自由な服装、自由なメイクで就職活動を―― 伊勢半の「顔採用、はじめます。」が生まれた理由
「スーツ」や「黒髪」がマナーとなった既存の就職活動に対するアンチテーゼ。
化粧品会社・伊勢半の採用活動が注目を集めています。従来の就職活動は、スーツ姿に落ち着いたメイクで行われるのが普通ですが、伊勢半は「メイクを通じて自分を表現してもらう」「自由な服装で来てもらう」と宣言。そのキャッチコピーは「顔採用、はじめます。」という強いメッセージ性を感じさせるものでした。
「顔採用」という言葉は、外見だけを重視し個人の能力を軽視する採用方法であるとして好意的なイメージを持たれづらいものですが、伊勢半はこの“顔採用”について「容姿が美しい人を採用するのではなく、自分らしい見せ方で自分を語っていただきたいから行った」と説明しています。「スーツ」や「黒髪」がマナーとなった既存の就職活動に対するアンチテーゼともとれるこの取り組みは、ネット上でも多くの反響を集めました。
対象となるのは商品企画部門とデジタル広報宣伝部の新卒採用。エントリー時には「私らしさ」を表現する写真(動画もOK)3枚以内を添え、面接時は「自分を表現できる装い」であればメイクも服装も自由。エントリーはインスタグラムでもOKで、それが「私らしさ」を表すものであるなら通常のスーツ姿でも問題ないそうです。
ネット上で評判を呼んだ「顔採用」にはどのような思いが込められているのか、伊勢半に行って聞いてきました。
自由な発想ができる人材を求めて
――服装も自由、メイクも自由というのはかなり斬新な採用方法だと思います。今回の「顔採用」はどうやってはじまったのでしょうか。
広報担当:開発本部の中の商品企画職と広報宣伝職、デジタルマーケティング職に限られているというのが重要ですね。どんな新しい商品を出すか、広告の企画をどうするのかを考えるときに型にはまらずに発想できる人材を獲得したい、そういう人たちに応募してほしい、つまりクリエイティブな職種だからこそ、自由な発想ができる人材が欲しいわけです。特に今の時代はそういう能力が必要になってきていると感じます。
それと、型にはまらず、新しい発想ができる人を求めても、皆さんが同じ髪形、同じ服装、同じメイクでいらっしゃると優れた能力を持つ人を見極めるのってとても難しいんです。でも、こういう採用方式で最初の段階で自分らしさを表現してもらえれば、こちらとしても「新しい発想をできる人材かどうか」を判断する材料にはなるかなと。
――確かに、学生の個性を見極めるという意味ではむしろ効率的かもしれませんね。
広報担当:まぁ、われわれも「学生さん側はどう思ってらっしゃるのかな?」と感じてしまうことがあるんです。
――従来の就職活動は、むしろ「自分の個性を殺す能力」の方が重要になってしまっている感じがしますが、それとは逆ですね。
広報担当:今回「顔採用」を始めるにあたって、皆さんがポジティブに感じてくれるかどうかも分からなかったので外部の調査を行ってみたのですが、学生の約50%は就職活動で「自分の個性を発揮できず、不自由と感じている」というデータが出たんです。そのことも今回の後押しにもなりましたね。
――「顔採用」という言葉を使うことに関して、社内で反対意見はなかったのでしょうか。
広報担当:皆さんが言うように「すごく強い言葉だね」という意見は出ました。でも、皆さんに強くお伝えするために強い言葉を使うのは効果的ですし、「『顔採用、はじめます。』という言葉は、『私らしさを愛せる人へ』というKISSMEのブランドメッセージを伝えるのに適している」と会社を説得したんです。
伊勢半は190年以上の長い歴史がありますが、昭和の時代に「キッスしても落ちない」というコピーを使って議論を呼んだり、前例のないことをやってきている企業なんです。その精神を継続するためにも……というのを説得材料にしたわけですね。最終的には役員にも納得してもらって、やることになったと。
――顔採用で本当に個性の強い人材が集まれば、既存の社員もそういう方向に引っ張られる可能性はありそうですね。
広報担当:われわれも本当にそう思ってます。化粧品業界だけではなく、今の世の中ってメーカーが気付かなかったような魅力を一人のユーザーが気付き、SNSに投稿して、それによって商品に反響が集まるというケースが本当に多いですよね。われわれもついていけないSNSとかありますし(笑)、そういう新しい感性を取り入れるのは必要だと感じます。
就活時のスタイルを自分の意思で決められるようになれば
――伊勢半さんもこれまでは普通の採用方法だったわけですよね。みんなスーツで、黒髪で、いわゆる「就活メイク」で……。
広報担当:そうです。それは、こちらから何を言うわけでもないのに皆さんそうされるんですよ。やっぱり学生さんも「そこで個性を出していいのか」と思ってる人ってすごく多いんでしょうね。
われわれが「顔採用」を発信した後は色んなところから反響をもらいました。ウチの採用方法についてコメントされてるのを拝見してもポジティブな反応がほとんどだったので、やってよかったなと思います。
――ネットの反響を見ていると、「顔採用」を打ち出したことで企業イメージまで向上しているような気がしますね。
広報担当:ありがとうございます、そうであればいいなと思っています。
――学生にとっては「入社してからも自由な振る舞いができるのかどうか」も気になるところかと思います。社内でのメイクやファッションに制限はあったりするんでしょうか。
広報担当:お取引先のある業態ですので、TPOはわきまえてということになりますが、基本的にはないです。自分たちがメイクもファッションも楽しんでいないとなかなかいい商品を届けられないので。
――社内にはどんな人がいるんでしょうか?
広報担当:いや、結構個性豊かだと思いますよ。伊勢半が特長的なのは、上下関係があまりないんですよ。すごく上位職の人がいる会議でも、他のスタッフが正直な意見を言える環境はありますし、上の人にも気軽に意見できて、みんながフラットにかなり意見を言い合ってます。社長まで含めてコミュニケーションを取る機会は多いですし、そういう会社は珍しいかなと思います。
――就活時の服装はスーツが基本ですし、就活メイクも当たり前のものになっています。こういった流れについてどう思いますか?
広報担当:今の世の中の流れだと、そうした流れから逸脱するのは難しい環境です。ただ、そのスタイルで就職活動したいというのであれば、それでも全然良いと思うんですけど、それを世間の流れではなく、自分の意思で決めれるようになればと思います。もちろん、顔採用だからスーツで来ちゃいけないというわけでもないですから。
関連記事
- 「大学生活はスマホがあれば十分」は誤解? 大学が今「ノートPC必携化」を進める理由
なぜスマホだけではダメなのか。 - 「御社の犬!!」「お前も犬!!」「俺も犬!!!」 就活生だったときに作りかけた曲が頭から離れない中毒性と勢い
こんなの絶対笑う。 - 就活生と社会人つなぐアプリ「VISITS OB」 大手ゼネコン社員が悪用して逮捕された件にコメント
一部サービスの制限などの対応を発表。 - リクルートスーツは「人生の衣装」 岡本夏美が就活生役に挑戦、その仕事観を聞いてみた
「賭ケグルイ」「Back Street Girls −ゴクドルズ−」などインパクトの強い役が続く中、今回は等身大の女の子に。 - 【就活】不採用通知はいつから「お祈りメール」と呼ばれるようになったのか
「ますますのご活躍をお祈りいたします」。 - 【マンガ】日本には“2人で総理大臣になった兄弟がいる”って知ってた?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
-
スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
-
「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
-
サザエやカキの貝殻を“最強の土”に埋めて、10カ月後…… 驚きの検証結果に「びっくりです」「すごいですね!」
-
鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
-
「別人?」「お母さん泣くね」 母の紹介で美容院に来た男子高校生がイメチェン…… 超さわやかな髪型に称賛の声【男性イメチェン記事5選】
-
“港区大好き”元有名グループアイドル、仕事ゼロの不人気メン→20歳上男性と結婚で“セレブ妻”転身! 家賃170万円のマンション暮らしに「生きてる世界違う」
-
共通テスト当日の息子に普段通り接しようとして―― “予想外すぎる母のLINE”に爆笑の声 「声出た!! 笑」「おもろすぎ」
-
風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
-
大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
- スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
- 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
- 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
- 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
- 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
- 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」