現代は“社会人のヒゲ”もアリな時代? 大阪市営地下鉄「ひげ禁止訴訟」に、ネット上の反応は9割が否定的
大阪市に賠償命令が下された訴訟。
大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)の運転士らが「ヒゲを生やして勤務したことを理由に、人事評価を不当に下げられた」として訴訟。大阪市には44万円の賠償命令が下された―― 「ひげ禁止訴訟」と呼ばれるこの裁判、ネット上では「なんだこの判決。控訴する」と真っ向から否定した同市市長・吉村洋文氏のツイートも話題を集めました。
「ヒゲを生やして人事評価マイナス」に、ネット状の反応は?
SNS上の反応を解析できるSocial InsightでTwitterユーザーの反応を調べたところ、90.9%が人事評価を不当に下げられたことに対してネガティブな反応という結果に。
ちなみに、報道によると、該当の従業員らは運転手で、ヒゲを生やして10年以上勤務。橋下徹市長時代に、ヒゲを生やすことが禁止されたものの、そらなかったため、人事評価を下げられるなどしたとのこと。大阪市営地下鉄は2018年に民営化されており、業務を引き継いだ大阪メトロでは“ヒゲ禁止”のルールはなくなっているそうです。
ネガティブな意見
ポジティブな意見
歴史的に見ると、ヒゲはOK? それともNG?
確かに、現代社会には「ヒゲを生やすのは、社会人としてふさわしくない」という考え方があります。ですが、日本では“これまで常に”ヒゲが不適切なものとして扱われていたのでしょうか。
歴史をたどると、戦国時代には「ヒゲ=威厳を示すもの」として、武士などが競うように生やしていたとか。そのため、体毛が薄かった豊臣秀吉は付け髭をしていた、という逸話を聞いたことがある人も少なくないはず。しかし、江戸時代になると、幕府が禁止令を出したことなどから、ヒゲをそるのが一般的になったといわれています。
ところが、幕末に海外の文化が伝わると、状況は一転。渡来した外国人の姿から「ヒゲ」と近代的な文明のイメージが結び付き、再びヒゲ文化が広がりだし、当時の明治天皇の御真影を見ても、かなり立派なヒゲを蓄えていた時期があることが確認できます。
そして、大正に入ると「モダンガール」「モダンボーイ」と呼ばれる新しい流行により、またまたヒゲは忌避される存在に。その後も、 軍国主義が台頭するとヒゲが権威の象徴として好まれ、戦後の経済成長期になると、ヒゲはそるものとされ……といった具合。二転三転しており、「歴史的に正しいヒゲの在り方」というものを考えるのはかなり難しそうです。
現代はヒゲがアリなのか、ナシなのか
では、現代は社会人の身だしなみとして「ヒゲがアリな時代」「ナシな時代」のどちらなのでしょうか。
大阪市営地下鉄の「ひげ禁止訴訟」と似た事例としては、2010年に判決が下された「郵政事業(身だしなみ基準)事件」が挙げられます。ひげ、長髪を生やした男性従業員が「身だしなみのルールに反する」と、賃金カット、マイナスの人事評価などを受けたもの。
神戸地裁はルールの必要性を認めつつも、全面的にひげ、長髪を禁止するのは過度の制限で、「顧客に不快感を与えるようなひげ、長髪はNG」と限定すべきと判断。該当の従業員のひげや髪は、その「顧客に不快感を与えるような」ものではなかったとされ、慰謝料などを勝ち取っています。
職場でも学校でも、身だしなみのルールがあることは珍しくありません。ですが、多様な価値観が認められる現代は、ヒゲ自体が良い/悪いという時代ではないのかもしれません。
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