的に見てくれる人がいるのはうれしいですね。
でも音楽業とのスケジュールの兼ね合いなどでお断りすることも多くて。その中で、今回「高嶺の花」の役を引き受けた理由ははっきりしていて、大好きな野島さんの作品に僕がどうなじむのか、その世界の中で自分がどう動くのかなと思ったのと、石原さんの存在です。
石原さんは色で例えると、僕とは違う真っ赤な人で、そういう正反対の色同士が画面の中で混じり合ったらどんな化学反応が起こるのか楽しみだったのでやるべきだなと思いました。
―― 実際に石原さんと一緒に撮影してみてどうでしたか?
峯田 やっぱり僕とはまるっきり違う人でした。僕はこんな感じでボソボソ話すのに対して、はっきりしていて、思ったこともちゃんと伝えてくれる。全然違うタイプの人ですね。
―― 「アイデン&ティティ」に始まり、さまざまな作品に出演されてきましたが、峯田さん自身のスタンスや考えに変化はありましたか?
峯田 できるだけ変わらないでいたいと思っています。僕はお芝居をやって売れたいという気持ちはないですけど、最初に出演した「アイデン&ティティ」で感じたことなどを忘れずにいたいとは思います。
音楽はそうじゃないですけどね。ちゃんとやりたいし、売れたらいいなとか思います。だからお芝居の現場に入っても、いかに自分の音楽に跳ね返ってくるか、影響を与えられるかを考えていますね。
―― これまでにはどんな影響がありましたか?
峯田 さっきも話に出ましたが、2017年に「ひよっこ」でビートルズが大好きなおっさんを演じたときに、役作りでビートルズばっかり聴いていたんですけど、ちょうどそのときに銀杏BOYZのシングルのレコーディングもしていて、影響が出ていたと思います。ビートルズっぽい曲になったというか。
―― その時期だと3カ月連続でリリースしたシングル「エンジェルベイビー」「骨」「恋は永遠」あたりですかね。
峯田 そうやって生活から生まれてくるものを素直に作品として出せたので、今作の「高嶺の花」で得た感動とか刺激は自分の音楽にも反映されると思うんですよね。
―― 峯田さんの本業を役者と認識している人も多いと思います。そのギャップに違和感を覚える「銀杏BOYZ」のファンもいると思いますが、峯田さんの中でギャップなど感じていますか?
峯田 どうでしょう。例えば彼氏彼女と会うときと親と会うときって違うじゃないですか。たぶんそういうすみ分けだと思います。自分の中に小っちゃい峯田和伸が100人ぐらいいるとして、その中の1人ではあることは間違いないですね。
―― バンドマンの峯田さんから見た役者の峯田さんはどのように写っていますか?
峯田 音楽をやっているときは、感性をむき出しにして、野生を出すというコンセプトが僕と銀杏BOYZの中にあるんですけど、役者の世界は全く違って、役を演じなければいけない。ちゃんとしなきゃなって思います。
たぶんギターを持って歌っているときの自分が今の僕を見たら、「だっせー」って思うと思うんですけど、役を演じているときも歌を歌っているときのように信念があるんです。そういうせめぎ合いが僕の中にあると思います。
―― 峯田さんの中ではバンドマンとして歌っているときも役者として演技をしているときも変わらないんですね。では、最後に、ドラマを楽しみにしている視聴者に向けて何か一言いただけますか。
峯田 ストーリーとしては、大したとりえもなく下町のしがない自転車屋さんで39年間恋愛もせずじっとり生きてきた男がひょんなことからものすごいお姫様を見つけちゃうシンデレラストーリーかと思いきや、複雑な関係性だったりして、単純には進んでいかないと思います。これがこうなるの? っていう展開が1話の中盤からものすごい勢いで広がっていくので。台本を読んでいても、野島さんやっぱすげえなあって、あらためて思ったくらい。
僕まだ6話までしか台本もらってないんですけど、どうしていったらいいのか分からないですね。不安でもあるんですけど、見る方からすると見応えのある重厚なドラマになっていると思うので、心して見てほしいというか、楽しみにしていてほしいです。この人こういう感じになっていくんだとか、この人が実はこの人とくっついてたんだっていう驚きがたくさんあると思います。純愛エンターテインメントっていうコピーはありますけど、ものすごいサスペンスがあって、びっくりすると思います。ぜひ楽しんでほしいです。
(撮影:こた)
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