ついに解禁「液体ミルク」 知っておきたい7つのポイントまとめ
どういう商品? 安全性は平気? 常温で大丈夫なの?
8月8日、乳児用液体ミルク(液体ミルク)の製造・販売がついに解禁となりました。調乳に5分ほどかかる粉ミルクと異なり、すぐに赤ちゃんに与えられる液体ミルクは、育児の負担軽減や家族の育児参加、震災など非常時での育児サポート効果などが期待されています。
でも、液体ミルクって具体的にどんなもの? 名前は聞いたことはあっても、どういうものなのか分からない……。8月7日に行われた液体ミルクセミナーで勉強してきました。
液体ミルクとは?
粉ミルクと同様の成分で、新生児から飲ませることができます。調乳済みのミルクが液体になっており、お湯や水に溶かしたり薄めたりする必要はありません。あたためることなく赤ちゃんに与えられるため、授乳まで約5秒で準備が完了します。常温保存可能で、開封前なら半年〜1年ほどの保存期間があります。
どういう商品なの?
1970年代から液体ミルクの普及が進んでいる欧米では、缶、レトルトパウチ、紙パックなどの商品が発売されています。中でも多いのは紙パック。哺乳瓶に内容を移し替えるタイプや、吸い口を容器に付けるタイプなどがあります。価格は200ミリリットルで120〜130円ほど(フィンランドの場合)。粉ミルクよりは割高になります。
安全面は大丈夫なの?
液体ミルクは、無菌で容器に充填されます。2018年に厚生労働省に提出されたデータでは、缶、レトルトパウチ、紙パックいずれにおいても、一般細菌、大腸菌、サルモネラ菌などは保存期間中「陰性」の結果が出ており、安全性は保証されています。また、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルなど諸成分の減少も「許容範囲内」とのこと。
もちろんあくまでも開封前についての結果ですので、「飲み残しは飲まない」などの注意は必要です。
赤ちゃんに常温で飲ませて大丈夫?
粉ミルクのパッケージには、「人肌程度の温度で飲ませること」という記載があります。「常温で飲ませていいのか?」「あたためなくてもいいのか?」と気になりますよね。
順天堂大学大学院医学研究科の清水俊明教授によると、「常温の液体でも、特に消化機能に問題はありません。人肌の方が消化吸収がよくなるというデータもありません。常温でも赤ちゃんにとっての影響はないと考えられます」。えっ、人肌じゃなくてもよかったんだ!
粉ミルクが「人肌で」と記載されているのは、粉ミルクはある程度の温度でなければ溶けないものの、そのまま飲ませると赤ちゃんがやけどしてしまうから。つまり「人肌(飲んでもやけどしない)程度まで冷ませばOK」ということだったのだそうです。「ちょっと温かくないとダメだ」と誤解していました……。
どんなことが期待できる?
液体ミルクが普及することで、(1)災害時の母乳代替品としての備蓄、(2)男性の育児参加を促進、(3)海外からの旅行者への対応――が期待できるといわれています。
中でも注目は「男性の育児参加」。6歳未満の子を持つ夫婦の1日あたりの家事・育児関連時間は、妻の7時間34分に対して夫は1時間23分(2016年調査)。欧米や米国と比べると、女性に家事・育児負担が集中しています。粉ミルクよりも手間がかからない液体ミルクが普及することで、「授乳はお母さんにお任せ」というワンオペ状態から脱却する道が見えるかもしれません。
お父さん以外の家族(祖父母、おじおばなど)の育児参加効果もありそうです。粉ミルクの調乳は、慣れていないともたつき、泣いている赤ちゃんに焦ってさらに時間がかかります(記者がかつて0歳のおいを預かったとき、今までにないレベルのどんくささを発揮しました)。慣れていない人にとっても、液体ミルクでの授乳は心理的ハードルを下げる効果があるかも。
もちろん、お母さんが使う場合にも負担を減らす効果が見込まれそうです。外出時、体調不良の時、外出する直前など急いでいる時には、準備の手間が少ない液体ミルクが活躍するはずです。
いつごろ発売されるの?
日本ではこれから製品開発が進められるため、発売時期や発売形式は未定です。厚生労働省の加藤大臣は「生産ラインやサンプルづくり、安全性の調査、厚労省の確認・承認などが必要になるため、一定程度の期間は必要になってくる」とコメントしており、購入できるようになるまでにはもう少し時間がかかりそうです。
なお、江崎グリコの広報担当者によると「現在は、発売自体を検討している段階です。規格基準や製造環境を勘案して、しかるべきタイミングで発表するようにいたします」といいます。さまざまな企業がさまざまな商品を作った方が、消費者としては選択肢が増えてうれしいもの。多くの企業の参入に期待ですね!
なぜこれまで普及が進まなかったの?
日本では「食品衛生法」「健康増進法」において、液体ミルクの製造・販売は認められていませんでした。2009年に日本乳業協会が液体ミルクの規格基準設定を厚生労働大臣に要望したものの、事業者団体に検討に必要なデータ提供を求める段階でストップしていました。
そんな中、2011年の東日本大震災や、2016年の熊本地震で、液体ミルクの必要性を訴える声が数多く上がりました。熊本地震では実際にフィンランドの企業が液体ミルクを支援する一幕もあり、注目度が上昇。
2017年には政府の「女性活躍加速のための重点方針」に液体ミルクの普及が明記され、制度改正に向けた動きが加速しました。さらにオリンピックで家族連れの訪日外国人が増えるであろうことも法改正を後押ししたといいます。諸外国よりも遅れての普及には複雑な思いもありますが、まずは解禁を祝したいところです。
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